カイジン王の娘リミカ

藤田吾郎

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第3話 クエスト開始

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帰り道。俺はパンサー王から貰った資料を手に取りながら、新種のモンスターと思われる情報を目に通す。

今回の新種のモンスターの探索に少なくても各国のクエ管がハンターを判定したしたのは最低でもBランクのハンターだ。その中にもAランクハンターも居るわけだ。

行方不明が数が多いとなると少なくても今回の新種は下手するとSランクモンスターの竜同士の異種交配の可能性が出てくる。

あくまでも仮説に過ぎないが、現れると、されるポイントがモンスター地帯でも森林区域、そしてハンターの足取りも森林区域を最後に足取りがぱったりだ。

森林区域は何度か足を踏み入れたが森林というより樹海に近い。あそこは無線の効きが悪い上に磁場が発生する場所もあるから感覚が狂いやすい。

そこでSランクモンスターである竜と出くわすと討伐するには骨が折れるというものだ。

おまけにあそこにはBランクモンスターの【凶暴獣】と言われる種族がうじゃ、うじゃ居るもんだから森林区域は最低でもBランクハンターでないとクエストが受けれないという奴だ。

はてさて、俺はSランクハンターだとしても、新米ハンターリミカはBランクの能力はあるけどDランク。アスカは戦闘なら問題ないけどサバイバル能力については恐らく未経験。

「アスカ。多分だが今回のクエストは野宿になるけど大丈夫か?」

「え?まぁ全然大丈夫っすよ?!今まで自分、コレで過ごしてたので?」

「トランクの中で?」

アスカは自分の持っているトランクを見せて自慢気に言うけど、明らかに大きさ的には人が入るサイズじゃねぇだろって思わせる表情をするしかない。

「ショウさん。コレが普通のトランクに見えます?」

「ただのトランクだろ?」

「ちっ、ちっ、ちっ!コレは見た目は普通のトランクじゃなぃっす。コレはタイガさんが俺への餞別にもらったものです。」

「タイガの発明品?だとしたら何か仕掛けがありそうな気がするけどさ。」

「コレはトランクを開けると中は別の空間になっている仕組みっす!この中には自分の商売道具に衣類、コテージも入っていて外の景色は快適な温度調整がされている草原でコテージも付いているっす!」

「つまり、寝る時や雨風をその中で凌いでたってわけか?」

「そんな感じっす。」

タイガの発明品は発想が奇想天外っていうか、奇天烈というか、科学者だからこそ何でもありな発明品が出来上がるんだなぁ。

「コレがあれば寝泊まりは快適に過ごせるので大丈夫っすよ。」

「確かにな。そうだ、王都を出てから一旦、家に帰って晩飯だなぁ。」

「ショウさん。今日の晩飯は何にします?」

アスカは目をキラキラしながら子供の様に聞いてくる。

「そうだなぁ。今日は外食にするか。」

「外食です?」

「俺の行きつけのバーがあってな。そこのマスターの料理が美味いんでな。」

「それは自分、楽しみっす。」

「ついでに、そこのバーはハンター達が集うバーだから、今回のクエストについて他のハンター達にも聞いてみたい。」

「じゃあ、そうと決まれば早く家に帰りましょう。」




一方、俺が王宮に向かっている頃、俺の家で1人ポツンとお留守番をしているリミカはと言うと、ソファーにペタンと座りボーっとしている。

「ショウさんのお家は、とても広い、お家なのです。」

リミカは、ふと立ち上がりトテトテと歩きながら家の中を散策し始める。

「それに家の中は綺麗にしてあるのです。」

窓はリミカが鏡の様に写し出されるほど綺麗に磨かれており、フローリングもくすみが無いほどワックス掛けがされてある。

「この写真は?」

窓辺に置かれた額縁にしまわれた7人の男達の写真があるのを手に取る。

「ショウさんにアスカさんと、あとの5人は……」

残るはニカっと笑いながらピースをするヤマト。

優しく微笑みながら手を振る姿を見せるコウタ。

煙草を口にくわえながら片手に聖書を持つ姿のケンジ。

両手でハートを作ってるが無表情のタイガ。

腕組みをして勇ましい表情をするリュウジ。

そう、セブン・ギアーズが終戦後のパレードの後、それぞれの道を歩む前に撮った写真。

リミカはジィーっと見た後に額縁を元に戻した後にトテトテと歩き始め、リビングを出ると別の部屋へと足を運ぶ。

ドアノブを回し部屋に入ると書籍部屋の様子。

ある一冊の本を手に取りパラパラとページをめくる。

その本はハンターとしての技術、心得が書かれた本でもあり、それぞれのモンスターの特徴や性格、バイタルの位置、取れる素材や食べれる肉の部位。

狩ってからの捕縛方法、そしてハンターとしての覚悟やモンスターも1つの生命である事の尊さ。そういう事がズラリと書かれていた。

その本をざっとめくり終わった後に元の位置に戻して別の本を手に取り、またパラパラとページをめくり始める。

「これはショウさんの日記なのです?日付は……」

それは本というより日記だ。1番最初のページは8年前の戦争が終わった日である。

『今日から俺は日記を付ける事にした。戦争が終わり平和が訪れた。毎日とまで行かないけど、出来るだけ日記を付けていこう。』

『終戦パレードが終わり俺、アスカ、ヤマト、リュウジ、コウタ、ケンジ、ダイガはそれぞれの道を歩む事にした。平和な世界に俺達は要らない。これからは、1人の住人として溶け込み1人の住人として、この世界に社会的貢献をしていこうって話合った。少し寂しいが、サヨナラじゃないだから最後には思いっきり笑って写真を撮った。』

「あの写真はセブン・ギアーズの人達だったのですね……」

『今日からズーパーク国で初クエスト。マジで緊張したわ。初討伐して血がめちゃくちゃ出てきて、1つの命を殺めてしまう罪悪感。俺達が普段、何気なく食ってる肉は命を殺めて俺らの生きる糧になっている。生き物の命に感謝しなくちゃだな。』

『クエ管のハンター更新でまさかのDランクスタートからAランクに飛び級という。これから、また忙しくなりそうだわ。どんなクエストが待っているんだ?』

『とうとうSランクハンター。Sランクだと竜を討伐すると言う。今まで以上に気を引き締めて頑張らないとだな。初心を忘れずってやつだな。』

『よし。今日からこの家に住む事になった。引っ越しは少し大変だったけど、この土地も俺的に街並みが見えるし林もあって、源泉の温泉も引いてこれる。あとは……恋人とか出来てれば良いかな?』

『今日は岩竜を討伐。それにしてもマジで硬いの一言。アイツの弱点は柔らかい腹だけど、それなりに硬かったわ。高速の蹴りを何回食らわして倒したことか……でも、岩竜から良い素材が取り出せたから報酬に色が付いたから良いとしよう。』

