穴の中より

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　この紙飛行機を拾ってくださいましたあなたへ。まずお尋ねしたいのですが……いえ、いえいえ、すいません。まずはこのようなものをお見せしたこと、心よりお詫び申し上げます。僕が、あなたのご覧になった光景を、正確に把握することはどう足掻いても不可能ですが、大変見苦しいものを見せていることは想像に難くありません。ですから、どうもすみません。本当に申し訳ありません。あなたと直接、対面で言葉を交わすことはきっと不可能だと思いますが、あなたはきっと僕ごときを見つけてくださった方でしょうから、心からお礼を言いたいのです。同時に、心からお詫びを申し上げたいのです。こんな僕を見つけてくださっただろう優しい、大恩ある方に、こんな姿をお見せして、しかもきっと後始末も頼むことになるでしょうから、今はそのことを心より、大変申し訳なく思っております。せめて少しはマシな姿で見つかってくれると良いのですが……けれど、見つかってくれればいいと思う。こんな所にひとりきりは、あんまり寂しすぎるから。お願いです。あなた。あなたがどなたか存じませんが、どうか僕を見つけてください。どうか紙飛行機を見つけてください。僕を見つけてくださる方に、こんなものをお見せするのは本当に心苦しいですが、それでも、申し訳ないと思うと同時に、僕は、僕は、やはりあなたに僕を見つけて欲しいと思う。
　本当はもっと、まとまった綺麗な文章を書けたらいいのにと思うのですが、ここから何度も朝日を見て、月夜を見て、ずっと一人で過ごしたうちに、僕は正常な判断力を失いつつあるようです。と言って、僕にそもそも正常な判断力といったものがあったかどうかは怪しいですが。僕は大層支離滅裂なものを書いていることでしょう。本当にすみません。すみませんが、それでも、あなたにどうか僕の中身を読んで欲しい。この紙飛行機を読んで欲しい。ですから、読みにくいことは重々承知の上なのですが、僕の言葉を、支離滅裂な頭の中身を、ただ書き殴っていることを幾重にもどうかお許しください。そしてどうか、こんなものを読ませている恥知らずな僕をお許しください。僕はもう、ただ息をしているだけで気が狂いそうで狂いそうで、実際、何を書き殴っているのか少しわかりかねている状況なのです。おかしいですね。自分の書いているものなのに。でも、そんなものでも、書いていないと、吐き出さないと、もっと気が狂いそうになる。頭の中に細かな虫が湧いているような気がしてしまう。
　だから、どうか、この手紙を、そして僕を、見つけてくれるような優しい、素晴らしい方があったなら、どうかどうか我慢して、この紙飛行機全てに目を通してはいただけないでしょうか。お願いです。どうかどうかお願いです。頼みますからどうか、この哀れな人間にひとつ希望を持たせてください。この紙飛行機を読む人が、僕を知ってくれる方が、きっと何処かにいるのだと、どうか希望を持たせてください。お願いです。僕を見つけてくれる人。このままでいると僕は、本当にここで気が狂ってしまいそう。