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tutrial:来たりて、また還らず
目覚めよ、カイルダイン
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丘に近づくにつれて岩塊の細部がはっきりと見えてきた。
「これは……!」
俺は息をのんだ。黒ずんだ岩と見えたものは、後方から俺を追って来ているものによく似た金属製の巨大な人形――それが幾重にも折り重なったものだったのだ。
黒い色は表面の錆だ。そこは破壊された巨大ロボット――この世界でいう護令械の残骸が眠る場所だった。恐らくは、古戦場だ。
かつて此処で何があったのか? そんな疑問が脳裏をよぎったが、その答えを探すのは後回しだ。渉猟械が間近に迫り、俺に向かって剣を振り下ろそうとしている。
「おわあああああ!」
刃渡り10mを超える鉄の塊が、音速を超えて降ってくる。転がってどうにか避けたが、辺りには土砂がもうもうと捲きあがり、割れた金属片が弾け飛んでひどく危険な状態だ。俺は大きな残骸の陰へ身を隠してそれらの破片をやり過ごした。
渉猟械はどうやら、それなりに重い。振り下ろした剣を再び持ち上げるにも数秒の時間がかかるようだ。
負傷さえしなければチャンスはあるはずだ。
振り下ろした腕がちょうどこちらの足場から飛びつきやすい位置にくるような、都合のいい場所を探して走りまわる。ちょうど残骸の膝の部分が一つ、うまい具合に突き出しているのを見定め、それにすぐ駆け上がれる立ち位置を確保した。
再び剣が振り下ろされた。予測位置からはやや外れていたが、飛び移れない距離ではない。俺は斜面に突き出した残骸の上から遊猟械の腕に飛びついた。
前腕部の中ほどのその部分には、青い染料で染められた植物文様の布地が直径50cmほどの装飾されたリベットで装甲に留めつけられていた。
その布を掴み、辛うじてぶら下がった状態から腕に力をこめて這いあがる。
打ち込みを終えた直後の状態から、遊猟械の右腕は再び空中へ戻り、俺は地上から20mほどの高さで砂混じりの風に吹かれていた。
「ひぃッ……!」
足がすくむ。
鉄の巨人は俺を見失っていらだたしげに巨体をゆすり、剣を持った腕で四方を薙いだ。
文様布から手が離せない。風にあおられて脚衣がふくれ上がり、俺は体が浮きそうになるのを必死で耐えた。
「くそッ、このままじゃ動けない……!」
人間よりやや比率的に長い遊猟械の腕は、胴体部分まで10m以上はある。肩から胸にかけてはあちこちに取っ手や手すりがあるのが見えるが、前腕部はとにかく足がかりが少ない。このままではいずれ振り落されてしまう。
(せめて、ほんの3秒でも止まってくれれば……)
その時。
「戻って! 私はここよ!」
パキラの声が聞こえた。振り向くと、後方50mほどの残骸の上で彼女がこちらへ手を振っているのが見えた。俺の背負子を左肩に抱えている。
(バカな、何のつもりだ。隠れていろと言ったじゃないか!)
渉猟械の操縦者も彼女に気づいたようだ。一瞬動きが止まり、手にした剣を腰の吊り帯に戻す。ほとんど故障した絶叫マシンのようなその上下動に、俺はたまらず悲鳴を上げた。
渉猟械は数歩進むと空いた右腕を大きく延ばして彼女を掴もうとした。ゆっくりと地上へ向けて延ばされる、金属の腕――その動きがほぼ止まる。
今だ。
「パキラ! 逃げろおッ!」
叫びざま、20度ほどの坂になった腕の上を駆け出す。肘関節部の装甲をとめているリベットを足がかりに上腕部へ駆け上がり、さらに急角度になった坂をよじ登った。
肩から繋がったロブスターテイル状の装甲に手を伸ばし、その縁をつかんで手繰るように体を引き上げ、肩の部分にある一畳ほどのプラットフォームを目指す――目的の場所にたどり着き、手すりをつかんで一息。呼吸が落ち着くにつれて全身がガクガクと痙攣した。
地上はさらに遠ざかり、心なしか地面がかすんで見える――いや、その時地面の上には確かにうっすらと煙か霧のようなものが漂い、夏場のアスファルト道路のように陽炎が立っていた。
パキラは寸前で渉猟械の指先をかわし、右に左にと走って鉄の巨体を翻弄していた。その動きにつれて俺が立つ肩の上も激しく揺れた。
「助かった! パキラ、もう少し待ってろ!」
声を振り絞って叫び、遊猟械の胸ブロックの上へ取っ手を頼りに這い降りる。頭部の真下――人間でいえば胸骨の上部に、それらしい構造物があった。複雑な文様が象嵌された、黒い鉄の蓋らしきもの。なじみやすい言葉でいえばコクピットハッチだ。
間違いあるまい。こいつを開けて――
だが、俺がその蓋に取り付き、マンホールの取っ手のように収納されたハンドルに手をかけたとき、パキラのひときわ鋭い絶叫が耳を撃った。
「ダメよ! ダメなの! 戦闘用護令械の操縦籠は! 佩用者が死ぬか気絶するかしない限り、外からは開けられない……!」
(何だと!?)