「ショウさん……私も1日も早く強くなるのです。ショウさんに認めてもらいたいのです。」

リミカの心の中で何かが突き動かされる感情が高ぶりリミカは日記を本棚にしまい、トテトテと部屋を出て愛刀ムラサメを手に取り玄関に向かう。

玄関のドアを開けてムラサメをゆっくりと抜き上から下へと素早く素振りを始める。

「まずは素振りからやるのです。」

リミカはムラサメの峰を背中に着くまで腕を上げて膝下まで降ろしたと同時に腰を落とす。すると剣先が空を切る音が聴こえてくる。そしてそれを100回までやる。

「96……あっ、剣先がズレたのです……96……ハァ、ハァ……97、98、99……」

剣先がズレると空を切る音が聴こえないのでやり直す。

「あと、1回なのです……」

リミカは肩で呼吸をするほど息を上げて、少し息を整えてから。最後の素振りを始める。

「100!ハァハァ……終わったのです……」

リミカはムラサメをゆっくり納刀した後にペタリと座り込み深く呼吸をして息を整える。

「なんでしょうか?急に何かに突き動かされるのです。ショウさんの隣で一緒に居たいのです……私を強獣から助けてくれた時、凄くショウさんがカッコよく見えたのです。」

リミカは雲ひとつない晴天の青空を見上げながら昨日の出来事を思い出しながらボーッと見つめる。

「危うく私は命を落とすところだったのです……」

リミカは立ち上がり抜刀の稽古を始める。

深く呼吸をした後に静止して構えを取りノーモーションでムラサメを抜くと同時に息を吐き小手切り、袈裟斬り、胴突きの三連撃をやる。

次にちぶりの構えからムラサメを納刀して勢いよく抜刀してからの二段付き。

それぞれを100回ずつやると全身の筋肉を使うためか息が上がり額から汗は滴り落ちる。

リミカはムラサメを納刀して座り込み胡座をして手は膝に添えてゆっくりと鼻で呼吸をしてから腹式呼吸を始める。

そして息を吐いたと同時に座ったままで上半身を腰を反らせて吐ききったと同時に腰を前屈みに曲げる。

続けて同じ要領で腰をスパイラルさせる運動と呼吸を繰り返し、ある程度の回数をやったら右回りから左回りを同じように続ける。

それが終わったら息を吸ったと同時に肩部を引き上げ、吐いたと同時に肩部を引き下げる。ある程度、回数をやり、最後に吸いきった後に肩を引き上げたまんま止める。そうする事で肩凝りが解消される。

次に息を吸った時に顔を左に向けて、吐いたと同時に顔を右に向ける。首の小さな筋肉を動かし首の可動を助けてくれるのだ。

最後にゆっくり深呼吸を繰り返し、徐々に少しずつ呼吸を早くしていく火の呼吸と言われる方法。そして最後に息を吐ききった後に腹を凹ませ横隔膜で内臓のマッサージ。

クンダリーニ・ヨガによる精神統一。剣術を扱う者にとって身体を鍛えるのは勿論のこと、精神も常に鍛えておかなければ実戦で命を落としてしまう。

「取り敢えず、今日の稽古は終わりなのです。汗もびっしょりなので、昨日の残り湯でお風呂に入るのです。」

リミカは立ち上がりトテトテ歩き玄関のドアを開けてびっしょりかいた汗を流すため浴室へと向かう。

そして、お風呂で汗を流した後に着替えるとリミカの腹の虫が鳴るのが分かった。

「そういえば、もうお昼時なのですね。ショウさんが作ってくれたサンドウィッチを食べるのです。」

リミカはテーブルの上に置かれたバスケットに被さってる布を取ると、サンドウィッチとオヤツのクッキーが置かれているのを確認する。

「とても美味しそうなのです。頂きますなのです。あーん……美味しいのです。」

リミカはモグモグと一口、また一口と止まらない様子。

「こんなに美味しいサンドウィッチを食べたのは初めてなのです。ショウさんは料理がお上手なのです。」

サンドウィッチをペロリとたいらげたリミカはお腹いっぱいになりソファーでウトウトしていると次第に夢の中へと眠って行く。



その頃、俺とアスカは家に到着。お昼を過ぎて、ちょうどオヤツを食べる時間ぐらいだろう。少しばかり太陽が傾き始める時間である。

「ただいま~。」

「ただいまっす。」

俺は家の玄関のドアを開け俺とアスカは声を掛けるがリミカから返事が返ってこないのでリミカは居ない様子。

「ん?アイツ何処だ?」

「探してみます?」

取り敢えず俺とアスカは目を合わせてリミカを探すことにするが、リビングに入るとリミカが気持ち良さそうにソファーで昼寝しているのがわかったので一安心。

「どうやら、昼飯食ったら眠くなっちまったようだな。オヤツは食ってないみたいだし。」

「そういや、お昼食わないで帰ってきたので小腹空いたっす。」

「じゃあ、夕飯までコレでも食って繋いどけ。」

「やべ!マジで美味いっす!」

俺はリミカの為に作ったクッキーをアスカに上げて1つ食べると美味しそうにドンドン食べ始める。

「ふみゅ……ファ~~……ショウさん。アスカさん。おかえりなさいのです……」

リミカは眠気まなこで目を擦りながら欠伸をして起き上がる。

「ただいま、リミカ。よく眠れたか?」

「はいなのです。少し寝てたのです。」

「そっか。」

「それ、私のクッキー……」

「あぁ、ごめんごめん。少し食べちゃったけど、全部あげるっすよ。」

リミカはソファーから立ち上がりアスカが美味しそうに食べてるクッキーをうらめしそうに見つめるリミカにアスカは少し苦笑いしながらクッキーの残りを渡す。

「頂きますなのです。」

リミカは一口食べるとうらめしそうな顔からすぐに機嫌を直して年頃の女の子のように可愛らしい顔になる。

「美味しいのです。外はサクサク、中はシットリなのです。」

リミカは夢中になってクッキーを食べ続け、あっという間にクッキーを完食。

「リミカ。明日、クエストに行くから今日の晩飯は俺の行き着けの店で色々と情報を貰いながら飯を食うから。」

「はいなのです。」

「ついでに飯を食いながら他のハンター達からクエストの情報も貰から適当に準備を頼むわ。」

「準備はもう大丈夫なのです。」

リミカは愛刀のムラサメを腰に携えながら親指を立ててグッドをしながら言う。

準備も終わった事なので荷物は金貨の入ったガマ口の財布を持って、俺とリミカとアスカは外に出てから戸締りを確認してからマスターの店へと足を運ぶ。

暫く歩くとヴィンテージ感の雰囲気ある酒場に辿り着く。見た目は古いけど上質な酒と美味い肴としてクエスト後のハンターにとっては打って付けの店がマスターの店だ。

「いらっしゃい。おぉ!ショウ君!」

「どうもマスター。」

俺は扉を開けて店の中に入ると、人柄の良さが滲み出た優しい顔をしたマスターが笑顔で出迎えてくれる。

「あれ?今日は知らない顔が2人いるね?」

「コイツは昔の馴染みのアスカ。」

「どうもっす。アスカって言います。」

「そんで、この娘は俺が昨日から俺が持った新米ハンターのリミカ。」

「リミカなのです。宜しくお願いしますなのです。」

「あぁ、そうかい。カッコいいお兄さんに可愛らしいお嬢さんとはショウ君には良い仲間が集まるね。」

マスターは何だか嬉しそうに話しながら俺とアスカとリミカにお絞りを出してから、それぞれにメニューを渡す。

「今日のオススメは有蹄獣の竜田揚げと甲殻獣のピラフだよ。どうぞ食べてみて。」

有蹄類は草食モンスターの種類で主に野生で存在しているし食用の家畜だったり荷車を引いたりと性格は比較的に大人しめ、食用に関しては酪農家の育て方次第で脂身の甘く口の中でとろけてしまうような上質な肉も出来ると言われる。

野生で存在する有蹄類は比較的、赤身が多く栄養価が高く弾力もあり歯応えのある高タンパクな肉質でハンターのスタミナ補給にも欠かせない。

一方、甲殻獣とは海辺に住む海水モンスターと呼ばれる部類で、読んで字のごとく海辺に住むモンスター。

陸に住むモンスターと違い立地や大きさからしてAランクモンスターにランク付けされている。海でのクエストは陸の時と違いリスクが高く、モンスター自体も他のモンスターと比べて動きも全く違う。

そのため、Aランククエストとして扱われてる理由だ。

甲殻獣は大きなハサミを持ち、そのハサミでハンマーにしたり標的をギロチンのように挟んだりする。しかし、足の部分は美味く、また内臓にあたるミソと呼ばれる部分には深みのある苦さがある。

取り敢えずオススメの料理2つとリミカはリンゴジュース、俺とアスカはぶどう酒を頼み飯を食いながら俺は他のハンターを探すとハンター仲間と目が合い話し掛けてくれた。

「おっ!ショウじゃねぇか!!」

「よぉ、ビレッジ。今日のクエストはどうだったか?」

俺に話し掛けてくれた色黒で筋肉質のハンターであるビレッジ。Aランクハンターだ。

「聞いて驚くなよ?今日のオススメ料理の甲殻獣は俺のギルドが討伐したんだぜ?」

「おぉ!まじか?!これから頂くところだぜ。」

「バレットとフリアにヘイポーが罠に誘導してくれたお陰で誰も擦り傷一つもなく無事に帰れたってわけだ!」

「凄ぇな。ビレッジのギルドはスマートに獲物を狩るから、もう少しでクエ管からSランクハンターの称号を貰えるんじゃえねぇか?」

「馬鹿言うなよ!お前なんか轟竜を相手に俺達が腰抜かしてるのに1人で討伐するだからSランクなんて、まだまだ!」

ビレッジはガハハと笑いながら俺の肩を思いっきり叩きながら言う。

「いや、アレはだなぁ。俺の鎧が特別な訳で普通の装備だとCランクくらいだぜ?」

「そう言うなよ!お前が居なかったら俺達ギルドは全滅だったんだからな!」

ビレッジは酒の酔いが回ってるのか陽気で笑い上戸な様子。そこで俺はビレッジに新種のモンスターに着いて聞いてみる事にする。

「なぁ、ビレッジ。聞きたい事があるんだが良いか?」

「おう、どうした?」

「最近、新種のモンスターの調査しているハンターが行方不明になっているのを聞いているか?」

するとビレッジはさっきまでの陽気な笑顔から少し眉間にシワを寄せながら静かな声で話し始める。

「実は、その話は聞いている。俺達は今の所、そのクエストには手を出してない。」

「やっぱり知ってたか。」

「どうしたんだ?急に。」

「そのクエストを明日、受ける事になってな。」

「ショウ。俺とお前は8年前の戦争が終わった直後にハンターになった同期であり、一緒に酒を交わした仲だから言う。このクエストは降りた方が良い。」

「……」

「別に僻みとか嫉妬じゃねぇ。嫌な予感がするんだ。俺の嫌な予感は当たるのは知ってるだろ?」

「まぁ、ルーキー時代、一緒にクエストやってきたんだ。分からない俺じゃない。だけど今回はどうしても受けなくちゃいけないんだ。」

俺はビレッジを真剣な眼差しで見詰めると、ビレッジは観念したような顔をして溜め息を吐く。

「やれやれ。お前はこうと言ったら曲げない人間だからな。あくまでも噂だがどこか信憑性がある話だ。」

「助かるよビレッジ。一杯奢る。」

「そりゃあ、どうも。そんで内容だけど、新種のモンスターを調査したギルドの中には命からがら戻ってきたギルドが居てな。その話によると……」

「その話によると?」

「そのギルドは新種のモンスターを発見。報告によると新種のモンスターは毒竜と俊竜のハイブリッドという話だ。」

「だとしたらクエストはSランクじゃねぇか。」

「まだ話はある。そのハイブリッドのドラゴンは何者かに操られているという話だ。」

「操られている?どういう事だ。」

するとビレッジは今まで以上に真剣な眼差しで俺に言う。

「カイジンにモンスターが操られているって話だ。」

「……っ?!」

カイジンだと?カイジンが新種のモンスターを操っている?何故だ?確かにパンサー王の話でもリミカを連れてたお供のカイジンが居るのは確認出来たからカイジンが生き残ってるのは確かだ。

しかし疑問が残るのはカイジンが何故に今になって動き出している所。そしてカイジン達の目的はなんなんだ?

「って言う感じだ。嘘か本当かは分からないが何となく、この仕事は嫌な予感がするぜ。」

「……わかった。ありがとう。情報料だ。良い酒でも飲みなビレッジ。」

俺は懐からビレッジの席に金貨を数枚置いてアスカとリミカの居る席へと戻ると席には美味しそうな有蹄獣の竜田揚げと甲殻獣のピラフと酒が用意されている。

「ショウさん!ちょうど料理が出てきたところっす!早く食べましょう!」

「お腹が空いたのです。早く食べるのです。」

「おぉ、悪い悪い。じゃあ飯を食べるとするか。」

「「「頂きます。」」」

俺とリミカとアスカの3人はマスターの絶品料理をお腹いっぱい食べてお会計を済ましてから、家に戻り、リミカに明日のクエストを大まかに説明した後に早めに寝かせる事にした後、俺はアスカにビレッジからもらった情報を細かく話す。

「ショウさん。コレって……」

「あぁ、カイジンの生き残りが僅かだと信じたいけど暗躍しているな。」

「8年前、あの戦争以来、自分も1回も見掛けてないっすよ?」

「それは俺もだ。だけどパンサー王がカイジンの生き残りが居た話を聞いているだろ?何も1人だけとは限らない。」

「このクエスト。もしかしたらリミカちゃんには危険じゃないかすか?」

「……」

確かに危険だ。リミカ自身はカイジン王の娘。カイジン王が死んだ今、そのカイジン王の意思を継ぐべき血筋はリミカだ。カイジンの生き残りはリミカを連れ去り、カイジンの王に祭り上げる可能性もある。

また、今はリミカ自身はカイジンとしての本能を剥き出しにしていなくて姿は人間のまんまだ。だけど、カイジン達と会う事によってカイジンの本能を呼び起こす可能性もなくはない。

「だけど、リミカは父親であるカイジン王の遺品を手に入れて一緒に埋葬しようとしている。」

「信じるしかないって事っすね。」

「そうだな。アイツを信じるしかない。」

「もし、もしっすよ。リミカちゃんがカイジンとしての本能が目覚めて自分らに牙を剥いてきたらどうするんすか?」

リミカがカイジンとしての本能が目覚めた瞬間にリミカは俺らの知ってるリミカじゃ無くなるのも充分にあり得る話。

その時には……

「その時には、俺が全力でリミカを止める。例えリミカを自分の手でかける事になっても。それが師匠としての役割だ。」

「なるほど。ショウさんらしいっす。明日は早いんで自分はもう寝るっす。」

アスカは立ち上がり、リビングを出てアスカは寝室へと向かう。

俺はリビングに1人だけポツンと薄暗い部屋でグラスに注がれたウィスキーのロックを片手にグラスを持ちながら考える。

ビレッジの言っていた嫌な予感。ここ数日で何かに引き寄せられるようにリミカと出会い、アスカとの再会、そして8年ぶりに聞くカイジンの存在。

この平和な世界に再び混乱と恐怖が訪れると言うのか?

いや、今は考えても仕方ない。今は俺のやるべき事をやらなくちゃいけない。

俺は残ったウィスキーのロックをイッキに飲み干してからリビングのソファーに毛布を掛けると数秒もしないうちに眠りにつく。


翌朝、俺とリミカとアスカは早朝から起きて準備が整うと同時に家を出てクエ管に向かうが、途中で市場に寄って出店でハンバーガーを食いながらクエ管に向かう。

そして、クエ管に着くと扉を開けると受付に立っているユリアちゃんに俺とアスカとリミカはハンターライセンスを見せる。

「Sランクハンターのショウ君にDランクハンターのリミカちゃんに、あれ?知らない顔なんだけどパンサー王の推薦?」

「あぁ、ユリアちゃん。こいつはアスカ。訳あって少しハンターの手伝いをしてくれてな。パンサー王とも知り合いだから、パンサー王の直筆でハンターになったんだよ。」

「どうも、アスカです。ユリアちゃんだっけ?今度、良かったら自分とお茶でも……」

「ナンパするな!」

「イテテ……」

女と見れば見境なくナンパするアスカに鉄拳を一発ほど頭に打ち込むとユリアちゃんは苦笑いしながらクエスト内容の確認。

「今日のクエストはね。パンサー王の直属のクエストで今回は新種のモンスターの生態を確認して報告。また成功内容は生死問わずだから討伐しても大丈夫って話。それで大丈夫かしら?」

「あぁ、大丈夫だ。」

「場所は森林区域。でも、結構ここからは徒歩で行くには遠いから森林区域の入り口の手前まではウチで荷車を用意するわ。」

「ありがとう助かるわ。」

クエストの場所に行く場合はだいたいは徒歩で行くんだけど、徒歩で行くには遠い場所の場合、移動で体力を消耗してしまう為、時としてクエ管から荷車を手配してくれる。

荷車っていうより馬車に近いんだけどさ。引いてくれるのは調教されたモンスターだからさ。

俺とリミカとアスカは荷車の中に乗りクエ管のスタッフが有蹄獣の2頭を鞭で叩くと有蹄獣はトコトコと歩き出す。

その間、俺とアスカとリミカはクエストの内容を確認し直す。

「リミカ。今回は新種のモンスターの生態調査だ。正直なところ分からない事が多すぎる。聞いた話によれば、毒竜と俊竜のハイブリッドだって話だ。」

「毒竜と俊竜ですか?」

「あぁ、毒竜って言うのは読んで字のごとく全身から毒を噴き出す竜だ。皮膚に爪、牙に呼吸から毒ガスを放ち、全身に毒を持ち、奴が歩けば植物が腐敗すると言われる。そして毒竜の毒を大量に浴びると死に至ると言われているが、毒竜の毒は微量なら薬になると言われている。」

「ふむふむ、なるほどなのです。毒竜の毒は微量なら薬になるっと。」

リミカは手帳にメモをしながら俺は話を続ける。

「俊竜はとても身軽でスピードに特化した竜だ。その速さは一瞬で獲物を確実に仕留める。気配が感じ辛い上に動きが速いから常に気配のアンテナを張り巡らせないと一瞬で命取りになる。弱点は攻撃の瞬間に速すぎて切り返しが出来ないところだ。その瞬間にカウンターで仕留めれば倒せる。」

「俊竜は攻撃が速い分、切り返しが出来ないので、その瞬間を狙うっと……」

「つまりショウさん。その毒竜と俊竜のハイブリッドって事は一瞬のうちに致死量の毒を浴びせられるって事です?」

「多分、そんな所だろうな。それに関しては未知数だから何とも言えない。出会わないと分からないって話だ。」

新種のモンスターは文献資料やハンターでの情報が少ない為、リスキーなクエストして扱われるが、その新種モンスターが竜同士だとしたら更にリスクの高いクエストになる。

それで居てカイジンが絡むと、もう一個人のハンターには抱えられない。むしろ国の問題に関わるって話だ。

「ついでにだ。リミカ。まだ話してない事があってだな。」

「なんですか?」

「このクエストには行方不明になっているハンターもいると言う話だ。極秘扱いで行方不明になっているハンターの捜索も入っている。」

「了解なのです。」

俺はクエ管のスタッフに気付かれないようにヒソヒソ話をリミカにすると、リミカは空気を読みとって小さな声で敬礼する。

「着きました。森林区域です。」

クエ管スタッフがそう呼びかけると俺達3人は荷車から降りると、目の前には森林というより樹海と言った方が相応しい樹々がそびえ立っている。

「では、私はこれで、ご武運を。」

クエ管のスタッフが有蹄獣に乗り荷車を発車させるとトコトコと動き出し姿が消えるように居なくなっていく。

天気は曇り、薄い霧が出て来ていてるので視界は良好とは言えない。更に言えば森林区域は磁場があるので勘が鈍りやすい。

「取り敢えずだ。森林区域は磁場が強いから絶対に気を抜かない事、そして、ある程度の距離を保ったまんま歩く事だ。万が一に備えて戦闘の準備をしておく事。良いな?」

「了解っす!」

「了解しましたのです。」

そして森林区域に俺、リミカ、アスカの順番で足を踏み入れて歩き出して行く。

「なんか、違和感があるっすね。」

「なんだか頭が重苦しい感じなのです。」

「磁場が結構強いからな気を付けろよ。それに今日は視界があんまり良くない。離れると速攻で迷子だ。」

俺達は樹海の中を進めて行くと少し遠くから複数の唸り声が聞こえてくる。

「何か居るみたいっすね。」

「なんだか、足音も近くになってきているみたいなのです。」

「ちっ!早くもモンスターと遭遇かよ。」

薄暗い霧の中から赤く光る幾つもの群れが俺達を檻のように囲い今にも飛び掛かりそうな勢いで唸り声を上げる。

「ガルルル……」

「グゥゥゥウウ……」

「ガァァアア!!」

「グルルル……」

「ウウゥゥ……」

「ウウォォオオーーンッ!!」

霧が少し晴れると全身が鋭く太い毛の様に逆毛立つ針、身体の色は黒と白のモノトーン。Bランクモンスターの針獣(しんじゅう)だ。

「ったく、いきなりBランクモンスターに出くわすのは面倒だな。さっさと片付けるか……」

俺がポケットからエボル・ギアを取り出して変身しようとすると、すかさずアスカが前に出る。

「なんだよ?アスカ。」

「いや~ショウさんは体力の温存で休んでてくださいっす。リーダーが倒れたら自分ら全滅っすよ?だからここは自分で任せてくださいっす。」

アスカの言う通り、Bランクモンスターを相手にするのは意外と面倒だし、逃げようと思えば逃げれるが、後々、面倒になるから基本的に倒す。

だけど、今回はクエスト初心者のリミカとアスカが居るので俺が倒れるとパーティは全滅。

それなら、その辺はアスカに任せた方が良さそうだ。

「なんなら私も手伝うのです。」

「大丈夫っす。リミカちゃんは見てるだけで休んでてくださいっす。」

リミカは助太刀しようと愛刀のムラサメを抜き構えようとするがアスカはそれを制止する。

「しかし……」

「まぁ、アイツなら大丈夫だ。問題ない。」

リミカは心配しながら俺を見つめるが俺はリミカの頭をポンポンすると安心したようにムラサメを鞘に納めて俺の横へちょこんと隣に寄ってくる。

「変身」

【Evolve gear start SOGGY】

アスカは全身を青色の炎に包まれ、その炎を振り払うとシルクハットに長いマント胴体にスカルの紋様をイメージし銃を片手に持つ鎧の戦士である【サギー】に変身する。

「さて始めるっすよ。」

アスカはベルトのバックルを1回タッチする。

【Gun attacker】

機械音と同時にアスカの持つ銃に青色のエネルギーが集中しながら帯びて行くと、アスカは針獣に銃を向けてそのトリガーを引くと針獣は額に弾丸を撃ち込まれて一瞬にして倒れこむ。

「はい、いっちょ上がりっす。」

【Evolve gear sleep】

アスカは変身を解除させると同時にリミカが拍手する。

「凄いのです。一瞬でモンスターの群れを倒したのです。」

「相変わらずの早撃ちガンマンだな。」

「いや~久し振りっすから心配だったんすけど、どうにか大丈夫そうっす。」

「さて、捜索を続けるか。」

俺は取り敢えず、針獣の針を回収してから大量の針獣の針はアスカのトランクの中に入れておく。針獣の針は狙撃手が使うボウガンの矢に使えるので良い値段で売れるからな。

歩きながら空を見上げると少しずつ天気が晴れてくると、同時に霧も薄くなってきている。天気は回復の兆しが出て来ている。

しかし、樹海の中はまた何が起こるか分からないので気は抜けない。

歩いていると樹海から拓けた場所が見えて来るとそこには無残な光景が俺達3人が目の当たりにする。

「これって……」

「死体なのです……」

「ちっ!白骨化してやがる……」

幾つもの無造作に置かれた白骨化した死体が転がり込んでいる。死体の1人1人には鎧や兜、武器も転がり込んでいる。

俺は行方不明者のリスト照らし合わせると苦虫を噛み潰したような眉間にシワを寄せて険しい表情になる。

「クソ……全部、行方不明になっているハンター達だ。」

「惨すぎるっす……」

「可哀想なのです……きっと、この人達には今も帰りを待っている方達が居るのです……」

リミカは瞳に涙をウルウルと浮かべながら小さく微かな声で呟く。

ハンターがクエストで命を落とす事は少なくない、だけど、こんな死に方はないだろ?

だって……周りを見渡すと植物が枯れはてている。これは毒竜が現れたとする証拠。それに新種のモンスターは操られていたと聞いている。

だとしたら、この仕業は……

「おやおや。これはこれは新しいハンターのパーティですかね~?」

「それに見た事がある顔だ。」

薄暗い霧の向こうから2人の男の声が聞こえてくるのが分かる。

聞き覚えのある声に俺とアスカは眺めるようにジィーっと目を凝らして見る。

「てめぇらか?」

「やっぱり話は本当だったようっすね?」

「アナタ達は……」

霧の向こうから現れたのは、人の形でもなければ、動物の形でもなく、モンスターでもない。

その姿を見るのは8年ぶり。

「カイジン……ザビー。」

「そう睨むなよ。セブン・ギアーズのショウ。久々に会えて嬉しいよ。」

スズメ蜂をイメージさせ、黄色と黒の模様に右手には毒針のスティンガー。そして厄介なのは物音一つもしないで殺すサイレントキラーだ。

その毒針は同じ場所に2度刺されれば必ず死ぬという事だ。

「あれれ~アスカじゃーん?お久~。」

「こっちは正直、会いたくなかったっすよ。グザン。」

雉をイメージさせる華やかな色をした模様。奴から出させる糸はまさに人の意思に関係なく操るマリオネット。

「何故……アナタ達が……生きているのです?アナタ達は8年前に亡くなったはずなのです!」

「お久ぶりでございます。リミカ姫。ソナタを迎えにあがりました。」

「そうですよ~。我が王の姫君であろうリミカ姫が何故、憎たらしい敵についてるんですか~?」

「わ、私はお父様の遺品を集めて、一緒にお父様の大事な宝物と一緒に安らかに眠ってほしいだけなのです!」

リミカは怖いのであろう、何故なら死んだと思ってた奴が蘇っているのだから幽霊かゾンビでも見ている気分なんだろう。

「何を仰います。リミカ姫。もう一度、カイジン帝国を復活させて、この世界の覇権を握る為に我々は王が必要なのです。」

「そうそう。その王になるのはリミカ姫貴女なんですよ~。」

ザビーとグザンは俺とアスカを他所にリミカと勝手に嫌がらせの様に話を進めている事に苛立ちを覚える。

「おい、てめぇら。何を勝手に話を進めてるんだ?」

「それにリミカ明らかに嫌がってるっすよ?嫌がる女の子を無理強いさせるなんてモテない男の典型例っすよ?」

「ふん。ならば力づくでリミカ姫を渡して貰おうか。」

「それも、そうだねザビー。コイツら嫌いだったんだよね~今も昔もね。殺しちゃう?」

「どちらにせよ渡さなきゃ抹殺する予定だ。さぁリミカ姫を渡して貰おうか?」

「「断る!!」」

俺とアスカはエボル・ギアを取り出して口元で叫ぶ。

「「変身っ!!」」

【Evolve gear start GURARISU】

俺は全身を灰色の炎に身を包まれ、その炎を振り払うと黒をベース複眼に黄色の複眼にシルバーのラインが入り右手には短剣を逆手に持つ鎧の戦士である【グラリス】に変身。

【Evolve gear start SOGGY】

アスカは全身を青色の炎に包まれ、その炎を振り払うとシルクハットに長いマント胴体にスカルの紋様をイメージし銃を片手に持つ鎧の戦士である【サギー】に変身する。

「おぉ、おぉ~久し振りに見る姿。ムカつくけどね。」

グザンは口の中から吐き出す様に手の平サイズの巻物を取り出して地面に巻物を広げて、右の親指を噛み、親指から血が滲みだした瞬間に手の平を巻き物に叩き込む。

「出てこい。毒俊竜(ブスシュンリュウ)!!」

グザンと掛け声と同時に毒竜と俊竜のハイブリッドの竜。毒俊竜が現れる。

「やっぱり話は本当だった様だな。」

「コイツは操られているって事すか?」

「ご名答~。コイツは毒竜と俊竜を強制的に繁殖させて産まれて薬で加速的に成長させて成熟した時に殺害。腐らない様に防腐処理したら玩具の出来上がり。」

「コイツ……」

「ショウ。お前の相手は俺だ。久々に楽しもうや。」

「ショウさん!自分はグザンの操る竜を止めるっす!リミカちゃんは逃げて!」

「はいなのです!」

リミカはアスカの言葉に従い、取り敢えずその場から逃げる。

「逃がさないよー。」

「そうはさせないっす!」

逃げるリミカに追いかける様に毒俊竜を操るグザンにアスカは銃を放つ。

「やっぱムカつくわ。」

「命を弄ぶアンタとは気が合わないっすね!」

グザンは指を動かしながら毒俊竜を動かすとアスカに素早い動きで距離を詰める。

「毒ガスでも食らってお寝んねだね~。永久にね。」

「マジシャン舐めんなっすよ。」

毒俊竜の口から放たれる毒ガスを浴びる瞬間にアスカはマントをヒラリと広げ、その同時にアスカは姿を消す。

「どこに消えた?!」

「ここっすよ。」

「なに?いつの間に……グッ!」

グザンはいつの間にか姿を消したアスカに後ろを取られて反応が遅れ、アスカの銃弾がグザンの背中を撃ち抜く。無論、グザンは見事に攻撃を許してしまう。

「タネも仕掛けもございません。」

「腹立たしいねぇ~」

グザンはアスカに憎たらしさ全開で殺気をぶつけるがアスカは余裕綽々の様子。

「まだまだ行くっすよ。」

アスカはグザンに銃口を向けて銃を乱射するが、グザンは毒俊竜を操り銃弾を防ぐ。

「生き物を盾にするなんてやっぱ外道っすね。」

「外道?そもそも人情のカケラもないカイジンだよ~。」

時を同じくして俺はザビーと交戦中、ザビー右手のスティンガーを突き刺そうとするが、俺は逆手に持った短剣で捌き中段の蹴りを加える。

「あらよ!」

「フン。」

「相変わらず表情が読めない奴だな。」

攻撃が効いていない訳じゃないが手応えを感じられない。何回かやり合った事はあるけどコイツはやり辛いわ。

「オレの攻撃が避けれるか?ショウ。」

「この技かよ。」

ザビーは薄暗い霧の中に隠れて姿を消す。
姿を消し気配もなく音すら聞こえない。そして気付いた時には暗殺されるサイレントキラーの異名を持つザビーは、かつて8年前の戦争でも手を焼かされた相手。

