185 / 492
第2部
よき世話焼き
しおりを挟む
扉がノックされ、取次に出たミヒルが扉を開けると、マロシュを先頭に年配の女性と中年の女性が現れた。
「おはようございます、殿下。ばあちゃんと母ちゃんを連れてきました」
「イロナ、カロナ。久しぶりだな。元気にしていたか?」
ヴァレリラルドは扉の前まで行って2人を出迎える。
「ええ、ええ。元気でございましたとも。殿下もご立派になられて」
ヴァレリラルドが子供の頃から老女だったイロナは、その頃から外見がまったく変わっていなかった。
老女であるが、背筋が伸びて身のこなしが洗練されていて、それは娘のカロナも同じだった。
「姫殿下は毎年いらっしゃるようになりましたが、殿下があまりいらっしゃらなくなって、村の者は寂しく思っていますよ」
あえて明るく言うカロナに、ヴァレリラルドは曖昧な表情で頷く。
イロナもカロナも、梛央と一緒にいたときのヴァレリラルドの幸せそうな顔を覚えているだけに、愛し子が王太子を庇って命を落としたという風聞に、ヴァレリラルドの心の傷を察して胸を痛めていた。
「殿下、ここにはメイドはおりませんか? 少し散らかっておるようですが」
イロナは執務室の中を見渡しながら言った。
「まだできたばかりの部署だから、いろいろなことが足りていないんだ。それに、父上の補佐や統括騎士団の団長になったケイレブの補佐の役目をするから、重要な話をすることもある。できれば気の置けない者だけにしたいんだ。ローセボームはよき世話焼きを雇うといいと言うんだが」
「殿下、ならうちのばあちゃんを雇ってください」
思いついたようにマロシュが言った。
「イロナを? だが、村のこともあるだろう」
「殿下、私は自分で言うのもなんですが、世話焼きですよ。イザークが騎士団にいた頃は王城で働いていましたから勝手はわかっています」
「イロナなら信用できるから頼みたいが」
「ですが、やはり村のこともイザークだけでは心配です。私がいるうちにカロナに王城での作法を仕込みますから、私のあとはカロナに託しましょう」
「カロナは村に帰らなくていいのか?」
「私の夫はすでに亡くなっていますし、マロシュがここでお世話になるのなら、その近くでお勤めができえれば幸いです。父からもマロシュが危ない任務にあたるとしても動揺せずに殿下を支えるようにと言われています」
イザークもイロナもカロナも、もしかしたら自分以上に覚悟しているようだと、ヴァレリラルドは苦笑する。
「わかった。頼むよ、イロナ、カロナ」
「やったー」
喜んだのはウルリクだった。
「なぜウルリクが喜ぶんだ」
「飲みたいときにお茶を頼める人ができたんだぞ。俺は嬉しい」
見かけは繊細そうだが、中身がそれを裏切るウルリクに、
「では早速」
イロナとカロナはミヒルに案内されて仕度部屋に向かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
短いですが、ねむたすぎて今日はここまでで・・・(>_<)
「おはようございます、殿下。ばあちゃんと母ちゃんを連れてきました」
「イロナ、カロナ。久しぶりだな。元気にしていたか?」
ヴァレリラルドは扉の前まで行って2人を出迎える。
「ええ、ええ。元気でございましたとも。殿下もご立派になられて」
ヴァレリラルドが子供の頃から老女だったイロナは、その頃から外見がまったく変わっていなかった。
老女であるが、背筋が伸びて身のこなしが洗練されていて、それは娘のカロナも同じだった。
「姫殿下は毎年いらっしゃるようになりましたが、殿下があまりいらっしゃらなくなって、村の者は寂しく思っていますよ」
あえて明るく言うカロナに、ヴァレリラルドは曖昧な表情で頷く。
イロナもカロナも、梛央と一緒にいたときのヴァレリラルドの幸せそうな顔を覚えているだけに、愛し子が王太子を庇って命を落としたという風聞に、ヴァレリラルドの心の傷を察して胸を痛めていた。
「殿下、ここにはメイドはおりませんか? 少し散らかっておるようですが」
イロナは執務室の中を見渡しながら言った。
「まだできたばかりの部署だから、いろいろなことが足りていないんだ。それに、父上の補佐や統括騎士団の団長になったケイレブの補佐の役目をするから、重要な話をすることもある。できれば気の置けない者だけにしたいんだ。ローセボームはよき世話焼きを雇うといいと言うんだが」
「殿下、ならうちのばあちゃんを雇ってください」
思いついたようにマロシュが言った。
「イロナを? だが、村のこともあるだろう」
「殿下、私は自分で言うのもなんですが、世話焼きですよ。イザークが騎士団にいた頃は王城で働いていましたから勝手はわかっています」
「イロナなら信用できるから頼みたいが」
「ですが、やはり村のこともイザークだけでは心配です。私がいるうちにカロナに王城での作法を仕込みますから、私のあとはカロナに託しましょう」
「カロナは村に帰らなくていいのか?」
「私の夫はすでに亡くなっていますし、マロシュがここでお世話になるのなら、その近くでお勤めができえれば幸いです。父からもマロシュが危ない任務にあたるとしても動揺せずに殿下を支えるようにと言われています」
イザークもイロナもカロナも、もしかしたら自分以上に覚悟しているようだと、ヴァレリラルドは苦笑する。
「わかった。頼むよ、イロナ、カロナ」
「やったー」
喜んだのはウルリクだった。
「なぜウルリクが喜ぶんだ」
「飲みたいときにお茶を頼める人ができたんだぞ。俺は嬉しい」
見かけは繊細そうだが、中身がそれを裏切るウルリクに、
「では早速」
イロナとカロナはミヒルに案内されて仕度部屋に向かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
短いですが、ねむたすぎて今日はここまでで・・・(>_<)
91
あなたにおすすめの小説
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
15,000字程度の予定です。
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる