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国を出て、新しい国へ
サポナ村
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ザクッ。道を踏みしめる足音が変わったのがわかった。地面に何か別のものが混じっているらしい。
「アイシュタルト。ここだ。ここが、サポナ村。」
ルーイの言葉に地面に向けていた顔を上げて、周りを見渡す。崩壊した建物が目の前に広がる。扉が壊されただけの建物はまだ良い方だ。壁が粉々に砕かれたのだろう、破片が建物の周りに散らばった状態のものもある。
「ひでぇだろ?俺が逃げた時はここまでじゃなかった。」
村人を追い立てて、財の強奪が行われたか。攻め込んだ相手が、空になった村を見れば、当然の行動だ。責めたくもなるが、仕方のない行為だ。守れなければ、国中で行われる。
「俺の家…もう少し奥なんだ。」
私が何を考えてるのかはルーイにはわかっているのだろう。私の言葉を待たずに、村の奥の方へ足を運んでいく。
ザクッ。ザクッ。砂地の地面に、建物であったものの破片が混じっているのか。私たちの足音だけが、静かな村の中に不気味に響く。
「ここだよ。」
ルーイが案内をしてくれた家は、他の場所に比べて良い状態を保っていた。
「綺麗……なのではないか?」
「うん。俺も驚いてる。手付かずみたいだ。貧乏過ぎて、何もないように見えたのかな。それとも、家が小さすぎて、見落とされたかな。」
ははっ。ルーイが空笑いを混じえてそう話す。冗談でも言わなければ、この状態は不自然でしかない。周りにある建物はほぼ全てが何かの被害を受けていた。
ルーイの生家だけが、扉も窓も無事な状態を保っている。見落とされた?そんなはずはない。歩いてくる途中に、小さな家はいくつも見た。それらも全て、見事に破壊されていた。本当に一つ残らず。
何故だ?何故、ルーイの生家だけ。可能性はたった一つ。誰かが直したのだ。それしか、考えられない。
「ルーイ。」
「うん。わかってる。」
ルーイも私と同じことを考えていたようだ。誰が?気になるのはそれだけだ。
「入ってみよう。」
「うん。」
ルーイが頷くと、生家に近寄っていく。
「ルーイ!私が先だ。」
何が出てくるかわからない。もちろん、ルーイの生家を血で汚すつもりはないが、出てくるものによっては、倒さなければならないだろう。
「でも……」
「何かあれば、守ると言っただろう?任せておけ。」
改めて剣を構え直し、私は扉に手をかけた。
バタン!!!威嚇も込めて、少し乱暴に扉を開ける。一歩中に入って室内を見渡すが、何かがいる気配はない。
「誰も、いないな。」
私が中に入るまでは身を隠していたはずのルーイが、後ろから声をかけてくる。相変わらず隠れるのが上手いな。
「あぁ。綺麗ではあるが、誰かが住んでるわけではないようだ。」
誰もいないどころか、人が生活している気配もない。それならば、何故これほどまでに手入れされているのだろう。今すぐにでも生活できそうだ。
「俺が住んでた頃より綺麗かもしれない。」
「ククッ。そのようなこと、あるわけないだろう?」
「いや。あるんだって。男二人の兄弟だぜ。暴れ回って、そこら中傷だらけ。何もかも出したままで、片付けなって母親に怒られて。懐かしいな。」
ルーイは思い出話が眩しそうに、一点を見つめて目を細める。ここで暮らしていたルーイが懐かしさを感じるほどなのか。
「アイシュタルト。ありがとな。」
「ん?どうした?」
「いや、アイシュタルトと一緒じゃなかったら、俺ここまで来なかっただろうから。ありがとう。」
「いつも、案内してもらっているからな。その礼だ。大したことではない。」
私がルーイにしてもらっていることを思えば、これぐらいのこと、何のこともない。それぐらいの恩を感じている。
「街へ戻ろう。ゆっくりもできなくて悪いけど、この辺に泊まれる場所、ないんだ。」