「終わりだ。ショウ。」

「そう喰らうかよ。」

後ろから伝わるザビーの殺気を感じた瞬間に俺はベルトのバックルを1回タッチする。

【Speed Light attacker】

俺の得意な高速移動をしながら俺はザビーの背後に回り込みザビーの背中に短剣を突き刺すが手応えが感じられない。

確かにザビーを急所に突き刺したはずなのに……

「影分身……」

「マジかよ……」

ザビーは俺の死角となっている頭の上から音も無く奇襲を仕掛けてくるが、間一髪のところで躱す。

「危ねぇ……」

「オレが忍術使いだって言うのを忘れていたか?」

「そう言えば、そうだったな。」

「この術も忘れた訳じゃないだろ?」

「マジかよ……」

ザビーはそう言った瞬間に先ほど霧の中に隠れて姿を消すと言う別の方法で姿を消した瞬間に俺の目の前に現れスティンガーを突き刺す。

「チッ!瞬歩の術か。」

「ご名答。オレのサイレントキルと瞬歩の術が合わさった暗殺術だよ。」

俺は何とか心臓部分から左手でザビーのスティンガーを防いだが、スティンガーで刺された左手には蜂の紋様が浮かび上がる。

ザビーのスティンガーは同じ場所に2回刺されると死に至る。その紋様は処刑までのカウントダウンだ。

それに厄介なのは1回目に刺されると時間と共に感覚が麻痺していく事。その内、動けなくなる。

奴のスティンガーは言わば毒だ。それをするには調合された解毒剤を打つかザビー自身を倒すかのどちらかだ。

正直な話。奴を倒すのが手っ取り早い。

なら……短期決戦だ。

そうと決まるとすかさず俺はベルトのバックルを1回タッチする。

【Speed Light attacker】

俺の得意な高速移動をしようとするが、しかし敵のザビーもバカではなかった。

「多重影分身の術。」

するとザビーの影分身がざっと見て何十人と現れザビー本体は影分身に隠れ蓑となる形になる。

面倒だ。スペックで押し切るしかない。

俺は高速移動しながら目の前に居るザビーを片っ端から短剣で急所にかつ一撃で胸部、頭部、腹部と的確に突き刺すが、どれもザビーの影分身で本体が見つからない。

だけど、手を緩めると一瞬で俺がお陀仏になるので手を緩める事は許されない。1体、また1体と確実に仕留めて行くと残りは数体。

「あと4体……3体……あと2体……」

残り1体。どうやら最後の様子だから奴が本体のザビーだ。

「ラストォォオ!!」

俺はそう叫びながらザビーの本体の頭部を脳天から股まで突き破る勢いで切り裂く。

「コイツも影分身……」

「ここだ。瞬歩の術。」

「ちっ!」

どうやらザビー本体は木の物陰に隠れていて奴の影分身が倒しきるのを狙っていた様子。その隙を狙って奴は俺を止めを刺そうとしていたようだ。


「ふん。心臓だったらイチコロだったんだがな。」

「ほざけ。」

俺は何とか短剣を左手で持ち替えてザビーのスティンガーを防いだが、左手にスティンガーが掠ってしまい、今度は左手に蜂の紋様が浮かび上がる。

「次はどこに刺そうか?ショウ。」

「本当に面倒だなザビー。」


一方、リミカはと言うとショウに言われるがまま、全力で駆け足で逃げている最中だった。ただ言われたがままに。

しかし、リミカの中に何かが引っかかり、足を止めてしまう。

「ショウさん……アスカさん……大丈夫なのでしょうか?」

ポツリと微かな声をあげると、やはりその2人の名前が頭に浮かぶ。

「あの2人はカイジン軍の幹部なのです……いくらショウさんとアスカさんの2人が強いって言っても、幹部相手では無事では済まないのです……」

リミカは逃げろと言われてそのまま逃げた事に悔しさに似た後悔が思い寄せてくるのか涙を流してしまう。

「行かなくちゃ、あの2人のもとに行かなくちゃダメなのです……」

リミカは踵を返して2人のもとへ戻ろうとした時、1人の男がカゴを片手に薬草を摘んでいるのが分かる。

「おやおや、こんな所で可愛らしいお嬢さんが1人で何をしているのです?」

「すいませんなのです……先を急いでいるのです。」

丁寧で優しげな口調の男に話し掛けられるリミカだが、今はそれどころではないと言う雰囲気を感じさせて、その場を退散しようと走り出した所で男は話を続ける。

「もしかして、ショウ君とアスカ君って言う人はお嬢さんのお知り合いですか?」

「なんでそれをですか?」

「いえ、さっき聴こえてしまいまして、気にされたらごめんなさい。もし宜しければ、僕に何か出来そうですか?」

「貴方は誰なのですか?」

「僕の名前はコウタ。ただのお医者さんですよ。」

そうコウタはリミカに優しく微笑むと白衣の懐からエボル・ギアを取り出しリミカに見せる。

「これは、ショウさんとアスカさんと同じ……」

「やっぱりそうでしたか。ショウ君とアスカ君が少し危ない目に遭っていると思いますので僕も手助けしたいと思いますので、ご案内出来そうですか?」

「はいなのです!こっちなのです!」

リミカは先程の帰路を戻る形でコウタと一緒にカイジン達と戦っている場所へと戻る。

そして、アスカとグザンが戦っている中、アスカは毒俊竜を操るグザンに苦戦している模様。

「全く。いくら銃弾を撃ち込んでもキリがないっす!」

「ほらほら~全然当たらないじゃーん。毒の爪に引き裂かれて痛みと毒で悶えちゃえ。」

「そうは行かないっす!」

グザンは指を動かしてマリオネットの如く巧みに滑らかに毒俊竜の爪で切り裂こうとするが、アスカはヒラリと紙一重で避ける。

「またちょこまかと鬱陶しいね~イライラする。」

「全く、こんなものを作って何が目的っすか?」

「えぇ?教えても良いけど、お前が嫌いだから教えない。」

「じゃあ、無理矢理でも聴きだすまでっす!」

アスカはグザンの足元に2発の銃弾を発砲するが、その2発の銃弾もグザンの操る毒俊竜によって無駄撃ちとなってしまう。

「なんならコレで!」

「無駄撃ちしてると弾がなくなっちゃうよ~って!なんで?!」

「引っかかったっすね!銃弾の軌道を変則的に変えて軌道を読めなくしたっすよ!」

アスカは銃弾を真っ直ぐに発砲せずに変則的にすることで、グザンの操る毒俊竜を盾にされる事なく銃弾を命中させる戦法を取る事で戦況を打開する方法を取る。

「どんどん行くっすよ!」

「チッ!ぐっ!小賢しいね~……痛っ!!」

アスカとグザンの戦況が変わり始めた頃。アスカから少し離れた所で俺はザビーの忍術に苦しめられていた。

「ハァハァ……」

「だいぶ息が上がってるじゃないか?」

「チッ……」

さっきからザビーの影分身の術に瞬歩の術。更に奴自身の戦闘スタイルのサイレントキルも合わさって尚更、面倒くせぇ。見分けようにも見分けもつかない影分身。

目で見きれない程早い瞬歩に物音一つも立てないで相手の懐に入るサイレントキル。どれも厄介過ぎて長期戦になりそうだな。だけど両手が痺れてきて感覚が少しずつ無くなってやがる。

目でもダメ、耳でもダメ、森林区域だから磁場が強いから気配も察すれない。万事休すだな。

「そろそろ終わりだな。あばよ、神速のハンター。多重影分身の術。」

ザビーは素早く印を結ぶと再び無数のザビーが現れて完全に俺を殺すつもりでスティンガーを構える。

「瞬歩の術。」

そして一瞬にして無数のザビーが俺の目の前から姿を消す。

視覚、聴覚、第六感。それが頼りにならないならイチかバチかの賭けだな。

俺はベルトのバックルを静かに1回タッチする。

【Speed Light attacker】

俺の得意な高速移動。しかし目的はザビーの攻撃を避けてからカウンター攻撃を仕掛ける為ではなく、高速移動だからこそ出来る戦法。

それは至ってシンプルな方法で効果的な俺の奥の手だ。その方法は高速移動しながら足を使うんだよ。

え?高速移動での蹴りをザビーに浴びせるのか?って思うかもしれないが違う。


逃げるんだよォォオオオッ!!!


