となりは異世界【本編完結】

夕露

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トラブルだらけの学園祭

54.学園祭3日目

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学園祭三日目がやってきた。

とうとうこのお祭りが終わると思うと寂しい気もするけれど、今日あるイベントを考えたら最後まで気が抜けなくてちょっと早めに登校。なにせミスミスターコンテスト最終決戦に挑むことになる犠牲者が正面玄関をこえた掲示板に貼ってあるという恐ろしい情報が飛び込んできたからだ……どうか、万が一にもネタ投票で選ばれていませんように……。


「早い時間なのに凄い人ね」


掲示板に集まっている人だかりを見て隣で立っていた美加が嫌そうに眉を寄せる。その顔は面倒なことは嫌だとかいてあって目は掲示板からいっさいそれない。ポスターを掲示板に張り出すのは生徒会だけど、出場者に選ばれている人はこの段階から集計などの業務から外されるから美加は結果を知らないとのこと。千代先輩たち居残りご苦労様です。

「ほんとに凄い……うわあ、盛り上がってるぅ。絶対ミスミスターの話で盛り上がってるよね。ほんとどうかしてるよ……」
「……さっさと見に行きましょ」

なにか含んだ顔で私を見た美加はため息を吐いたあと大股で歩き出す。ハイヒール履いていたらきっとカッカッカッて気持ちいい音が鳴ってるだろなあ。そんな素敵オーラに気がついたんだろうか。掲示板を見て声をあげていた人が美加を見て楽しそうに「あー!」と声をあげる。おおっと……?これはもしかして……?
足を止めた美加を追いかけながら人だかりの隙間から掲示板を見てみれば、でかでかと載っているポスターに見知った顔を何人も見つけた。私、私は──いないっ!

「やったあ!しかも美加だ!!美加が載ってる!!!」

ミスで選ばれたのは紫苑先輩と美奈先輩と美加だった。安牌だ、それでもってすっごく面白そう。ほんとに美加が1位になったらめちゃくちゃ面白いことになりそう。

「ほんとどうかしてるわよね」
「あ、へへっ。お疲れ様でーすって、痛いいだい」
「千代先輩がすごく笑顔だったから嫌な予感はしてたのよ……」
「あー」

嘘が吐けなさそうな千代先輩のことだ。問い詰められたら焦るんだけど、それまでは純粋に美加が選ばれて嬉しいってニコニコしてたんだろうなあ。
簡単に想像できる光景にほっこりしていたら同じように分かりやすい人を見つけた。波多くんだ。こんな朝早くから来たっていうのに掲示板を一切見もせずに教室に向かっていく。人だかりで靴を履きかえるのに苦労している姿を見るに絶対チッチッチッて舌打ちしてるな──あれ?そのはるか向こうを歩いてるのって藤宮くんじゃない??
面白い後姿を見送っていたら遠目でも分かるイケメンスタイルを見つけてしまった。うん、間違いなく藤宮くんだ。勝手なイメージだけど藤宮くんも登校時間ぎりぎりで行動してると思ってたから意外だ。

「ミスターで出ることになったのちゃんと知ってるのかなー」

ミスターに出場するのは藤宮くんと颯太くんと、あの、パキスタン系の、ああそうそう、斎藤辰先輩だ。
ポスターに書いてあった名前にスッキリするけど、斎藤先輩の名前を見ていたら違和感を覚えてしまった。失礼すぎるけど似合わないっていうのもそうだし、それ以上になんだろう。なにか気になるんだよなあ。

「なに?ミスター部門がどうかしたの」
「ん?いやー藤宮くんを見かけたんだけどこの結果知ってるのかなーって」

思って。
最後まで言い切る前に周りにいた一部の女の子がすさまじい勢いで私が指さしたほうを見たかと思うと走り出していった。きっと藤宮くんに教えに行ったんだろう。行動力凄いな……。

「なんか大丈夫そう」
「そのようね」
「まあ、刀くんがいるし」

これも意外だったことに刀くんは真面目に風紀の仕事をしていたし、ミスター出場者結果を見たらすぐに藤宮くんに教えていたことだろう。風紀かあ。私は紫苑先輩に……分かってたことだろうけどまた泣きそうだなあ。

「なんでそんなに嫌そうな顔してるのよ」
「紫苑先輩をミスコンに出るように言うのと引率する自分の姿を想像してただけだよー」
「そう……」
「そう……」

騒がしい声を背景に暗い声で頷き合った私と美加はなんの気なしに空を見上げる。
今日も快晴、眩しく光るキラキラ太陽。



「なんにも起きなきゃいいなあ」








 
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