図書室の名前

光城 朱純

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エピローグ

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 図書準備室に置き去りにされていた本を整えて、図書室の本棚に戻した。

 この物語もきっとまた、誰かの心をときめかせるかもしれない。

 いつまでも埃まみれの準備室の中じゃ、勿体ないもの。

 今では使われなくなった貸出カードは、処分することもできずに、準備室の引き出しの中に仕舞い込まれている。私はその束の一番上に、さっきの本の貸出カードを重ねた。

「安藤先生!会議始まりますよ!」

「はい!今行きます。」

 私は慌てて図書室の施錠をし、職員室に向かって歩き出す。

「ちとせ、何やってたの?」

「本の修理だよ。それよりも校内ではちとせって呼ばないでって。」

「わかってるって。今だけ、ね。」

「もう。悠はいつだって、その笑顔でかわすんだから。」

 私と悠は職員室までの道を早歩きで歩く。

 そういえば、貸出カードの話って悠にしたことなかったな。

 悠の名前に、ドキドキしてたって伝えてみようかな。まるで片想いしてたみたいなあの時の気持ち。

「ねぇ。悠。図書室の本に、貸出カードってあったの覚えてる?」
 
 
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