「なに?!コイツ、高速移動しながら逃げやがったな。だけど、そういつまで逃げれるかな?」

影分身のザビー達は俺の急な高速移動に身体が対応出来ず、真っ直ぐに俺に突っ込んだ形になってしまい、影分身同士で自滅してしまった。

そしてオリジナルのザビーだけが残り俺を追い掛けようとするが、俺の高速移動はまだ終わってない。

「オラッ!!」

「ぐぅ!ガハッ……」

俺はザビーの真正面から逆手に持った短剣を腹部に突き刺してから蹴り飛ばすように突き刺さった短剣を抜く。

「ここで終わらせないぜ?」

「なに?!ぐっ……ゴホッ!グァァ!!」

俺は高速移動を続けながらザビーの顔面に掌底をアゴから突き上げてから、右膝にローキックからの短剣で突き刺した腹部に後ろ回し蹴りを思いっきりネジ込む。

するとザビーは後ろに吹き飛ばされる形倒れ込むと同時に霧に紛れて姿を消す。

「チクショウ。また逃したか。」

「今日の所は俺は引き上げる。」

「なに?!どういう事だ?!」

「オレ達にも色々と事情があるんだよ?」

「オレ達?」

「おっとっと。何でもないさ。取り敢えず今日はここまでにして、またやり合おうぜ。ショウ、楽しみにしてるからな。」

「……」

「あぁ、あとスティンガーの毒は早めに解毒剤を打つ事をオススメするぜ?チャオ。」

するとザビーの声は聞こえなくなり、どうやら本当に、この場から立ち去った様子。手の痺れが強くなってきて血流を通して少しずつ周りも痺れてきている。

だけど、そんな事はしてられない。アスカの所にも行かなくちゃだな。


俺は足元が少しフラつきながらもアスカの元へ足を運ぶと、少し離れた場所でアスカがグザンと交戦しているのが分かるのでアスカを助太刀する。

俺は林の茂みに隠れてグザンに気が付かれない様にベルトのバックルを静かに1回タッチする。

【Speed Light attacker】

俺の得意な高速移動と同時に毒俊竜に向かって短剣で切り刻む様に前足、首元、胴体、後ろ足、尻尾と切り刻む。

「しょ、ショウさん?!ザビーの方は?!」

「あっちの方は都合が悪くなったみたいだから退散だ。残るは、このデカブツとグザンだけだ。」

「あれれ~ザビー先輩ったらオレちゃんを置いて行っちゃったんすか~?」

グザンは口調は軽口に近いが俺とアスカで相手になると思うと気が重い様子だけど、こっちは御構いなし。すぐに片付ける。

「アスカ、このデカブツはどんな感じだ?」

「まぁ、素早い攻撃と毒の皮膚って感じっすね。普通の武器で皮膚に触れただけで傷みますし、血液も身体に浴びると毒出すね。」

「そこは毒竜の性質そのまんまだな。血液が太陽の光で蒸発すると毒ガスにもなるから返り血を浴びてないとは言え、気を付けろよ。」

「全く、コイツの動く場所、動く場所は植物を腐敗させてますよ。」

「更に言えば俊竜のスピードもあるわけだ。結構面倒な組み合わせだな。」

俺は短剣を右手で逆手に構え、アスカは拳銃を撃つ構えを取ると、グザンは両手の指をキリキリと巧みに動かし毒俊竜を操る。

アスカは拳銃の弾丸を3発グザンに打ち込もうとワザと弾丸の軌道を変えるが、グザンに読まれてしまっているので毒俊竜を盾に弾丸を防ぐ。

「こういう攻撃、見切り始めちゃったよ~残念。」

「おいおい、俺が居るのを忘れちゃ困るぜ?」

「あらら……」

「チッ!浅いか。」

俺は後ろからグザンに短剣を一閃しようとしたが、グザンに見切られてしまい避けられたため剣先が軽く掠っただけで終わってしまう。

その瞬間にグザンは指先でクイッと動かすと毒俊竜の前足の爪が俺を襲い避けようとするが、ザビーのスティンガーの毒によって一瞬だけ身体の反応が遅れて爪先を軽く掠ってしまう。

「ショウさん!!」

「まだ掠っただけで大丈夫だ。」

「あれれ~?ザビー先輩の蜂の紋様じゃないですか~」

やっぱり誤魔化そうと思っても誤魔化しきれないか。さて、どうする?

「ショウさん。ここはイッキに片をつけましょう。じゃないとショウさんの身体が危ないっす!」

確かに俺の身体はザビーのスティンガーと毒俊竜の毒が廻っている。早めに片を付けて解毒剤を打つのが1番良い。だけど片を付けられなかったら……

考えてる暇はない。片をつけるしかない。

取り敢えず、毒俊竜をバラバラになるくらいまで倒すしかない。その為には俺とアスカの同時攻撃が必要になる。

俺はアスカとアイコンタクトを取り俺とアスカは同時にベルトのバックルを2回押す。

【Launcher Strike the end】

アスカは片手サイズの拳銃からサイズから銃口、グリップ、スコープ、ストック、マガジンと次々とパーツが掛け合わさり拳銃からマシンガンサイズになり銃口からミサイル型のエネルギー弾を毒俊竜に放つ。

アスカの放ったミサイル型のエネルギー弾は毒俊竜に直撃した瞬間に俺は高く飛び、毒俊竜の頭頂部まで跳び上がる。

【Violet Kick the end】

ベルトから機械音が鳴った瞬間に俺の右足にエネルギーを纏い、落下しながら加速する重量を加えて俺は毒俊竜の頭をカチ割るように回し蹴りを食らわす。

どれも手応えありだ!

俺とアスカの同時攻撃はどちらも毒俊竜を直撃して力なく倒れ込み、後は術者本人のグザンをブッ飛ばせば何とかなる。

そう思った矢先にグザンは肩を震わせてる。

「フフフフ……フハハハハハハハ!!!」

「何を笑ってやがる?」

「あ~ゴメンゴメン。だってさ、つい可笑しくてね?」

「何が可笑しいんすか?」

「だってコレ。」

グザンは指先でクイッと動かした瞬間に倒れ込んでいた毒俊竜がムクリと立ち上がり、威嚇にも思える咆哮を叫び出す。

「マジかよ……」

「ゾンビっすか?」

「アハハハハ。だって、元々、死んでるからね。コイツ。」

「「ッ?!」」

「オレちゃんのはあくまでも傀儡。つまり死体をも操れるマリオネットさ。死体を血抜きしてからオレちゃんの作る防腐処理した血漿を循環器に流し込めば人形の出来上がり。傀儡の糸が切れない限り動き続ける兵器だよね。」

「コイツ……」

「やっぱ外道っすね。」

「外道じゃないよ?傀儡師だよ?」

俺の中で何がブチキレた。殺意に似た憎悪。生き物の命を弄ぶその姿にキレない奴はいないだろう。俺は短剣を構えた瞬間に上から見た事ある姿が目に浮かぶ。

美しく翼を羽ばたかせアレの正体ははリミカの精霊の白鳥であるミシェルだ。って事はリミカなのか?

