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同じチョコレート

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 それならば……と思い立って、おまえが好きなチョコレートを探すことになった。寒い2月の日曜日、コンビニ巡りをしてる自分が何ともあほらしくて、おまえのことだけを考えて動いてる一日がほんの少し楽しかった。
 
「寝てれば治るから、風邪ひいただけだよ。」

 まさかの2月13日。その言葉に、正直ホッとした。明日もこのままならば、おまえが誰かに渡すチャンスを潰せるのではないか……そんな黒い感情が渦巻く。

 俺の黒い願いは、見事に聞き届けられた。翌14日もおまえはベッドの中だった。今年、俺の元へ届くチョコレートは全て断ることにした。おまえに渡そうとしている俺が、他の女からもらうわけにはいかない。

 夕方になっても、熱の下がらない様子を見て、罪悪感が湧き上がる。あんなこと、願うんじゃなかった。苦しそうな寝顔を見ながら、昨日の自分の願いを後悔する。

 俺がそばにいたって、熱が下がるわけじゃないけど、おまえの側から離れられなかった。ベッドの傍にしゃがみ込んで、何もできない自分の無力さを悔やむ。



 真っ暗な部屋のなかでおまえのスマホが光った。

「目、覚めたか?」

 俺がそんなところに居るなんて思わなかったよな。俺も、何時間しゃがみ込んでたかわからない。ただ、俺は今日伝えるって決めたから。

「それ、深い意味ありだからな。」

 いつもよりもずっと鈍いおまえにどうやれば伝わる?

「だから、俺が!お前のこと!好きだから……」

 結局、告白なんてものはわかりやすく伝えるのが一番で、言ってから緊張と恥ずかしさで吐くかと思った。

 その後俺の心を支配したのは恐怖だ。伝える瞬間までは怖いものなんかなかった。俺が気持ちを伝えれば、おまえは誰のものにもならないってそう信じ込んでいて……男同士だなんて気にもしてなかった。

 『拒否される!』そんな思いが頭の中で張り裂けそうになる。怖くて怖くて……おまえからの言葉を聞きたくて、聞きたくなくて。心臓がすごい早さで動いて、冷や汗が背中を濡らして。

「はい、僕からも、バレンタインチョコレート。」

 おまえの言葉に、俺の心臓が鼓動を止めたかと思った。驚いて、声も出すことが出来なかった。俺が渡したのと同じチョコレートが、渡した直後に返ってきた。

 
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