56 / 85
トラブルだらけの学園祭
54.学園祭3日目
しおりを挟む学園祭三日目がやってきた。
とうとうこのお祭りが終わると思うと寂しい気もするけれど、今日あるイベントを考えたら最後まで気が抜けなくてちょっと早めに登校。なにせミスミスターコンテスト最終決戦に挑むことになる犠牲者が正面玄関をこえた掲示板に貼ってあるという恐ろしい情報が飛び込んできたからだ……どうか、万が一にもネタ投票で選ばれていませんように……。
「早い時間なのに凄い人ね」
掲示板に集まっている人だかりを見て隣で立っていた美加が嫌そうに眉を寄せる。その顔は面倒なことは嫌だとかいてあって目は掲示板からいっさいそれない。ポスターを掲示板に張り出すのは生徒会だけど、出場者に選ばれている人はこの段階から集計などの業務から外されるから美加は結果を知らないとのこと。千代先輩たち居残りご苦労様です。
「ほんとに凄い……うわあ、盛り上がってるぅ。絶対ミスミスターの話で盛り上がってるよね。ほんとどうかしてるよ……」
「……さっさと見に行きましょ」
なにか含んだ顔で私を見た美加はため息を吐いたあと大股で歩き出す。ハイヒール履いていたらきっとカッカッカッて気持ちいい音が鳴ってるだろなあ。そんな素敵オーラに気がついたんだろうか。掲示板を見て声をあげていた人が美加を見て楽しそうに「あー!」と声をあげる。おおっと……?これはもしかして……?
足を止めた美加を追いかけながら人だかりの隙間から掲示板を見てみれば、でかでかと載っているポスターに見知った顔を何人も見つけた。私、私は──いないっ!
「やったあ!しかも美加だ!!美加が載ってる!!!」
ミスで選ばれたのは紫苑先輩と美奈先輩と美加だった。安牌だ、それでもってすっごく面白そう。ほんとに美加が1位になったらめちゃくちゃ面白いことになりそう。
「ほんとどうかしてるわよね」
「あ、へへっ。お疲れ様でーすって、痛いいだい」
「千代先輩がすごく笑顔だったから嫌な予感はしてたのよ……」
「あー」
嘘が吐けなさそうな千代先輩のことだ。問い詰められたら焦るんだけど、それまでは純粋に美加が選ばれて嬉しいってニコニコしてたんだろうなあ。
簡単に想像できる光景にほっこりしていたら同じように分かりやすい人を見つけた。波多くんだ。こんな朝早くから来たっていうのに掲示板を一切見もせずに教室に向かっていく。人だかりで靴を履きかえるのに苦労している姿を見るに絶対チッチッチッて舌打ちしてるな──あれ?そのはるか向こうを歩いてるのって藤宮くんじゃない??
面白い後姿を見送っていたら遠目でも分かるイケメンスタイルを見つけてしまった。うん、間違いなく藤宮くんだ。勝手なイメージだけど藤宮くんも登校時間ぎりぎりで行動してると思ってたから意外だ。
「ミスターで出ることになったのちゃんと知ってるのかなー」
ミスターに出場するのは藤宮くんと颯太くんと、あの、パキスタン系の、ああそうそう、斎藤辰先輩だ。
ポスターに書いてあった名前にスッキリするけど、斎藤先輩の名前を見ていたら違和感を覚えてしまった。失礼すぎるけど似合わないっていうのもそうだし、それ以上になんだろう。なにか気になるんだよなあ。
「なに?ミスター部門がどうかしたの」
「ん?いやー藤宮くんを見かけたんだけどこの結果知ってるのかなーって」
思って。
最後まで言い切る前に周りにいた一部の女の子がすさまじい勢いで私が指さしたほうを見たかと思うと走り出していった。きっと藤宮くんに教えに行ったんだろう。行動力凄いな……。
「なんか大丈夫そう」
「そのようね」
「まあ、刀くんがいるし」
これも意外だったことに刀くんは真面目に風紀の仕事をしていたし、ミスター出場者結果を見たらすぐに藤宮くんに教えていたことだろう。風紀かあ。私は紫苑先輩に……分かってたことだろうけどまた泣きそうだなあ。
「なんでそんなに嫌そうな顔してるのよ」
「紫苑先輩をミスコンに出るように言うのと引率する自分の姿を想像してただけだよー」
「そう……」
「そう……」
騒がしい声を背景に暗い声で頷き合った私と美加はなんの気なしに空を見上げる。
今日も快晴、眩しく光るキラキラ太陽。
「なんにも起きなきゃいいなあ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる