狂った勇者が望んだこと

夕露

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第三章 化け物

175.「はい!初めまして誰かさん!」

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魔法がある世界だから話す石像があっても不思議じゃないはずだ。それなのに感動とか好奇心だけじゃなく不気味さとか違和感を覚えてしまうのはどうしてだろう。ゲームでありそうな現象が現実に起きている非現実さ?いかにもなファンタジー展開だから?分かるのは石像が私を認識していて私がなにか言うのを待っているということだ。馬鹿な思い違いであればいいと思うのに石像はまた口を開く。


「化け物、汝、なにを望む」
「……随分と上から目線で聞いてくるな」


癪に障るけどたかが石像に腹が立ってしまうのは考えものだ。代わりに、遺跡を覆うシールドに阻まれているオーズを転移で喚びよせる。

「てめっ、なにしやがった!」
「1人でじたばたしてたから助けてやったんだけど?」

強制的な転移にオーズは驚きをみせたものの地面に落ちることなく体勢を整えて着地してしまう。つまらない結果に不満に思う私が分かったんだろう。オーズは非難に眉を寄せながら私を見て──数秒後、呆然と立ち尽くす。その顔は遺跡に向かってきた表情とは違うものの、同じぐらい奇妙な気持ちを抱かせる。

「汝、なにを望む」

話す石像にさえ目もくれない。
『神様?いいなそれ、違いないんじゃねえの?ああそうだそれで……じゃあ、こう言おうか?汝、何を望む』
オーズは神聖な場所を知っていたしこの遺跡のことも知っていた。話だけというのならオーズは一体誰からこの話を聞いたんだろうか。

「……答えねえの?」
「お前はさっきなんで焦ってたんだ?」

改めて魔法で辺りを探ってみたけどやっぱり誰もいないしオーズの様子を見る限りこの現象は危害を加えるためのものじゃないらしい。でもそれじゃあこれは一体なんだろう。答えない私にオーズはまた焦りを浮かべたどころか苛立ちさえ覚えているようだ。その目が石像に向き、私に向き――重たいものが動く音が聞こえる。石が擦れ合って鳴る音は石像の首からだ。鈍く動きながら石像たちが首を動かして私とオーズを見下ろしてきて、全員、声を揃えて問いかけてくる。


「汝、なにを望む」


身体に響くおどろおどろしい声に赤い目を見返すのは止めて石像を見上げる。私を見下ろす石像は空に手を上げたままの状態で随分しんどそうだ。

「知るかよ」

元の世界に帰りたい?復讐がしたい?思い知らせてやりたい?心の整理がしたい?決着をつけたい?気の合う奴らとのんびり過ごしたい?本でも読みながら楽しみたい?イメラたちを助けてやりたい――望みなんて考えてみたらきりがない。
それなのに、どれも心から望んでいるはずなのに、望んでない。

「分かるか……っ」

きっとこうしたらいいんだって思う選択があるけど捨てきれないんだ。自分のことなのにどうしたらいいのか分からなくて怖くて……ああ、ぜんぶなかったことになればいいのに。


「俺はっ」


望みを言わなかった私についに耐えきれなかったオーズが石像に向かって叫び、けれど、なにを勘付いたのか驚きに私を見た。一応振り返って確認してみたけど私の他には石像しかない。さっきからオーズはなにに動揺しているんだろう。普段と違うオーズに思い出すのは余裕のない声だ。
『僕の化け物』
オーズの望みに関係するだろうこの声の持ち主は誰に向けてこの言葉を言ったんだろう。そんなことを思いながらもう一度目が合ったオーズとの間に妙な緊張感が走る。静かな時間。石像が話さないどころか、水音も、足音も、呼吸音さえ聞こえない。
悔しい。悲しい。そんな感情を浮かべて何を考えて──


「えーっと、ここから録画?っていうの始めていいんだよね?」


──痛いほどの沈黙を破ったのは欠伸を堪えながらおかしなことを言う少年の声だ。声が聞こえたほうを見れば、話す石像の前に女性がいた。誰かが転移してきたのかと思ったけどただの映像らしい。立体的な映像だったせいで見間違えたけれど女性を起点に動く景色はところどころぼやけている。女性、というより高校生ぐらいに見える女の子だ。どうやら少年が女の子を撮影しているようだった。

「え?!ちょっと早く言ってよ!ってか私こういうの苦手なんだって。なに言えばいいの?ほら、ヴェルなんか言ってよ」
「えー?僕?そもそもテカが言ったんでしょ」

場違いな空気感漂う会話に気が抜けて呆然としながら女の子を眺める。ぱっつん前髪で長い後ろ髪をポニーテールにしているテカという女の子は所在なげに手を動かして撮影者であるヴェルという少年に文句を言い続けていた。少年は声変わりの時期らしく時々声がしゃがれている。ふたりは姉弟なんだろうか。仲が良い2人の会話はしばらく続いて、結局、言い負けてしまったテカさんが尖らせた口を溜め息に緩めたあと気合いを入れるように頬を叩く。表情がコロコロ変わる可愛い子だ。


「はい!初めまして誰かさん!」
「誰かさんって」
「五月蠅い。はい、それでですね、ここは色んな人の願いを聞けたらいいなって思って作ったところなんですよね。てか私の世界で見た遺跡を参考にして作ったんだけどいい感じじゃないですか?すっごいこだわった!厳かな感じ出てるでしょ!?」
「これ聞いた瞬間吹っ飛びそうだけどね」
「ヴェル五月蠅い!あ、はは……とにかく、ここは色んな人の願いを聞いて録画してるんだけど、それを見るための鍵は望みがないことにしたんだ。だからあなたは今これを見れてる……んだよね?」
「多分ね。そもそもこの録画ってのもよく分からないからなんともだけど」
「あ゛―大丈夫って言ってよー」


聞いていて微笑ましくなるような楽しい会話なのに冷や汗かいて喉が渇いてしまう。私の世界。会話を聞く限りテカさんはオルヴェンの人間じゃない。私と同じように召喚されたんだろう。映像のなか見える遺跡と現在の遺跡の違いを見る限り昔に撮られた映像だ。テカさんは……。

「ってかそうじゃなくて!とにかく、ここには色んな人の望みがあるの」
「ここに辿り着ける人がどれぐらい居るかは知らないけどね」
「うう……確かに気合い入れ過ぎた……」
「……でもまあ凄く綺麗に出来たからさ、簡単に見つかっても面白くないじゃん。それでこそ価値があるって奴なんでしょ」
「そうっ!そうなの!浪漫があるよねえ-!ここに辿り着いた人達の望みってなんだろ。あー!私その人達といつか話してみたいなあ。それでここの感想も聞きたい」
「……テカはなんでそんなに人の望みに興味があるの?」
「ええ?あー……普通に興味あるからだけど、まあ、うん。なんていうか勉強?参考にしたいんだよね」
「……テカの望みは?」
「分かんないんだよねえ……でもとりあえず、ここまで辿り着いてくれた人達の願いが叶ったら良いなあって思うよ」

梅のようなことを言ったテカさんにヴェルはどんな顔をしているんだろう。テカさんは困ったように笑いながらヴェルの頭を撫でているようだ。伸びてきた手の動きに合わせて映像がぐらぐら揺れている。子供扱いするなと拗ねる声にテカさんは軽く謝って、ヴェルから視線を逸らしたあと私に手を振った。



「ここがね?私にもだけどあなたにも参考になったら良いなあ」



優しさ浮かぶ表情が手拍子ひとつで満面の笑顔に変わって「それじゃこれで終わり!他の人の映像が見たかったら像に魔力を補充してね!またどこかで!」なんて明るい終わりの言葉を残して画面から逃げるように消えてしまう。テカさん曰く厳かな遺跡が映る映像のなか最後に聞こえたのは「しょうがないなあ」と楽しそうに弾むヴェルの声。やっぱり聞いていると微笑み浮かんでしまう楽しい雰囲気だ。
ああ、それなのに。

