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おいていかれた わたしは ひっしに ぞんびから にげました。おとうさんと おかあさんの すがたは どこにも ありません。「ぎゃあああああああああああ」ぞんびが こえを あげました。「おとうさん」「おかあさん」わたしはふたり を さがしましたが ふたりは どこにも いませんでした。わたしはもう はしれなくて なきながら そのばに しゃがみました。わたしのこえに あつまった ぞんびが いっせいに くちを あけました。「ぎゃあああああああああああああああ」もう だめだ。わたしは めを つむりました。わたし しぬんだな。わたしは そう おもいました。
でも わたしは しにませんでした。めを あけると ぞんびが わたしに せなかをむけて はなれていくのが みえました。まわりにいた ほかのぞんびも わたしから はなれて いきました。あんなに わたしをおいかけた ぞんびは もう わたしを おそいませんでした。まだ ぞんびになってない ひとを もとめて どこかに いって しまいました。
わたしは おきあがって まわりをあるきました。まわりは ひどい ありさまでした。ぞんびが にんげんを おそっていました。あちこちで ひめいが あがって いました。でも うるさいのは ぞんびにおそわれている にんげんと にんげんをおそっている ぞんびだけで にんげんをおそわない ぞんびは みんな しずかに していました。わたしは ぞんびに ちかづきました。ぞんびは わたしの くらすのこに よく にていると おもいました。そのこだったら いやだなあと おもいながら わたしは そのこに はなしかけました。
「ねえ」
「あー」
「わたしのこと わかる?」
「あー」
「くさいとか いわないの?」
「あー」
「きえろとか しねとか いわないの?」
「あー」
ぞんびに なった そのこは そのまま どこかに いきました。そのあとも わたしは いろんな ぞんびに あいました。みおぼえのある ぞんびが いました。みおぼえのない ぞんびも いました。でも だれも わたしをみてもおそってこず 「あー」といって そして はなれて いきました。もしかしたら。わたしは おもいました。もしかしたら おとうさんと おかあさんも こうなって くれるんじゃ ないのかな。わたしは おそわれている にんげん には みむきもしないで おとうさんと おかあさんを さがし ました。どこに いったか わからないけど いっしょうけんめい さがしました。
こどもを おいて にげるひと。ほかの ひとを つきとばす ひと。じぶんから ぞんびに かまれにいく ひと。「神よ、お助け下さい」とすわりこんで たくさんの ぞんびに かまれるひと。にんげんたちは ばけものみたいな かおをして ぞんびから ひっしに にげまわって なんだかあんまり ぞんびと かわらないなあと そんなことを おもいました。むかしだったら そんなふうには おもわなかったかも しれないけれど いまはにんげんと ぞんびのなにがちがうのか わたしにはよく わかりません。わたしは おとうさんと おかあさんを さがしました。おとうさんと おかあさんは なかなか みつからなかったけれど きゅうに なつかしい においが して わたしは あし を とめました。そこは しらないひとの いえでした。でも そこから おとうさんと おかあさんの においが しました。わたしは おじゃましますといいながら しらないいえに はいりました。おとうさんと おかあさんの においが はっきり したので わたしはどきどきしながら そっちのほうに いきました。しらないいえの だいどころに おとうさんと おかあさんが だきあいながら すわっていました。「おとうさん」「おかあさん」わたしがこえをかけると ふたりは わたしの ほうをみて それから「ぎゃあああああああああ」とひめいをあげて おとうさんが ちかくにあった はいざらを みぎてで たかく もちあげました。
でも わたしは しにませんでした。めを あけると ぞんびが わたしに せなかをむけて はなれていくのが みえました。まわりにいた ほかのぞんびも わたしから はなれて いきました。あんなに わたしをおいかけた ぞんびは もう わたしを おそいませんでした。まだ ぞんびになってない ひとを もとめて どこかに いって しまいました。
わたしは おきあがって まわりをあるきました。まわりは ひどい ありさまでした。ぞんびが にんげんを おそっていました。あちこちで ひめいが あがって いました。でも うるさいのは ぞんびにおそわれている にんげんと にんげんをおそっている ぞんびだけで にんげんをおそわない ぞんびは みんな しずかに していました。わたしは ぞんびに ちかづきました。ぞんびは わたしの くらすのこに よく にていると おもいました。そのこだったら いやだなあと おもいながら わたしは そのこに はなしかけました。
「ねえ」
「あー」
「わたしのこと わかる?」
「あー」
「くさいとか いわないの?」
「あー」
「きえろとか しねとか いわないの?」
「あー」
ぞんびに なった そのこは そのまま どこかに いきました。そのあとも わたしは いろんな ぞんびに あいました。みおぼえのある ぞんびが いました。みおぼえのない ぞんびも いました。でも だれも わたしをみてもおそってこず 「あー」といって そして はなれて いきました。もしかしたら。わたしは おもいました。もしかしたら おとうさんと おかあさんも こうなって くれるんじゃ ないのかな。わたしは おそわれている にんげん には みむきもしないで おとうさんと おかあさんを さがし ました。どこに いったか わからないけど いっしょうけんめい さがしました。
こどもを おいて にげるひと。ほかの ひとを つきとばす ひと。じぶんから ぞんびに かまれにいく ひと。「神よ、お助け下さい」とすわりこんで たくさんの ぞんびに かまれるひと。にんげんたちは ばけものみたいな かおをして ぞんびから ひっしに にげまわって なんだかあんまり ぞんびと かわらないなあと そんなことを おもいました。むかしだったら そんなふうには おもわなかったかも しれないけれど いまはにんげんと ぞんびのなにがちがうのか わたしにはよく わかりません。わたしは おとうさんと おかあさんを さがしました。おとうさんと おかあさんは なかなか みつからなかったけれど きゅうに なつかしい においが して わたしは あし を とめました。そこは しらないひとの いえでした。でも そこから おとうさんと おかあさんの においが しました。わたしは おじゃましますといいながら しらないいえに はいりました。おとうさんと おかあさんの においが はっきり したので わたしはどきどきしながら そっちのほうに いきました。しらないいえの だいどころに おとうさんと おかあさんが だきあいながら すわっていました。「おとうさん」「おかあさん」わたしがこえをかけると ふたりは わたしの ほうをみて それから「ぎゃあああああああああ」とひめいをあげて おとうさんが ちかくにあった はいざらを みぎてで たかく もちあげました。
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