その瞬間、ハッチが青く発光し、雷に打たれたようなショックが俺を襲った。目の前が一瞬暗転する。
(しまっ……)
おそらくは、こうした肉薄攻撃から操縦者を守るための近接防御システムなのだろう。俺の指は痺れていうことを聞かなくなり、ハンドルから離れた。そのまま空中へ投げ出されて落下し――
ゴバァッ
不意に、形容しがたい大音響が周囲にあふれた。何か巨大なものが地中から突き出され、黒く錆びて朽ちた護令械の残骸が無数の破片となって空中へ跳ね上げられる。
それらの残骸からは土砂がこぼれ落ち、山火事のようにあたりを煙らせた。
俺は何かの上に背中から落ちていた。ただし落下距離は体感でせいぜい2m。軽い打撲程度のダメージだ。降り注ぐ破片の雨から頭をかばいながら身を起こすと、そこは巨大な手の平の上だった。
「どうなってるんだ、これは……」
俺を受け止めたその手の、腕のある方向へと振り返る。地面からは先程の遊猟械に匹敵するサイズの、巨大な銀色の巨人が頭部と右上半身を露出させていた。
武者鎧の面頬を思わせるが、極度に抽象化された顔面。そのオレンジ色に輝く『眼』が俺を見つめている。目の輝きが強まり、俺を誘(いざな)うように感じられた。
はっと気づいた。今ならこの腕づたいに、地面に降りられる。
〈なんだってんだ、こりゃあ〉
遊猟械からあのキツネ目男の声が響く。彼はこの銀色の巨人を警戒して動きかねているようだ。その隙に巨人の胸の上に這い降りた俺の目に、既視感のある物体が飛び込んできた。
遊猟械のそれと大差ないハッチの上に、紙片らしきものが貼りつけられている。
(あれは……?)
心がざわついた。駆けよって見るとそれは、カバンに忍ばせてあったものと同様の品だった。青い顔料で記された象形文字――
===================================
カイルダインは既に目覚めている。生きる意志あらば、その名を呼べ。
===================================
呆然と、その文字と目の前の護令械らしき巨人の顔とを見比べる。
(まさか、こいつが?)
あの紙片のメッセージは、「カイルダインを引き継げ」と告げていた。つまり、こいつがそうなのか?
(そうか、これがあの遊猟械と同様のものならば。もし操縦することができれば、この状況を生き延びられる!?)
冷静に考えれば、ばかげている。俺はこの世界にいわば生まれたばかりのようなものだ。見たこともなかったものを操縦できるとなぜ思えるのか。
だが、万に一つの可能性に賭けようとする、常軌を逸したポジティブさが俺の中に芽生えていた。何かに騙されはめられているのではないかという、うすら寒い疑念を振り払って俺は叫んだ。叫ぶしかなかった。
「カイルダイン!!」
廃墟と丘、そして荒野に、俺の声がこだました。
――キシッ
かすかな軋み音とともに目の前のハッチがわずかにずれ、内部から金色の光が漏れて土煙の中に長く延びる。
(カイルダイン――そは久しく呼ばるる事無かりし我が名。私を引き継ぐか? 資格者よ)
頭の中に中性的な声が響いた。その感応に俺はぞくりと震え、そして確信していた。俺の運命とはこのことなのだ。どうやら俺はなにか、大がかりな事に巻き込まれようとしている。だが、そうだとしてもここで死ぬのはごめんだ。
「ああ、引き継ぐ! 俺に力を貸してくれッ、カイルダイン!」
蓋(ハッチ)が大きく開き、光あふれるその内部が露わになった。
「カ イ ル ダ イ ン !」
俺と巨人、どちらが叫んだのかもうわからなかった。吸い込まれるようにコクピット――この世界の言葉でいえば『操縦籠』の中へ駆け込んだ。
操縦籠の中、鮮やかな色の絨毯に覆われた床の上で180度身をひるがえし、俺は前方の渉猟械を見据えた。
「これは……!」
俺は息をのんだ。黒ずんだ岩と見えたものは、後方から俺を追って来ているものによく似た金属製の巨大な人形――それが幾重にも折り重なったものだったのだ。
黒い色は表面の錆だ。そこは破壊された巨大ロボット――この世界でいう護令械の残骸が眠る場所だった。恐らくは、古戦場だ。
かつて此処で何があったのか? そんな疑問が脳裏をよぎったが、その答えを探すのは後回しだ。渉猟械が間近に迫り、俺に向かって剣を振り下ろそうとしている。
「おわあああああ!」
刃渡り10mを超える鉄の塊が、音速を超えて降ってくる。転がってどうにか避けたが、辺りには土砂がもうもうと捲きあがり、割れた金属片が弾け飛んでひどく危険な状態だ。俺は大きな残骸の陰へ身を隠してそれらの破片をやり過ごした。
渉猟械はどうやら、それなりに重い。振り下ろした剣を再び持ち上げるにも数秒の時間がかかるようだ。
負傷さえしなければチャンスはあるはずだ。
振り下ろした腕がちょうどこちらの足場から飛びつきやすい位置にくるような、都合のいい場所を探して走りまわる。ちょうど残骸の膝の部分が一つ、うまい具合に突き出しているのを見定め、それにすぐ駆け上がれる立ち位置を確保した。
再び剣が振り下ろされた。予測位置からはやや外れていたが、飛び移れない距離ではない。俺は斜面に突き出した残骸の上から遊猟械の腕に飛びついた。
前腕部の中ほどのその部分には、青い染料で染められた植物文様の布地が直径50cmほどの装飾されたリベットで装甲に留めつけられていた。
その布を掴み、辛うじてぶら下がった状態から腕に力をこめて這いあがる。
打ち込みを終えた直後の状態から、遊猟械の右腕は再び空中へ戻り、俺は地上から20mほどの高さで砂混じりの風に吹かれていた。
「ひぃッ……!」
足がすくむ。
鉄の巨人は俺を見失っていらだたしげに巨体をゆすり、剣を持った腕で四方を薙いだ。
文様布から手が離せない。風にあおられて脚衣がふくれ上がり、俺は体が浮きそうになるのを必死で耐えた。
「くそッ、このままじゃ動けない……!」
人間よりやや比率的に長い遊猟械の腕は、胴体部分まで10m以上はある。肩から胸にかけてはあちこちに取っ手や手すりがあるのが見えるが、前腕部はとにかく足がかりが少ない。このままではいずれ振り落されてしまう。
(せめて、ほんの3秒でも止まってくれれば……)
その時。
「戻って! 私はここよ!」
パキラの声が聞こえた。振り向くと、後方50mほどの残骸の上で彼女がこちらへ手を振っているのが見えた。俺の背負子を左肩に抱えている。
(バカな、何のつもりだ。隠れていろと言ったじゃないか!)
渉猟械の操縦者も彼女に気づいたようだ。一瞬動きが止まり、手にした剣を腰の吊り帯に戻す。ほとんど故障した絶叫マシンのようなその上下動に、俺はたまらず悲鳴を上げた。
渉猟械は数歩進むと空いた右腕を大きく延ばして彼女を掴もうとした。ゆっくりと地上へ向けて延ばされる、金属の腕――その動きがほぼ止まる。
今だ。
「パキラ! 逃げろおッ!」
叫びざま、20度ほどの坂になった腕の上を駆け出す。肘関節部の装甲をとめているリベットを足がかりに上腕部へ駆け上がり、さらに急角度になった坂をよじ登った。
肩から繋がったロブスターテイル状の装甲に手を伸ばし、その縁をつかんで手繰るように体を引き上げ、肩の部分にある一畳ほどのプラットフォームを目指す――目的の場所にたどり着き、手すりをつかんで一息。呼吸が落ち着くにつれて全身がガクガクと痙攣した。
地上はさらに遠ざかり、心なしか地面がかすんで見える――いや、その時地面の上には確かにうっすらと煙か霧のようなものが漂い、夏場のアスファルト道路のように陽炎が立っていた。
パキラは寸前で渉猟械の指先をかわし、右に左にと走って鉄の巨体を翻弄していた。その動きにつれて俺が立つ肩の上も激しく揺れた。
「助かった! パキラ、もう少し待ってろ!」
声を振り絞って叫び、遊猟械の胸ブロックの上へ取っ手を頼りに這い降りる。頭部の真下――人間でいえば胸骨の上部に、それらしい構造物があった。複雑な文様が象嵌された、黒い鉄の蓋らしきもの。なじみやすい言葉でいえばコクピットハッチだ。
間違いあるまい。こいつを開けて――
だが、俺がその蓋に取り付き、マンホールの取っ手のように収納されたハンドルに手をかけたとき、パキラのひときわ鋭い絶叫が耳を撃った。
「ダメよ! ダメなの! 戦闘用護令械の操縦籠は! 佩用者が死ぬか気絶するかしない限り、外からは開けられない……!」
(何だと!?)
その瞬間、ハッチが青く発光し、雷に打たれたようなショックが俺を襲った。目の前が一瞬暗転する。
(しまっ……)
おそらくは、こうした肉薄攻撃から操縦者を守るための近接防御システムなのだろう。俺の指は痺れていうことを聞かなくなり、ハンドルから離れた。そのまま空中へ投げ出されて落下し――
ゴバァッ
不意に、形容しがたい大音響が周囲にあふれた。何か巨大なものが地中から突き出され、黒く錆びて朽ちた護令械の残骸が無数の破片となって空中へ跳ね上げられる。
それらの残骸からは土砂がこぼれ落ち、山火事のようにあたりを煙らせた。
俺は何かの上に背中から落ちていた。ただし落下距離は体感でせいぜい2m。軽い打撲程度のダメージだ。降り注ぐ破片の雨から頭をかばいながら身を起こすと、そこは巨大な手の平の上だった。
「どうなってるんだ、これは……」
俺を受け止めたその手の、腕のある方向へと振り返る。地面からは先程の遊猟械に匹敵するサイズの、巨大な銀色の巨人が頭部と右上半身を露出させていた。
武者鎧の面頬を思わせるが、極度に抽象化された顔面。そのオレンジ色に輝く『眼』が俺を見つめている。目の輝きが強まり、俺を誘(いざな)うように感じられた。
はっと気づいた。今ならこの腕づたいに、地面に降りられる。
〈なんだってんだ、こりゃあ〉
遊猟械からあのキツネ目男の声が響く。彼はこの銀色の巨人を警戒して動きかねているようだ。その隙に巨人の胸の上に這い降りた俺の目に、既視感のある物体が飛び込んできた。
遊猟械のそれと大差ないハッチの上に、紙片らしきものが貼りつけられている。
(あれは……?)
心がざわついた。駆けよって見るとそれは、カバンに忍ばせてあったものと同様の品だった。青い顔料で記された象形文字――
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カイルダインは既に目覚めている。生きる意志あらば、その名を呼べ。
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呆然と、その文字と目の前の護令械らしき巨人の顔とを見比べる。
(まさか、こいつが?)
あの紙片のメッセージは、「カイルダインを引き継げ」と告げていた。つまり、こいつがそうなのか?
(そうか、これがあの遊猟械と同様のものならば。もし操縦することができれば、この状況を生き延びられる!?)
冷静に考えれば、ばかげている。俺はこの世界にいわば生まれたばかりのようなものだ。見たこともなかったものを操縦できるとなぜ思えるのか。
だが、万に一つの可能性に賭けようとする、常軌を逸したポジティブさが俺の中に芽生えていた。何かに騙されはめられているのではないかという、うすら寒い疑念を振り払って俺は叫んだ。叫ぶしかなかった。
「カイルダイン!!」
廃墟と丘、そして荒野に、俺の声がこだました。
――キシッ
かすかな軋み音とともに目の前のハッチがわずかにずれ、内部から金色の光が漏れて土煙の中に長く延びる。
(カイルダイン――そは久しく呼ばるる事無かりし我が名。私を引き継ぐか? 資格者よ)
頭の中に中性的な声が響いた。その感応に俺はぞくりと震え、そして確信していた。俺の運命とはこのことなのだ。どうやら俺はなにか、大がかりな事に巻き込まれようとしている。だが、そうだとしてもここで死ぬのはごめんだ。
「ああ、引き継ぐ! 俺に力を貸してくれッ、カイルダイン!」
蓋(ハッチ)が大きく開き、光あふれるその内部が露わになった。
「カ イ ル ダ イ ン !」
俺と巨人、どちらが叫んだのかもうわからなかった。吸い込まれるようにコクピット――この世界の言葉でいえば『操縦籠』の中へ駆け込んだ。
操縦籠の中、鮮やかな色の絨毯に覆われた床の上で180度身をひるがえし、俺は前方の渉猟械を見据えた。
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