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トラブルだらけの学園祭
37.後半が本番ということなら私は天に祈ったほうがいいらしい
しおりを挟む色々あったものの見事チームはまとまって次の種目だった大縄跳びは2位と健闘した。二人三脚でも2位ときているし結構優勝狙えるんじゃないだろうか。
そんなソワソワした気持ちが決死隊に広まって午後の部に命賭けるぜと意気込む人が続出している。ええ……。でもなにはともあれお昼休憩だ。美加のところに行けば木陰でお弁当を広げている美加たちを見つけた。
「わーい美加だー!」
「暑苦しいから離れてちょうだい」
「佐奈ちゃん元気だねー」
「それに大活躍っ」
美加に飛びつく私を見て里香ちゃんと亜美ちゃんがニヤニヤ笑う。それが波多くんとの借りもの競争だということがすぐに分かって溜息吐きたいような怒りたいような変な気持ちになってしまう。
「その顔」
どんな顔してたのか美加が呆れたように言って隣に座れと笑ってくれた。はい喜んで!
「にしても佐奈ちゃんこっち来ていいの?」
「え?駄目なの?」
「駄目なのって……いや、風紀の仕事は?」
「風紀の仕事?いやいや、昼ご飯ぐらい流石に食べられるでしょう」
「そういうのが出来ないから風紀の対象になったんじゃないの?ってことよ」
ちらっと桜先輩がいる場所を見てみる。相変わらずの人だかりだ。さっき来たときと違ってちゃんと順番も出来てるみたいし人口密度が減ってるけどこの暑さであれだけ人が集まれば息苦しさMAXだろう。大変……。
「ああ……。いやいや、私が美加たちとご飯を食べない理由にはならない」
「私もご飯食べ終わったら生徒会で集まるのよ。投票の喚起もしなきゃだし面倒だわ」
「うううう、うう」
「早く食べなさい」
なぜこうも美加との時間を邪魔さなければならないのかと唐揚げを口に放り込んで何度も何度も噛む──うん、これ生焼け……生揚げ?だよおかあさん……。噛みきれない……。変な感触がする……。
一気にブルーな気持ちになって空を見上げる。生憎雨が降ることはなさそうだ。
「午後の最初は応援合戦だよね。どんなんだろ」
「すっごく楽しみだよね!」
「絶対ヤバいよ!毎年凄いって先輩も言ってたし」
盛り上がる里香ちゃんたちを見て美加とアイコンタクト。
「面倒なことにならなかったらいいわね」
「同じく……」
ご飯を食べ終わったあと残念だけど二人とお別れして美加と一緒に移動する。進行方向に人だかりを見つけた美加に「あそこの真ん中に桜先輩がいるんだよ」と教えてあげたら同情めいた視線を私に向けてくれた。うん、あの中に今から入るのが私だからね。
「よければ美加も一緒に挨拶しない?」
「私は私の面倒事でもう手一杯よ。ああ、ちゃんと投票行ってね」
「ううう、分かりました……頑張ってね美加」
「アンタもね」
美加に手を振ってその背を見送る。中学の時からずっと一緒だったのに高校生になってから一緒に居る時間がごっそりなくなった。寂しいけどなんだかんだ美加は生徒会の仕事を楽しんでるのが分かるし……やっぱり寂しい。娘がお嫁に行くとき全国のお父さんはこんな気持ちなんだろうか。
「あれ、近藤さん。こんなところでどうしたのかな?」
「ひぃっ!」
「あはは、ひどいなあ」
感慨にふけっていたら今日何度空に見たか分からない東先輩が現れた。私の顔を覗き込んできたもんだからドアップで見えて心臓が飛び出そうだ。あー、一気に汗かいた。
手うちわしながら東先輩を見ればやっぱりニコニコ良い笑顔。
「私はちょっと桜先輩の護衛に行こうと思ってたところでして」
「嬉しいな。ちゃんと仕事してくれてるんだね」
「も、勿論ですよ。へへへ」
「体育祭始まって何度かここを通ることがあったんだけど今日初めて近藤さん見たのは俺の気のせいだったかな?」
「……」
目を閉じて俯いてしまう。
駄目だ……やっぱりこの人には逆らえないし怖い……。
「え、えっと何度かここを通ったってどうしたんですか?」
「いやあ実は恥ずかしいことに護衛対象を見失っちゃってね。どこに行ってしまったかって探してるんだよ。本当に迷惑だよね」
「あはは……そうですね迷惑な方ですね」
「そうだね。ところで紫苑がこっちを見て助けてほしそうにしてるけどどう思う?」
「助けに行きます」
微笑む東先輩にゾッとしていたら東先輩からまさかの提案。のるっきゃない。事実桜先輩が輪の中からこちらを見て目をウルウルさせているんだ。早いとこズラかろう。
東先輩に手を振って桜先輩のほうに向かえば桜先輩の隣で満面の笑顔を浮かべる駿河先輩を見つけた。幸せそうでなによりです。
「こ、近藤さんお帰りなさい。そうだご飯!ご飯食べましたか?」
「はいただいまですー。皆さんお疲れ様です本当にありがとうございます!私はもうご飯食べ終わりましたけど皆さんは──よかったですね桜先輩!」
私のことを認知してくれたとはいえまだ警戒を持っている方々が睨んできたり言われなくても食べさせたわ的なリアクションをされるので笑顔で挨拶しておく。
「桜先輩が出場されるリレーまであともう少しですよねー!あ、それと先ほど生徒会の人から話があったんですがミスコンの投票は皆さんされましたか?ミスコンも楽しみですねー」
幸いミスコンはパワーワードだったらしく皆頬を緩めては桜先輩を見てそわそわし始めた。ミス部門かミスター部門どっちで出るか気になるよね。皆さんはどっちで投票されるんですか?
ニコニコ笑いながら他人事で見ていたら空いている席に座っていた城谷先輩が手招きしてくれた。勿論伺います。
「やっぱり遅かったわね。もうそろそろ応援合戦始まるわよ?」
「そんなに遅かったでしょうか?あ、でも本当に始まりそうですね。あはは」
東先輩の次に怖いのが城谷先輩だ。当たり障りのない会話であるよう気をつけながら周りを見ていたらアナウンスが流れた。
「間もなく午後の競技を始めます。応援合戦に参加される方は至急──」
会場が期待と興奮に大きくどよめき、歓声が沸き上がる。
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