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第1部
特別な約束のおまじない
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「ねぇ、ナオ」
「なに?」
急にあらたまるヴァレリラルドに、梛央は首をかしげる。
「明日の朝にはここを出発して、明後日には王城に着いてしまう。叔父上の提案にはいつもひやひやするけど、ナオとこうして一緒に旅をして、思い出がたくさんできて嬉しい。今回ばかりは叔父上に感謝したい」
「うん。僕も、旅をしたことでこの国の、少なくともカルムとエンロートのことはわかったよ。どっちも綺麗な街で、賑やかだけど穏やかで、みんな優しくしてくれた。エレクには感謝しないとね」
前の愛し子のことはヴァレリラルドには言わずに、梛央は微笑んだ。
「ナオ、今日は母上のことを思い出しても泣くのをこらえて、えらかったね。この旅がナオの元気の地を強くしてくれてたらいいな」
「ちょっとだけ涙が出たけど、乗り切ったよ。いつまでも泣いてばかりじゃだめだからね」
「泣いてもいいんだよ。きっと、泣いた分だけ強くなると思うから。ねえ、ナオ。また機会があれば私と旅をしてもらえる?」
いつになく真剣な顔で尋ねるヴァレリラルドに、
「うん。シアンハウスはもちろんだし、カルムの市場にまた行ってみたい。リータの村にも、エンロートにも、僕の知らない街にも」
社交辞令ではなく、梛央はいつかまたヴァレリラルドと旅をしたいと思って頷く。
「ありがとう、ナオ。じゃあ、約束だよ?」
「うん、約束。はい」
梛央はヴァレリラルドに右手の小指を差し出す。
「ん?」
梛央は指先まで綺麗だなと思いながら、ヴァレリラルドは問い返す。
「約束するときは指切りするんだよ。僕のいた国での決まり事で、小指と小指を絡ませるんだ」
梛央に言われてヴァレリラルドも右手の小指を差し出し、梛央の小指を絡ませる。
「じゃあ、こう言って?指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った」
「なんだか怖い歌だね」
怖いと言いながら顔を赤らめて絡ませた小指を見つめるヴァレリラルド。
「子供でもしてる決まり事で、本当に指を切ったり針を千本飲むわけじゃないよ? それくらい真剣な約束ってことだよ? いい?」
「いいよ。特別な約束のおまじないなら、私もしたい。私は絶対にナオとまた旅をしたい。楽しい旅で、もっとお互いのことを知りたい」
愛を告白するように熱く語るヴァレリラルド。
「うん。じゃあ、一緒に、ね」
そこまでの重いものだとは思っていない梛央はタイミングを合わせるためにヴァレリラルドと目を合わせる。
お互いに小さく頷いて、
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った」」
指切りをして笑いあう。
特別な約束のおまじないが完成した夜だった。
ヴァレリラルドが自分の部屋に戻り、梛央も眠りについた頃。
古城の最上階に近いところにあるエンゲルブレクトの部屋にはまだ明かりがついていた。
バルコニーに通じる窓は空いていて、冷たくなった夜の風が吹き込んでいる。
「いいねぇ、ナオ様。容姿も心も歌声も美しい。私の時世に愛し子が出現するなんて、私はよほど幸運に恵まれているようだ。ナオ様が私の伴侶になれば、私の時世は最高のものになる。頼むよ、……。」
エンゲルブレクトはその言葉を、バルコニーの外に向けて囁いていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
短いですが、きりがいいのでここまでで><
「なに?」
急にあらたまるヴァレリラルドに、梛央は首をかしげる。
「明日の朝にはここを出発して、明後日には王城に着いてしまう。叔父上の提案にはいつもひやひやするけど、ナオとこうして一緒に旅をして、思い出がたくさんできて嬉しい。今回ばかりは叔父上に感謝したい」
「うん。僕も、旅をしたことでこの国の、少なくともカルムとエンロートのことはわかったよ。どっちも綺麗な街で、賑やかだけど穏やかで、みんな優しくしてくれた。エレクには感謝しないとね」
前の愛し子のことはヴァレリラルドには言わずに、梛央は微笑んだ。
「ナオ、今日は母上のことを思い出しても泣くのをこらえて、えらかったね。この旅がナオの元気の地を強くしてくれてたらいいな」
「ちょっとだけ涙が出たけど、乗り切ったよ。いつまでも泣いてばかりじゃだめだからね」
「泣いてもいいんだよ。きっと、泣いた分だけ強くなると思うから。ねえ、ナオ。また機会があれば私と旅をしてもらえる?」
いつになく真剣な顔で尋ねるヴァレリラルドに、
「うん。シアンハウスはもちろんだし、カルムの市場にまた行ってみたい。リータの村にも、エンロートにも、僕の知らない街にも」
社交辞令ではなく、梛央はいつかまたヴァレリラルドと旅をしたいと思って頷く。
「ありがとう、ナオ。じゃあ、約束だよ?」
「うん、約束。はい」
梛央はヴァレリラルドに右手の小指を差し出す。
「ん?」
梛央は指先まで綺麗だなと思いながら、ヴァレリラルドは問い返す。
「約束するときは指切りするんだよ。僕のいた国での決まり事で、小指と小指を絡ませるんだ」
梛央に言われてヴァレリラルドも右手の小指を差し出し、梛央の小指を絡ませる。
「じゃあ、こう言って?指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った」
「なんだか怖い歌だね」
怖いと言いながら顔を赤らめて絡ませた小指を見つめるヴァレリラルド。
「子供でもしてる決まり事で、本当に指を切ったり針を千本飲むわけじゃないよ? それくらい真剣な約束ってことだよ? いい?」
「いいよ。特別な約束のおまじないなら、私もしたい。私は絶対にナオとまた旅をしたい。楽しい旅で、もっとお互いのことを知りたい」
愛を告白するように熱く語るヴァレリラルド。
「うん。じゃあ、一緒に、ね」
そこまでの重いものだとは思っていない梛央はタイミングを合わせるためにヴァレリラルドと目を合わせる。
お互いに小さく頷いて、
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った」」
指切りをして笑いあう。
特別な約束のおまじないが完成した夜だった。
ヴァレリラルドが自分の部屋に戻り、梛央も眠りについた頃。
古城の最上階に近いところにあるエンゲルブレクトの部屋にはまだ明かりがついていた。
バルコニーに通じる窓は空いていて、冷たくなった夜の風が吹き込んでいる。
「いいねぇ、ナオ様。容姿も心も歌声も美しい。私の時世に愛し子が出現するなんて、私はよほど幸運に恵まれているようだ。ナオ様が私の伴侶になれば、私の時世は最高のものになる。頼むよ、……。」
エンゲルブレクトはその言葉を、バルコニーの外に向けて囁いていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
短いですが、きりがいいのでここまでで><
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