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そして次の街へ……

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「そうか、そんなクエストが」
「ゲームと言っても流石に人が死んでしまうのは辛いわね」
「僕もやだなー。そんなの悲しくて耐えらんないよー」
「そうね。じゃあ「カンパニー」はイベントに参加しないの?」

 今は学校の昼休み。

 僕はタクと(オリバー)、加奈ライリー、ユリ(リタ)、ナギ(フランジェシカ)の四人でお昼を食べながら話をしていた。

 周りにはもうすぐ夏休みとあってすでに浮かれている生徒は多くみられた。夏にどこに行くか、彼氏彼女ができるか、家族旅行に行くか、など色々な話しがそこいらから聞こえてくる。

「イベントには参加しないことにした。正直イベントと言う気分にもなれないし。それに今日から少しアニの街についてすらべてみようと思って」
「そうか。まぁ「カンパニー」が出ないのはこっちにとってはありがたいことだけどな。勝率が格段に上がるからな!!」
「こらタク!でも確かにそんな後じゃイベントどころじゃないわよね」
「んー、僕だったら気分転換に「おりゃー」ってイベントに参加しちゃうけどなぁ」
「加奈はそうかもね。でも普通の人なら気分が落ち込んじゃうわよ。こんな時こそBLの本を読んで元気を出してほしいんだけど」
「それで元気が出るのはナギだけよ」

 結局僕らは個人戦イベントには出ないことにした。

 ユイだけでも、と思ったがユイは僕を心配してくれてなのか、アニの街が何区経ってしまったことに対しのショックかわからないが辞退することにした。

「しっかしなぁ。俺たちもアニの街に行ったがイベントなんて何にも起きなかったがなぁ」
「馬鹿タク。話聞いてた?「指輪」をを持つ者だけができるイベントだって言ってたじゃない」
「いいなぁ指輪。あ、でもこんなイベントがあるならいらないかも。むむむ!!悩む!!」
「今悩んだって仕方ないじゃない。指輪はどこかのシークレットゾーンを探すしか見つからないんだから」
「そうみたいだね。ノアも「指輪が持つものなら」って何度も言ってたし。ノアは初めからこうなることを予想してた気がするんだ」
「このイベントが起こる予想をか?」
「うん。スタンピートかどうかまでは分からなかっただろうけど」
「そんな。スタンピートって意図的に起こせるものではないでしょ?」
「そうだよ。「召喚士」だって「魔物使い」だってそんな芸当はできないと思うよ?」
「いえ。可能性はなくはないわ」
「「「「え?」」」」


 ナギが何かを思い出そうとして眼鏡を何度もクイクイっと持ち上げながら話してくれた。

「作り方はAOL内のメモを見なくちゃ思い出せないけど、「魔引き草」って言うのがあるの。それは言葉通り魔物をひきつける効果があるの。基本的にはLV上げしたい人が早く何度も魔物と遭遇するために使う物なんだけど」
「でもそれを使ってならスタンピートは起こせる?」
「理論上は不可能じゃないはずよ?でも、不可能だわ。」
「どういう事だよ。魔物を呼び寄せられるならできるんじゃないか?」
「数の問題よ。それに話を聞く限りその魔物たちは弥生の攻撃一撃で倒せない相手だったんしょ?そんな魔物あのあたりにはいないはずだわ」
「んーー??降参!!ナギ僕にはわからないよ!!結論早く言って!!」
「つまりね。まず一つが「魔引き草」の数が圧倒的に足りない、と言うか集められないと思うの。「魔引き草」っていうのは結構複雑な作り方だしその材料を集めるのも大変なの。つまりスタンピートを起こすだけのそれを集めるなんて不可能、いえ、数年単位で作り続けて準備しなくてはならないわ。そして弥生が倒せないほどの魔物。魔物が来た方向。それを考えると魔物は「魔の森」から来たとしか考えられないわ。」

 僕らは驚き言葉を失ってしまった。

 僕らの知る限り魔の森から王国にモンスターが入ってきた例は1万年間なかったはずだ。それが今起こった。

「つまり誰かがモンスターをおびき寄せたとしか」
「でも「魔匹草」が足らないんじゃない?」
「でも方法がそれしかないのなら本当に数年単位で計画してたんじゃない?」
「ノアが街に帰る日を計算して?どれだけ壮大な計画なんだよ」

 確かに壮大だ、壮大すぎる。

 いったいどれほどの恨みがあればそんなことが出来るんだ?

「それに疑問はまだ残るわ。もし魔物があの「魔の森」を越えてきたとしたら、いったいどうやって?あそこには山脈があって魔物が列をなして超えてくるなんて不可能だわ」

 確かにナギの言う通りだ。

 あの山は全て3000m級の山から成り立っている。

 それをわざわざ魔力の濃い魔の森側から魔物が来るか?

