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第5話 対決
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ある日、軽く感じるようになった身体でスキップしながら祈りの間に向かう途中のこと。
激しく罵り合う男女の声が耳に飛び込んできた。
「聖女マヌエラ殿。あなたとは……婚約破棄をさせていただく」
「なっなんですって? 急に……理由は?」
ミカル王子殿下の声を聞いた瞬間、最初に感じていた彼の弱気な印象が完全に吹き飛んでしまった。
自信を持ち、堂々と聖女マヌエラ様に意見を言っている。
「あなたは散財を続けている上、聖女の仕事を全てリージアさんに押しつけている」
突然出る私の名前にハッとする。
「だとしたら? 次点の……足りない聖女の訓練をしているだけですわ」
「それを怠惰というのだ。リージアさんは十分やってくれている。だからあなたは不要だ。今すぐ……。今すぐこの城を……国を…………出て行け!」
彼は勇気を振り絞って、立ち向かっているのだと感じた。
とても心強く感じる。
人だかりのため彼らの姿を見ることが出来ない状況が続く。
怒号による言い合いがしばらく続き——。
「……分かりましたわ。ならば、出て行きます。こんな国、魔物が押し寄せてきて滅べばいいのですわ!」
そんな叫び声にも似た声のあと、ツカツカと足音が聞こえた。
野次馬をかき分けて出てきた聖女マヌエラ様が、私とすれ違う。
「ふん、あなたも……あの愚かな王子と共に滅べばいいのよ」
聖女マヌエラ様はそう吐き捨て、城の出口に向かっていった。
その口は歪んで……まるでざまあみろ、と言わんばかりだ。
私は、状況を良く飲み込めず、ただ立ち尽くしていた。
そこにミカル王子殿下がいらして、話しかけて下さる。
「おはよう、リージアさん。来ていたんだね……さあ、今日のお祈りに行こう」
さっきまで別れ話をしていたとは到底思えない、すがすがしい笑顔で、彼は私の手を引く。
本当にその顔は、すっきりとしていて、輝いていた。
嵐の後に顔を出した太陽のように。
結局、マヌエラ様は、この王国を出て隣国の貴族の元に向かったのだという。
後で知ったのだけど、その貴族とは、私をおもちゃにしようとした聖女コレクターだった。
聖女を王家に取られて歯がゆい思いをしていたのだとしたら……望んでいた本物の聖女が手に入って満足なのだろう。
「二人ともいつの間に……お兄ちゃんもリージアさんもすっかり仲良くなって」
「王女殿下、おはようございます」
「ねえ、アタシも仲間に入れてよ」
いつものようにミカル王子殿下と手を繫ぎ、祈りの儀式を始めようとしたところに、可愛らしい女の子がやってきた。
彼女はミカル王子殿下の妹で、十三歳になるらしい。
少し、ミカル王子殿下にヤキモチを焼いている様子がかわいい。
「えっと……構わないかな? リージアさん」
「はい、もちろんです」
王女殿下は、私とミカル王子殿下の間に入った。
手を繫ぐと、やはり魔力が回復していく。
それどころか、昨日までよりさらに多く回復することに、私は驚くだけだった。
次の日も次の日も、王女殿下がやってくるようになった。
彼女はお転婆らしく、時々生傷ができていることがあり、それを私が癒やすこともあった。
しばらく経ったある日のこと。
儀式の後、王女殿下が私の髪の毛をまじまじと見ていることに気がついた。
激しく罵り合う男女の声が耳に飛び込んできた。
「聖女マヌエラ殿。あなたとは……婚約破棄をさせていただく」
「なっなんですって? 急に……理由は?」
ミカル王子殿下の声を聞いた瞬間、最初に感じていた彼の弱気な印象が完全に吹き飛んでしまった。
自信を持ち、堂々と聖女マヌエラ様に意見を言っている。
「あなたは散財を続けている上、聖女の仕事を全てリージアさんに押しつけている」
突然出る私の名前にハッとする。
「だとしたら? 次点の……足りない聖女の訓練をしているだけですわ」
「それを怠惰というのだ。リージアさんは十分やってくれている。だからあなたは不要だ。今すぐ……。今すぐこの城を……国を…………出て行け!」
彼は勇気を振り絞って、立ち向かっているのだと感じた。
とても心強く感じる。
人だかりのため彼らの姿を見ることが出来ない状況が続く。
怒号による言い合いがしばらく続き——。
「……分かりましたわ。ならば、出て行きます。こんな国、魔物が押し寄せてきて滅べばいいのですわ!」
そんな叫び声にも似た声のあと、ツカツカと足音が聞こえた。
野次馬をかき分けて出てきた聖女マヌエラ様が、私とすれ違う。
「ふん、あなたも……あの愚かな王子と共に滅べばいいのよ」
聖女マヌエラ様はそう吐き捨て、城の出口に向かっていった。
その口は歪んで……まるでざまあみろ、と言わんばかりだ。
私は、状況を良く飲み込めず、ただ立ち尽くしていた。
そこにミカル王子殿下がいらして、話しかけて下さる。
「おはよう、リージアさん。来ていたんだね……さあ、今日のお祈りに行こう」
さっきまで別れ話をしていたとは到底思えない、すがすがしい笑顔で、彼は私の手を引く。
本当にその顔は、すっきりとしていて、輝いていた。
嵐の後に顔を出した太陽のように。
結局、マヌエラ様は、この王国を出て隣国の貴族の元に向かったのだという。
後で知ったのだけど、その貴族とは、私をおもちゃにしようとした聖女コレクターだった。
聖女を王家に取られて歯がゆい思いをしていたのだとしたら……望んでいた本物の聖女が手に入って満足なのだろう。
「二人ともいつの間に……お兄ちゃんもリージアさんもすっかり仲良くなって」
「王女殿下、おはようございます」
「ねえ、アタシも仲間に入れてよ」
いつものようにミカル王子殿下と手を繫ぎ、祈りの儀式を始めようとしたところに、可愛らしい女の子がやってきた。
彼女はミカル王子殿下の妹で、十三歳になるらしい。
少し、ミカル王子殿下にヤキモチを焼いている様子がかわいい。
「えっと……構わないかな? リージアさん」
「はい、もちろんです」
王女殿下は、私とミカル王子殿下の間に入った。
手を繫ぐと、やはり魔力が回復していく。
それどころか、昨日までよりさらに多く回復することに、私は驚くだけだった。
次の日も次の日も、王女殿下がやってくるようになった。
彼女はお転婆らしく、時々生傷ができていることがあり、それを私が癒やすこともあった。
しばらく経ったある日のこと。
儀式の後、王女殿下が私の髪の毛をまじまじと見ていることに気がついた。
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