そのステップは必要ですか?  ~精霊の愛し子は歌を歌って溺愛される~

一 ことり

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第2部

よき世話焼き

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 扉がノックされ、取次に出たミヒルが扉を開けると、マロシュを先頭に年配の女性と中年の女性が現れた。

 「おはようございます、殿下。ばあちゃんと母ちゃんを連れてきました」

 「イロナ、カロナ。久しぶりだな。元気にしていたか?」

 ヴァレリラルドは扉の前まで行って2人を出迎える。

 「ええ、ええ。元気でございましたとも。殿下もご立派になられて」

 ヴァレリラルドが子供の頃から老女だったイロナは、その頃から外見がまったく変わっていなかった。

 老女であるが、背筋が伸びて身のこなしが洗練されていて、それは娘のカロナも同じだった。

 「姫殿下は毎年いらっしゃるようになりましたが、殿下があまりいらっしゃらなくなって、村の者は寂しく思っていますよ」

 あえて明るく言うカロナに、ヴァレリラルドは曖昧な表情で頷く。

 イロナもカロナも、梛央と一緒にいたときのヴァレリラルドの幸せそうな顔を覚えているだけに、愛し子が王太子を庇って命を落としたという風聞に、ヴァレリラルドの心の傷を察して胸を痛めていた。

 「殿下、ここにはメイドはおりませんか? 少し散らかっておるようですが」

 イロナは執務室の中を見渡しながら言った。

 「まだできたばかりの部署だから、いろいろなことが足りていないんだ。それに、父上の補佐や統括騎士団の団長になったケイレブの補佐の役目をするから、重要な話をすることもある。できれば気の置けない者だけにしたいんだ。ローセボームはよき世話焼きを雇うといいと言うんだが」

 「殿下、ならうちのばあちゃんを雇ってください」

 思いついたようにマロシュが言った。

 「イロナを? だが、村のこともあるだろう」

 「殿下、私は自分で言うのもなんですが、世話焼きですよ。イザークが騎士団にいた頃は王城で働いていましたから勝手はわかっています」
 
 「イロナなら信用できるから頼みたいが」

 「ですが、やはり村のこともイザークだけでは心配です。私がいるうちにカロナに王城での作法を仕込みますから、私のあとはカロナに託しましょう」

 「カロナは村に帰らなくていいのか?」

 「私の夫はすでに亡くなっていますし、マロシュがここでお世話になるのなら、その近くでお勤めができえれば幸いです。父からもマロシュが危ない任務にあたるとしても動揺せずに殿下を支えるようにと言われています」

 イザークもイロナもカロナも、もしかしたら自分以上に覚悟しているようだと、ヴァレリラルドは苦笑する。

 「わかった。頼むよ、イロナ、カロナ」

 「やったー」

 喜んだのはウルリクだった。

 「なぜウルリクが喜ぶんだ」

 「飲みたいときにお茶を頼める人ができたんだぞ。俺は嬉しい」

 見かけは繊細そうだが、中身がそれを裏切るウルリクに、

 「では早速」

 イロナとカロナはミヒルに案内されて仕度部屋に向かった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 短いですが、ねむたすぎて今日はここまでで・・・(>_<)
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