「オーズ」
「……」
「なんで泣いてんの」

口元を手で覆って泣き続けるオーズは消えた映像の場所から目を離さない。安直な考えだろうか。だけどオーズが動揺したときを繋げたらヴェルとテカさんがオーズの望みに繋がる。

「『僕の化け物』」
「……」
「『お前なら、いい』」
「止めろ」
「『いつかきっと自分自身が耐えられなくなる』」
「……っ」

オーズと一緒にいるときに聞いた声を口にすれば赤い目が涙を流しながら歪んだ。サバッドの、勇者の、化け物の記憶。記憶を見るとき決まってそいつらが近くにいる。後悔に泣く記憶を頭の中で叫びながら訴えてくる。
オーズの望みは自分以外のサバッドというより、特定の誰かを、ヴェルとテカさんを救うことだろうか。でもテカさんは遺跡を作ったとは言ったけれど神聖な場所と言いはしなかった。ここが物語の中でとはいえ神聖な場所と認識されたのは数百年前だ。テカさんとヴェルが普通に生きているとは考えにくい。
ヴェルとテカさんもサバッドになっているのだとしたら、きっとテカさんが言っただろう『耐えられなくなる』というのはなんだろうか。長い時間を生きること?ああでも、本心はともかく長く生きることにオーズは絶望といった類の感情を抱いているようには見えなかった。それなら、『救われることを祈る』と言った低い声が大人になったヴェルなのだとしたら、ヴェルはどんな地獄を味わっていたんだろう。

「ははっ」

私を見てオーズが暗い瞳で泣き笑う。オーズの身体にリヒトくんにも見た黒い靄のようなものが現れて、赤い瞳とあわさって魔物という言葉を思い出してしまう。恐ろしさのせいか喉が渇いてしょうがないのに唾も出ない。
だけど、ひけない。

「お怒りみたいだけど私はお前と過ごすようになってからずっとこんな記憶を見続けてるんだ。遅かれ早かれそうなるもんだったとしてもお前絶対なんか関わってるだろ」

記憶を見るのに個人差があるにしても少なくとも私は10人抱えてる。アルドさん達は1人だけみたいだし梅も3人ぐらいだ。

「泣いてねえで話せよっ。この記憶は魔物と魔物が道を繋げるのと一緒なんだろ?だからジルドだけ見なかったし、記憶を見るたびリヒトくんやイメラに会う。ラスさんやお前らから勝手に記憶を見てしまう」

誰かの記憶を、見る。
『誰を見た?』
オーズが探るように問いかけてきたのは何故だろう。

「……お前、私にテカさんとヴェルの記憶を見てほしいのか?」

記憶を見ないなんてことを私が出来ないように、オーズは見たい記憶を選べないのか?自分で見れないから私に?記憶はサバッド、勇者、化け物のものだ。悲劇に見舞われ死んでしまいサバッドとして生き返った彼らの記憶は悲しいものばかり。
『もう会えないのね』
しゃがれた声を思い出して胸が締め付けられる。

「テカさんやヴェルに会いたいのか」

会いたい?
そういえば、イメラがロイさんやリヒトくんと会えていないのはなんでだろう。リヒトくんの場合イメラの贖罪が関係して会えないのかもしれないけど、イメラがロイさんに会えないのはなんでだ?ロイさんがサバッドとして生き返っていないからということならしょうがないけれど、それならそもそも、なんで生き返ることが出来る人と出来ない人がいるんだろう。なにかルールがあるんだろうか。
……だからオーズは私に言えば望みが叶わなくなるなんて言ってたのか?
黒い靄こそ引っ込めたもののオーズの表情は暗いままで、なにか間違えてしまえればここら一帯が一瞬で真っ黒に塗りつぶされてしまいそうな、なにかに引きずり込まれてしまいそうな錯覚に陥る。空笑う声。オーズは赤い目を細めてひきつった笑みを浮かべていた。

