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俺にとってのバレンタイン

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 ん?あった!やっと見つけた。

 俺はコンビニのお菓子売り場でやっとの思いで目当てのチョコレートを見つけた。普段お菓子売り場になんて縁がないから、たった一つのチョコレートを探すのに、あちこちのコンビニを探し回った。

 さっきのコンビニにもあった気がする。

 お菓子のパッケージはどれも同じようにしか見えない。そんな状態の俺が探してるチョコレートは名前しかわからない。『生チョコ風ショコラーヌ』

 同じ部屋のおまえが好きなチョコレート。部屋で食べて美味しさに感動してたっけ。

「こんなチョコレート初めてだ!!コンビニでこのクオリティ!300円なんて奇跡の値段だよ!」

 いつも大人しいおまえが、珍しく興奮して大声を出してた。俺が菓子を食わないって知ってるくせに、わざわざ俺のところまできて「ねぇ!食べてみてよ!!食べる価値ありだよ!!!」なんてかなりの圧をかけてきた。

 一粒もらったけど、正直言ってよくわからない。チョコレートはチョコレートだった。ただの甘い塊。俺にはそんな感想しか出てこない。そんな風に言ったら、きっと落ち込むだろうなぁって、そんな想像が簡単にできる。

「う、うまいよ。」

 ひきつった顔で嘘なのはバレバレだろう。それなのに、おまえは嬉しそうに笑う。その顔は……卑怯だ。

 そもそも菓子嫌いの俺がわざわざ探してまでチョコレートを買ったのは、そこら中から漂うこの甘ったるい匂いのせいだ。
 
 悪夢の日、バレンタイン。誰がバレンタインにチョコレートを贈るだなんて決めたんだよ。しかも、受け取ってもらえて当然。なんていう態度で、いつも以上に高圧的な女子。

 集団になれば恥じらう気持ちはどこかへ飛んでいくのか?なんであんなに前のめりになれる?前のめりなのは彼女たちの気持ちか、体か。

 ただでさえ苦手なお菓子をあんなに大量にもらったって、嫌がらせに他ならない。同室のおまえに「やるよ」って言えば、「一つは食べなよ」って。

 いやいやいや、一つずつ20人分食べたら20個だ。そんなもん悪夢でしかない。

 毎年2ヶ月ぐらいかけて、必死で消化して、正直味も形も何も印象に残らない。何とか食べ切った俺に、「頑張ったね」ってそう笑ってくれるから毎年何とかしてる。


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