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第二話 ―Doa― 1
しおりを挟む「……ん、ん……」
光が眩しい。
ゆっくりと、何度か軽く瞬きをするとまだ体が起きていないのだろう酷く緩慢な動作で目を擦った。
眩しさと眠さで開かない瞼を無理矢理こじ開け、目の前に広がる景色をボーっとする頭で見る。
不自然と感じるくらい真っ白な壁。
光と相まって白い壁は余計目を痛くさせ、川下は一旦目を瞑って光を遮断すると先程の事を思い出しながら体を起こした。
辺りを見回せばそこには床に寝転がっている村山たちの姿。
どうやら最初に壁だと思った部分は天井らしかったが、どこを見ても同じ真っ白な壁が広がっている。
違うとすれば白い壁に相反している黒一色の扉と、天井近くにある一つのスピーカーだけ。
まだ動いてない川下の頭にはよう々な疑問が広がるが、今は頭を働かせたくないのが正直な気持ち。
ひとまずその疑問を追い出すと村山たちを起こす事から始めた。
「村や、まーー……起ーきーろー……」
頭が重く、このままだと再び眠ってしまいそうだったが横から聞こえた声によってなんとかそれは免れた。
「……っつ……」
武坂が目を覚まし、体を起こすと最初の川下のように辺りを見回す。
あ、起きた。などと思いながら見ていると武坂も川下に気付き、川下は軽く手を上げた。
「…………やぁ」
「……川下? ここは一体……」
寝起きの悪い川下と違って軽く目を擦るとそれだけで完璧に目が覚めた様子。
キョロキョロと辺り見回す横で川下は今でも頭をゆらゆらと振っており、寝ていいと言われたら簡単に夢の世界へ潜りそうだった。
「それは俺も知りたい……。っつーか眠い……ね、る……」
宣言通り眠りそうだった頭を武坂は多少の手加減をして、思い切り殴る。
辺りには固い音が響き、突然の衝撃に川下は反射的に殴られた箇所を抑えた。
「………………っ!」
「寝るな。起きろ」
「てっ、めっ……! 何も殴らなくてもいいだろーが……!」
油断していた為に痛みも強く、別の意味で意識を失いそうだ。
うっすらと涙を浮かべながら睨み付けるが武坂は川下を無視して隣に寝ていた本町を起こし始めた。
「取り敢えず、他の奴らも起こすぞ」
川下は子供のように頬を膨らましながら、それでもその意見には賛成なのだろう再び村山の体を揺らした。
──それから五分ほど経った頃には全員が目を覚まし、円になるよう座ると今の状況を確認。
「……で、だ。まずここは何処なんだ?」
村山がそう訊ねるが当然答えられるのは誰もいない。
「扉だって開かないし……あるとすればあのスピーカーだけだよね」
南波の呟きに誰もが頷いた。
分かっては居た事だが誰も今居る場所を知らない。
何か情報として役立つ物があれば良いのだが、物として存在するのはスピーカーだけ。
もちろんそんな物が場所を理解する為の手助けになるわけもなく、塵一つ落ちてないこの部屋で六人は首を傾げた。
外に出たければ扉を開けるしかないのだが、鍵がかかってるのか扉ノブを回す事さえ出来ず、更には叩いてみても手応えはない。
「んー……見た感じ誘拐……とかじゃなさそーだしなー」
「でもよ、誘拐だったら普通は一人を狙うんじゃねぇのか?」
「それに俺たち校長室で眠らされたんだぜ? 誘拐だったらおかしいんじゃね?」
国見の言う事ももっとも。
しかしそれぞれが首を捻っても納得の行く答えは出てこない。
「校長室……そうだ、校長室なんだよな……」
ポツリと呟かれたその言葉に全員の視線が一斉に向けられた。
「武坂さんどうかした?」
「……校長室で眠らされたって事は……校長は何か知ってるんじゃないか?」
「なら伊東! アイツもぜってー何か知ってる!」
「だよな。アイツが俺たちを呼びに来たんだし」
本町が納得して頷くとその場に居た全員が同じ考えなのだろう、首を縦に振った。
しかし仮に校長や教師が何かを知っていたとしても当の本人がこの場にいなければ理由を聞く事さえ出来ない。
それでも考えずにはいられない、少ない情報で今の状況を理解しようとしていると不意にスピーカーから音楽が流れ始めた。
「うぉおっ!?」
大音量で、しかもいきなり流れたものだから川下たちは驚きの声を上げた。
「びくったー……! ったく! 鳴らすなら鳴らすって一言言えよな!」
「……無茶言うなよ……」
未だ強く脈打つ心臓を抑え、川下がそう叫べば武坂は呆れながら小さく呟いた。
「っつーかコレ……レクイエムか?」
耳を傾けると確かに聞こえた曲はヴェルディ作曲、レクイエムの怒りの日。
だがこの曲は酷く鬱蒼とした気分にさせる曲、それに釣られ川下たちの気分も落ち込んでいく。
「……何でここでこれが流れるかなー……」
「なんか、今の状況でコレ流されると凄い不安になるんだけどよ……」
声に覇気がないまま、それぞれが思い思いに喋っているとやがて音は小さくなっていきBGM程の大きさになっていく。
『──ぁー、皆、目が覚めたかな?』
スピーカーを通じて聞こえてくる声はやけに明るい。
直前まで流れていた重々しい曲と相反するかのような声に川下たちは拍子抜けするが、男は気にする事なく言葉を続けた。
『突然こんな場所に連れて来られて戸惑っている人も多いだろうけど、早速本題に入らせて貰うね』
一体何があるのか。
不安を感じながらも六人はスピーカーから視線を離さず続く言葉を待った。
『君たちには、これから都道府県代表として殺し合いをして貰うんだ』
「………………………………は?」
全員の気持ちが一つになった瞬間だった。
それもそうだろう、急に訳の分からない場所に連れて来られたかと思えば都道府県代表の殺し合いをして貰うと言う。
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