「見当違いもいいところだ。俺は会いたくなんてねえよ」
「……それはそれで救えないんだけど。それじゃお前は2人がサバッドになっていないことを証明するためにサバッドの記憶を見ては、2人の記憶じゃないことを確認してるってことじゃねえの?」

テカさんとヴェルが鍵と考えればそういうことになるはずだけど、どうだろうか。2人がサバッドになっていないことを確認するのがオーズの願いというと、なにか違う気がする。

「テカさんはともかくヴェルはどういう人なんだ?人……サバッドなのか?」

テカさんは召喚された人だから里奈さんや千堂さんのようにサバッドになる可能性はあるけど、ヴェルのほうはどうなんだろう?録画のことが分からないヴェルはテカさんと違いオルヴェンの人間だ。記憶を残せるのはサバッド、勇者、化け物で――
『僕の化け物』
化け物?
……化け物って、なんだろう。
『知らないだろ?これは地獄だ』
『お前なら、いい』
『俺が救われたように、お前が救われることを祈る』
望んでサバッドになったと言ったオーズの言葉と組み合わせて考えればオーズはヴェルに望んでサバッドになったように思う。そしてヴェルを救った、となるはずだけど望めばサバッドになれるものだろうか。魔法?でもそれは魔物が望めば人間になれるというぐらい難しい話のはずだ。私が知らなくて思いつかないだけで、この場所のようにファンタジーなことを起こす魔法があるんだろうか。
『銀髪に赤眼のロストは見たことがある?』
『ああ』
それとも、まだ見たことの無い存在なら可能なのか?
『赤眼をした魔物サバッドと呼ばれている者の多くはただの人間です』
そもそもだ。イメラや勇者のような魔物としてのサバッドもいるけど、サバッドは魔物を倒せる存在とするために生まれた差別用語だ。人々に恐れられる闇の者にロストという人型が実際に居たから、闇の者の特徴である赤い目をした人をサバッドとして魔物に仕立て上げた。
『ラスとは128年の付き合いだ』
長い時間を、きっとこの神聖な場所が出来るよりも前から生きているオーズ。オーズのような人をサバッド以外には知らない。一度も死んだことがない人なら、猶更だ。


「ヴェルはロストだった?それで、今お前がロストになってる?」


存在することと外見しか情報が無い謎に包まれたロスト。この時代を生きる多くの人に隠されるぐらい、見れば死ぬと伝えられる恐ろしい闇の者。
『銀色の髪に赤い瞳、それが最後にみたもの、見つかるな見つかるな、逃げろ逃げろ、ああ見つかった』
少年の──ヴェルが歌う声が聞こえる。
『それ嘘だろ。俺は生きてるし』
それに笑う声は聞き覚えのある声だ。ロウとディオ。きっとオーズの小さい頃だろう少年がニッと笑えみを浮かべてヴェルの歌を否定する。ヴェルは『そうだね』と小さい声で相槌打っていて。
嬉しい。そんな感情がわきあがってきて涙が浮かんでくる。リヒトくんの記憶を見た時のように私が私だけじゃなくなってそのときの誰かに、オーズになっていくようだ。思い出すのはリヒトくんの記憶を見た直後のことだ。

「『いつも憎まれ口を叩きやがるのに最後の最後で……』」
「あ゛?」

脈絡のない話にオーズが頬に残っていた涙を拭いながら苛立ちに聞き返してくる。だけど説明する余裕もないぐらいそのときのオーズの感情に頭が支配されてしまっていて、吐き出すように言葉を続けるしか出来ない。

