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第1部
見かけは美人なのになぁ
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護衛騎士たちは愛馬で、ヴァレリラルド、ケイレブ、オルドジフ、サリアンの4人は馬車で、先導する発光体を追いかけながら梛央が無事であるように、と念じていた。
「オルドジフ、あの光が精霊ではないとなぜわかるんだ? 精霊じゃないけどナオの居場所を教えてくれる存在って何なんだ? なぜ精霊じゃないのが知らせに来たのがよくない状況なんだ?」
馬車の中で矢継ぎ早に質問するヴァレリラルド。
「わがフリードリーン家は代々精霊を感じる力を受け継いでいます。フォルシウスは光として、私は透明な人型として見えます。けれどさきほどの光は精霊を感じる力のない者、精霊の加護を受けていない者、私にも光として見えていました。精霊の加護を受けていない者にも見える光がどんな存在なのかは私にもわかりません。一つ言えることは、精霊よりも上位の存在ではないか、ということです」
「上位……それがナオの居場所を教えに来てくれたのか?」
精霊の愛し子でありながら、それよりも上位の存在も力を貸してくれるとは、梛央はどれだけ崇高なんだろう、とヴァレリラルドは思った。
「フォルシウスから私に報告されたことがあります。……ナオ様がエンロートでゴンドラを楽しまれたときに、乞われて歌をお歌いになったそうですね?」
「ああ。すごく素晴らしい歌声だった」
その時の歌を思い出すと、心が震えるような感動が蘇るのはヴァレリラルドだけではなかった。
「その時に歌いながら手を天に向けた梛央様のその手から、キラキラした美しい光が現れたそうです。精霊は清浄な泉や気から生まれるもの。ナオ様のお歌はそれを生み出すにふさわしい清浄なものだったのでしょう」
「うん。心の清らかな梛央が、何かを祈るような様子で美しい歌を歌ったんだ」
「私も見てみたかったです。……ナオ様はご自分ではまだ気づいておられないでしょうが、ご自身で精霊を生み出すことのできる稀有な存在です。まさに精霊の愛し子様。ナオ様が望めば精霊たちは喜んで力を貸してくれるでしょう。ですが、ナオ様の居場所を知らせに来たのは精霊ではなかった」
オルドジフはそこで言葉を切った。
「精霊が生まれないような、精霊が力を貸せないような状況ということか」
ケイレブの言葉に、オルドジフは黙ったままだった。
「早く」
梛央のもとに行かなければ、という思いが、ヴァレリラルドの声になりこぼれる。
夜の、真っ暗な街道を、先導する発光体を追いかけるように疾走する馬たち。
疲れているだろうが梛央のためだとわかっているのか、馬達のスピードは次第にあがっていた。
やがて、山のふもとの門の前で発光体は止まった。
「ここは……」
馬を降りて建物を見上げる護衛騎士たち。
「ソーメルスの砦だ。今は歴史遺物のようなものだが、今でも管理人が手入れをしていると聞く」
馬車を降りたヴァレリラルドが答える。
「門が閉まっています」
イクセルが重く閉ざされた城門を見て言った。
「閉まってても行くに決まってるだろっ!」
馬車を降りてきたサリアンが足を振り上げて回し蹴りを城門に食らわす。
「見かけは美人なのになぁ」
護衛騎士の誰かが、とても残念そうな声をあげた。
梛央のなめらかな白い肌をくまなく手で撫でまわしながら、エンゲルブレクトは首筋から胸元にかけて唇を這わせていく。そのあとにはいくつもの朱の華が散っていた。
両手で梛央の胸を揉みしだきながら左の胸の小さな蕾を舌先で押しつぶし、捏ねるように舌を動かす。
「やっ……ぁっ……」
卑猥な舌先の動きに梛央が身じろぎ、その反応を楽しむようにエンゲルブレクトは梛央の顔に視線を向ける。
滲んだ涙でその瞳は潤んでおり、少し上気した頬は何も感じていないわけではないことを物語っている。
あどけなく可憐な表情がなりをひそめると、その下には幼いながらも妖艶な表情が浮かびつつあり、エンゲルブレクトを楽しませていた。
エンゲルブレクトは口を開けると、先ほどの激しい口づけのように梛央の胸を貪る。
「ぁっ……ぁぁぁんっ」
すすり泣くような声が愛らしい唇から漏れる。
慎ましい蕾をチュクチュクと吸い上げながらエンゲルブレクトの手が梛央の中心に伸びる。
まだ何も知らない、色素の薄いものをエンゲルブレクトの大きな手のひらが包み込む。
「オルドジフ、あの光が精霊ではないとなぜわかるんだ? 精霊じゃないけどナオの居場所を教えてくれる存在って何なんだ? なぜ精霊じゃないのが知らせに来たのがよくない状況なんだ?」
馬車の中で矢継ぎ早に質問するヴァレリラルド。
「わがフリードリーン家は代々精霊を感じる力を受け継いでいます。フォルシウスは光として、私は透明な人型として見えます。けれどさきほどの光は精霊を感じる力のない者、精霊の加護を受けていない者、私にも光として見えていました。精霊の加護を受けていない者にも見える光がどんな存在なのかは私にもわかりません。一つ言えることは、精霊よりも上位の存在ではないか、ということです」
「上位……それがナオの居場所を教えに来てくれたのか?」
精霊の愛し子でありながら、それよりも上位の存在も力を貸してくれるとは、梛央はどれだけ崇高なんだろう、とヴァレリラルドは思った。
「フォルシウスから私に報告されたことがあります。……ナオ様がエンロートでゴンドラを楽しまれたときに、乞われて歌をお歌いになったそうですね?」
「ああ。すごく素晴らしい歌声だった」
その時の歌を思い出すと、心が震えるような感動が蘇るのはヴァレリラルドだけではなかった。
「その時に歌いながら手を天に向けた梛央様のその手から、キラキラした美しい光が現れたそうです。精霊は清浄な泉や気から生まれるもの。ナオ様のお歌はそれを生み出すにふさわしい清浄なものだったのでしょう」
「うん。心の清らかな梛央が、何かを祈るような様子で美しい歌を歌ったんだ」
「私も見てみたかったです。……ナオ様はご自分ではまだ気づいておられないでしょうが、ご自身で精霊を生み出すことのできる稀有な存在です。まさに精霊の愛し子様。ナオ様が望めば精霊たちは喜んで力を貸してくれるでしょう。ですが、ナオ様の居場所を知らせに来たのは精霊ではなかった」
オルドジフはそこで言葉を切った。
「精霊が生まれないような、精霊が力を貸せないような状況ということか」
ケイレブの言葉に、オルドジフは黙ったままだった。
「早く」
梛央のもとに行かなければ、という思いが、ヴァレリラルドの声になりこぼれる。
夜の、真っ暗な街道を、先導する発光体を追いかけるように疾走する馬たち。
疲れているだろうが梛央のためだとわかっているのか、馬達のスピードは次第にあがっていた。
やがて、山のふもとの門の前で発光体は止まった。
「ここは……」
馬を降りて建物を見上げる護衛騎士たち。
「ソーメルスの砦だ。今は歴史遺物のようなものだが、今でも管理人が手入れをしていると聞く」
馬車を降りたヴァレリラルドが答える。
「門が閉まっています」
イクセルが重く閉ざされた城門を見て言った。
「閉まってても行くに決まってるだろっ!」
馬車を降りてきたサリアンが足を振り上げて回し蹴りを城門に食らわす。
「見かけは美人なのになぁ」
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梛央のなめらかな白い肌をくまなく手で撫でまわしながら、エンゲルブレクトは首筋から胸元にかけて唇を這わせていく。そのあとにはいくつもの朱の華が散っていた。
両手で梛央の胸を揉みしだきながら左の胸の小さな蕾を舌先で押しつぶし、捏ねるように舌を動かす。
「やっ……ぁっ……」
卑猥な舌先の動きに梛央が身じろぎ、その反応を楽しむようにエンゲルブレクトは梛央の顔に視線を向ける。
滲んだ涙でその瞳は潤んでおり、少し上気した頬は何も感じていないわけではないことを物語っている。
あどけなく可憐な表情がなりをひそめると、その下には幼いながらも妖艶な表情が浮かびつつあり、エンゲルブレクトを楽しませていた。
エンゲルブレクトは口を開けると、先ほどの激しい口づけのように梛央の胸を貪る。
「ぁっ……ぁぁぁんっ」
すすり泣くような声が愛らしい唇から漏れる。
慎ましい蕾をチュクチュクと吸い上げながらエンゲルブレクトの手が梛央の中心に伸びる。
まだ何も知らない、色素の薄いものをエンゲルブレクトの大きな手のひらが包み込む。
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