リミカは愛刀のムラサメを静かに抜き下へ降りてくる。

「マギア・スペル・ラリステル・マギ……極大魔法。激流の大剣(げきりゅうのたいけん)。」

その呪文と共にリミカの愛刀は水色の魔力を帯びて、その魔力はリミカの体格とそぐわぬ大きさで見るからに破壊力のある刀身へと変貌。

その刀身を毒俊竜の頭を重力の法則に従い加速しながら、カチ割るように叩き付けると毒俊竜は再び地面に頭を伏せる様に倒れこみリミカは剣先をグザンに向ける。

「リミカ姫~。コレはどういう意味でしょうか?」

「こういう……ことなのです。」

「こういう事ねぇ~……つまりカイジンとしてではなく、この世界の住人として生きる事ですか?」

「はいなのです。私はこの世界の住人として生き、社会に貢献し、貴方達の様な者から住人達を守り、そしてお父様には1人の娘として遺品と共に静かに眠っていて欲しいのです。」

「なるほどぉ。つまりリミカ姫はカイジンを裏切るわけですか……つまり裏切り者には死んでもらいましょう。」

「リミカッ!」

「リミカちゃんっ!!」

するとグザンは指先でクイッと動かし、倒れ込んでいた毒俊竜を再び起き上がらせ、毒俊竜の猛毒の爪がリミカを襲おうとしてる。

クソ!間に合えッ!

俺はベルトのバックルを1回タッチしようとしたところ、リミカの従える白鳥の精霊であるミシェルから別の影が上空から飛び込んでくる。

【Gamma knife the end】

その物陰の右手から巨大な紫色の雷のメスが現れてバチバチと地鳴りの様に鳴り響き毒俊竜の背中部分に突き刺す。

「あれれ~……もう1人仲間かなぁ?」

その姿は静かな怒りが込められた仮面、特徴のある頭に生やした2本の角、その見た事ある姿に俺とアスカは驚きを隠せない。

「コウタ?!」

「コウタさんっ?!」

「おやおや、久し振りに見る顔ですね。ショウ君、アスカ君。」

コウタは8年前と変わらない優しい声で俺達に話し掛けてくれる。

「やっぱりセブン・ギアーズのコウタだったかぁ。俺ちゃんの操り兵器を倒したと思ってるけど無駄な足掻きだったねぇ。」

「それはこっちのセリフですよ?」

「なに?」

グザンはコウタの台詞が虚仮威しだと思い、指先で毒俊竜を動かそうとしても、毒俊竜はピクリとも動かず倒れ込んだまんまだ。

「どうして?」

「僕のオペ(必殺技)は体内から破壊するオペ。筋肉、血管、神経に骨。更に内臓まで破壊してますから再起不能です。」

「あーあ。やっぱり駄目かぁ。」

グザンはやれやれってな感じの様子でアッサリと諦めに似た口調で踵を返して、そのまま続けて言う。

「まぁ、今回はカイジン軍の復活の狼煙って事で今日はこの辺にしておくよ。」

「逃がさないのです。」

リミカはムラサメを構えてグザンに斬りかかろうとするがグザンは構わず続ける。

「まぁまぁ、そう言わず。行方不明のハンターの女の子達は返すからさ。」

「どういう事だ?」

「そういう事だよ。ショウ。んじゃ、ばいちゃ。」

そう言った後にグザンも霧の中に消えたと同時に森林区域の霧も晴れて視界が開けると、茂みに横たわっている行方不明になっている女性ハンターの姿が見える。

「取り敢えず亡くなってはいない様子ですね。」

コウタがザックリと意識の確認をして女性ハンター達の意識を確認した後に俺とアスカ、コウタの順番で変身を解く。

【【【Evolve gear sleep】】】


「早くクエ管に連絡して早く手当してもらわないと……」

「ショウさん!」

俺は気が抜けたと同時にザビーのスティンガーと毒俊竜の毒が身体中に周り始めた事により身体が言う事をきかず倒れこむ。

「ショウさん。クエ管からは自分がやりますから休んでてください。」

アスカは俺の懐から無線を取り出すが森林区域は磁場があるため無線が届かない。

「取り敢えず、ショウ君に毒抜きからですね。」

コウタは救急バックを広げて手当道具を片手に持っていた薬草を調合する。

「ショウさん……」

リミカは横たわる俺の手を取りながら、今にも泣きそうな目で俺を見つめる。

「大丈夫ですよ。ショウ君は解毒すればすぐに良くなりますから、少し待っててくださいね。」

「本当なのですか?」

「はい。僕はお医者さんですから死なない限りは治せますよ。」

「ありがとうなのです。えぇーと……」

「僕はコウタって言います。宜しくお願いします。」

「リミカなのです。宜しくお願いしますなのです。」

コウタとリミカはお互いに自己紹介が終わった後、コウタは複数の種類の薬草を細かく刻んで、すり潰しペースト状にした薬草を手のひらサイズの小鍋に入れて、持っていた火の魔法鉱石に衝撃を加えて暫く煮詰める。

「ところでアスカ君は何でショウ君と一緒に?」

「えぇ~っとそれは……」

「それは私が説明するのです。」

コウタの質問に言葉を詰まらせるアスカにリミカは自ら自分の素性、目的、戦争が終わってからの生い立ち、更に今回のクエストについてコウタに説明する。

「なるほど、そう言う事なんですね。今回、カイジン軍の残党。って言うより幹部はあの戦争の後にも生き残ってたって訳ですね。」

「はいなのです。」

「うーん……カイジン軍が生き残っている以上、この世界の住人は平穏な生活が脅かされる可能性は大いにあるって事ですね。」

「そうなんっすよ!コレって言ってしまえば自分らが片付けなくちゃいけない問題って思ってるんですけど……」

「きっとショウ君もそんな風に思っているはずですよ。誰よりも責任感がありますし、目の前で困っている人達が居れば構わずほっとけない。ましてや脅威が迫っているなら尚更。」

コウタはコトコトと弱火で薬草を煮詰めながら匙でかき回しながら昔の記憶を辿りながら語る。

「だからコウタさんにお願いがあるっす!リミカちゃんの願いを自分とショウさんと一緒に手伝って欲しいのです。」

「それは勿論ですよ。リミカさんが居るって事はカイジン軍の存在が付きまといますし、今日みたいな戦闘になれば僕が居ないと絶対に無茶しますよショウ君だと尚更ね。」

「コウタさん。」

「リミカさんも僕で良ければ一緒にカイジン王の遺品の眠るダンジョンを攻略しても良いです?」

「勿論なのです!とても助かるのです!」

リミカはコウタの両手を握りながら目を輝かせじっと顔を近付ける。

「おや、そろそろ出来上がった頃ですので解毒剤を飲ませてあげなくちゃですね。」

コウタは薬草を煮詰めた解毒剤を鍋から器に移してスプーンですくい、俺に解毒剤を飲ませる。

「ショウ君。ゆっくりで大丈夫ですからね。」

「あぁ……苦ぇ……」

「良薬は口に苦しですよ?」

「ハハハ……」

正直言って苦いじゃ済まされないクソ不味い解毒剤を飲み終わり俺はゆっくりしながら横になり少し眠らせてもらう。

これから起こる旅に再び俺達に試練が訪れるとは知らずに眠りにつく俺である。

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 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

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