「あぁ。ルーイがよければ、戻ろう。」
私たちはルーイの生家を出て、元来た道を戻ることにした。
「アイシュタルト。ここだ。ここが、サポナ村。」
ルーイの言葉に地面に向けていた顔を上げて、周りを見渡す。崩壊した建物が目の前に広がる。扉が壊されただけの建物はまだ良い方だ。壁が粉々に砕かれたのだろう、破片が建物の周りに散らばった状態のものもある。
「ひでぇだろ?俺が逃げた時はここまでじゃなかった。」
村人を追い立てて、財の強奪が行われたか。攻め込んだ相手が、空になった村を見れば、当然の行動だ。責めたくもなるが、仕方のない行為だ。守れなければ、国中で行われる。
「俺の家…もう少し奥なんだ。」
私が何を考えてるのかはルーイにはわかっているのだろう。私の言葉を待たずに、村の奥の方へ足を運んでいく。
ザクッ。ザクッ。砂地の地面に、建物であったものの破片が混じっているのか。私たちの足音だけが、静かな村の中に不気味に響く。
「ここだよ。」
ルーイが案内をしてくれた家は、他の場所に比べて良い状態を保っていた。
「綺麗……なのではないか?」
「うん。俺も驚いてる。手付かずみたいだ。貧乏過ぎて、何もないように見えたのかな。それとも、家が小さすぎて、見落とされたかな。」
ははっ。ルーイが空笑いを混じえてそう話す。冗談でも言わなければ、この状態は不自然でしかない。周りにある建物はほぼ全てが何かの被害を受けていた。
ルーイの生家だけが、扉も窓も無事な状態を保っている。見落とされた?そんなはずはない。歩いてくる途中に、小さな家はいくつも見た。それらも全て、見事に破壊されていた。本当に一つ残らず。
何故だ?何故、ルーイの生家だけ。可能性はたった一つ。誰かが直したのだ。それしか、考えられない。
「ルーイ。」
「うん。わかってる。」
ルーイも私と同じことを考えていたようだ。誰が?気になるのはそれだけだ。
「入ってみよう。」
「うん。」
ルーイが頷くと、生家に近寄っていく。
「ルーイ!私が先だ。」
何が出てくるかわからない。もちろん、ルーイの生家を血で汚すつもりはないが、出てくるものによっては、倒さなければならないだろう。
「でも……」
「何かあれば、守ると言っただろう?任せておけ。」
改めて剣を構え直し、私は扉に手をかけた。
バタン!!!威嚇も込めて、少し乱暴に扉を開ける。一歩中に入って室内を見渡すが、何かがいる気配はない。
「誰も、いないな。」
私が中に入るまでは身を隠していたはずのルーイが、後ろから声をかけてくる。相変わらず隠れるのが上手いな。
「あぁ。綺麗ではあるが、誰かが住んでるわけではないようだ。」
誰もいないどころか、人が生活している気配もない。それならば、何故これほどまでに手入れされているのだろう。今すぐにでも生活できそうだ。
「俺が住んでた頃より綺麗かもしれない。」
「ククッ。そのようなこと、あるわけないだろう?」
「いや。あるんだって。男二人の兄弟だぜ。暴れ回って、そこら中傷だらけ。何もかも出したままで、片付けなって母親に怒られて。懐かしいな。」
ルーイは思い出話が眩しそうに、一点を見つめて目を細める。ここで暮らしていたルーイが懐かしさを感じるほどなのか。
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「ん?どうした?」
「いや、アイシュタルトと一緒じゃなかったら、俺ここまで来なかっただろうから。ありがとう。」
「いつも、案内してもらっているからな。その礼だ。大したことではない。」
私がルーイにしてもらっていることを思えば、これぐらいのこと、何のこともない。それぐらいの恩を感じている。
「街へ戻ろう。ゆっくりもできなくて悪いけど、この辺に泊まれる場所、ないんだ。」
「あぁ。ルーイがよければ、戻ろう。」
私たちはルーイの生家を出て、元来た道を戻ることにした。
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