「『救われる?何言ってやがる。言い捨ててそれで終わりかよ』」
「なに言っ……あ」

悲しい、嬉しい、寂しい、誇らしい。
ぐちゃぐちゃな気持ちでもう誰もいない場所を見続ける。


「『とうに救われてる……よかった』」


背中を向けるオーズの顔は見えないけどきっと泣いてるんだろう。拳を握り締める手は震えていて『よかった』ともう一度呟いたオーズの声はほとんど形になっていない。
悲しい、嬉しい、寂しい、幸せ。
ぐちゃぐちゃな気持ちでいっぱいになって、結局、最後に出た言葉はシンプルなものだ。


「『ありがとう』」


記憶が途切れる。
身に覚えのある疲労に色々と答えが分かって私も嬉しいんだか最悪なんだか分からなくなってきた。なにせ目の前のオーズがもう泣いてはいないものの、絶望という言葉を思い出す顔をして固まっている。
オーズをここまで動揺させるテカさんとヴェルはどんな人たちだったんだろう。
飄々としたオーズを変えてしまう人。
『んじゃ、リーシェは?』
『アンタがリーシェになれるわけないじゃん!リーシェはもっと可愛かったしこんなことされたら飛び回って逃げるからっ!』
『お前の故郷はなくなったのかもしれねーけど、今自分が生きている場所が自分の世界だ。奪われてもそこから作った場所は間違いなくお前のものだ。人からなに言われよーが否定されようが、そこにいるならそこがお前の世界でお前だけのものだ。リーシェ』
ああ、きっと。


「テカさんは、詩織さん?」


私がサクやリーシェという通り名を使っているように、詩織さんもテカやリーシェという通り名を使っていたんだろう。予想は当たりのようだ。
疲れたように唇吊り上げるオーズがゆらり動いて私のほうに近づいてくる。一歩、一歩。ゆっくりとした歩調なのに逃げられないと確信してしまって、私が出来るのは口を動かすだけ。

「……あのときも言ったけど私は私だ」
「俺も言っただろ。お前は詩織じゃない」

ついに私の目の前に立ったオーズが穏やかに微笑む。見守るようにも見える優しさあふれた表情なのにどこか狂気に似たものを感じてぞっとする笑みだ。手が、伸びてくる。頬に触れた手は水に濡れていたけれど温かくてオーズが生きているのが分かる。指先から伝わってくる鼓動はトクトクと静か。背中を抱きしめた手は強くない。触れる身体の熱さはどちらのせいなのか。
黒い髪が垂れてきて視界を覆う。
赤い目が、弧を描いていて。


「もう止めようとは思わない」


唇が重なって、離れる。
間近に見える赤い目は私を観察しているようで逸れてくれない。ドクドク、鼓動が響く。

「ただ……最後までそのままでいろ」
「んっ、ぅ」

魔力の交換と言うには重たいキスだ。逃げても逃げても捕まって、身体を抱く手なんて振りほどくことも出来ない。与えられる魔力の多さに頭は混乱して、返してもまた与えられる魔力に意識がとびそうになる。たかがキスなのにようやく解放してくれたときには情事の後のようになってしまっていて。
ぼやける視界を覚まそうと目を擦って見えたのは目を瞑る前にも見た赤い目と──白い線。太陽の光で色を変えるそれは長い長い銀の髪。
ああ、ヴェルの歌が聞こえてくる。

「止まるなよ」

低い声はまるで忠告のようだ。挑発的に笑ったオーズがどこかへ転移して姿を消してしまう。オーズのいなくなった光景は先ほど見た録画の最後のようだ。テカさん──詩織さんたちが見た遺跡と同じ遺跡を見ながら私を見下ろす石像に近づく。触れてみれば石のざらざらとした感触に苔のふやけた感触。少し悩んでしまったけれど、貰ったばかりの魔力を像に補充すれば石像が神々しく光を持ち始めた。


そして現れた映像は遠い遠い昔の、最古の英雄伝に語られた人を映し出す。





 
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