 ありあえない話だ。

「おい!!これ見ろ!!」

 突然形態をいじってたタクが携帯をこちらに投げてきた。

 そこには「「アニ」の街、「ミル」の街「ムル」の街3つが謎の消滅」というタイトルの掲示板が立っていた。

「消されたのは「アニ」の街だけじゃないんだ」
「確かに弥生の話だと大量の魔物がいたのよね。それが「アニ」だけを狙って引き返すなんてありえないものね」
「もしこれがノアだけを狙ってこうなったなんてことだったら」
「一体どれだけの人を巻き込んだのかしら」
「確「ミル」と「ムル」ってそこそこ大きな街だよね?」

 考えただけでもぞっとする。

 もし本当にノアを狙った犯行だとしたら一人を殺すためにどれだけの被害を出したのだろう。

「こんな時こそ魔法の本を弥生に贈呈するわ!!」

 突然ナギが立ち上がりカバンから一冊の本を取り出した。

「何それ?タイトルは「気になるクラスメイト~あいつに奪われるならいっそ~?おいこれBL本じゃねえか。よくこのタイミングで出せたな」
「今だからこそよ!!BLは世界を救うの!!きっと弥の心もすくってくれるはずだわ!!」
「救われないだろそれじゃ」
「ホントよ。大体いったいどんな内容なのよ」
「僕も気になるー!!」
「腐腐腐。よくぞ聞いてくれました。なんとそれはクラスの可愛らしい男の子がやんちゃでかっこいい男の子に恋をして彼女から奪い取る恋愛ハートフル本よ!」
「全然ハートフルじゃねぇ」

 ナギは眼鏡をかけなおし、僕を指さしながら語りだす。

「これはね!!まさに弥生とタクにそっくりな二人が主人公なの!!仮にタクとナギが付き合ってたとして「ちょっと待って!!何で私がこんな男と」黙らっしゃい。例えの話よ。例え。まぁ本当付き合っちゃえよとわ思うけど」

 止めてあげて。

 ナギの顔が真っ赤で恥ずかしすぎて倒れるんじゃないかこれ。

「兎に角!!この本はそのカップルから弥生がタクを奪う話なの!二人はいつしか惹かれあうの・・・ああ!!でも駄目!二人は同姓!!そんなこと許されないわ・・・!!二人の間にはいくつもの障害が訪れるの」
「障害って何ー??」
「腐腐。加奈いい質問ね。いい?二人は実は腹違いの兄弟だったの」
「話がめちゃくちゃだなおい」
「黙らっしゃい。そして二人の両親の母親は病気で亡くなってしまうの。そこでお互いの父親同士が出会い、実は二人が腹違いだと知りショックを受け、そして慰めあい恋に落ちるの」
「僕たちはどこに行った。なんで父親同士が恋してんだ」
「いつしか惹かれあう父親同士。でも駄目!!自分達には腹違いと言え息子がいるの!!世間の目もある!!でもその息子たちも実は惹かれあっている。なんてハートフル!!」
「お前は一度ハートフルと言う言葉を調べてこい」

 ナギは両手を胸の前で組みまるで劇の主役のようにオーバーリアクションで語り続ける。

「タクには彼女がいる。でも彼女は気づいていたの。本当はタクは自分じゃなくいて弥生の方に向いていることを。そして見てしまうの。そう。それは体育祭の時。二人が二人三脚をしている時、手を繋ぎながら微笑みあっているのを。そして確信する。この二人は両思いだと。そして自らタクに別れを切り出すの。なんてハートフル!」
「もうお前ハートフルって言えば丸く収まると思ってんだろ?」
「そして悩み苦しむ二人は父親に相談することを決めるの。男を好きになってしまった。どうしたらいい?と」
「ち、父親はなんていったの?」
「腐腐。ユリもだんだんこの本の素晴らしさに気づいてきたようね。そう!!その話を聞いた父親たちは狂喜乱舞した!まさか息子たちも同じ人種だったなんて夢にも思わなかったから!!そして二つの家族は結ばれる。そう思っていたの。しかし!!」
「「「「しかし??」」」」
「腐腐。ここまでが一巻。その続きはその本を読んでからね?」
「あーー!!気になる!!見たくないが気になる!!」
「ホントね・・・つい手を握りしめて聞き入ってしまったわ」
「ねぇ弥生!!それ見終わったら僕にも貸して!!僕も読みたい!」
「いや、僕は読まないって。でも気にはなる」
「腐腐。皆だんだんBLの素晴らしさに気づいてきたようね!!では皆で合言葉を言ってみましょう!!「この世。攻めあらば、受けがある。地雷は私の主食。全ての男は我らの主食!!マナーあるボーイズ・ラブ人生を!!ビバ!!腐女子!!ビバ!!腐り!!ああ!!801!!」さぁ!!皆も一緒に!!」

 ここで僕らは解散した。

 と言うか退却した。

 クラスメイト達は暴走したナギをほっといて午後の授業の準備に取り掛かった。

 まぁでも僕の気分は少しは晴れた気がした。

 BLは好きにはなれないけど。

 そして僕は帰宅後、皆がそろうのを待ってからダイブインする。転移ポータルで「アニ」の街に行ってからみんなと合流、ノアが死んだあの場所に行ってみた。
 そこには今だ血と砂で汚れた神官服が落ちていた。

「ねぇ。これっておかしいことじゃない?普通現地人が死んだとき服ごと光となって消えるはずよね?」
「確かにそうかも!!もしかして何か手掛かりがあるんじゃないお兄ちゃん!!」

 僕は恐る恐る神官服を手に取ってみる。

 ここはあの時ノアが死んだ場所で、僕がノアを助けられなかった場所でもある。

 僕の手はいつの間にか震えてしまっていた。

「ん。大丈夫。私達が付いてる。」

 そんな僕を気遣ってくれてエリーゼが僕の手を握ってくれる。

「手手手、手をつなぐなんて最近の子たちは進んでるんだな」

 後ろではレイが顔を真っ赤にしながら僕らの事を見ていた。

 その顔がなんだか可笑しくて僕の震えはいつの間にか収まっていた。

「ん?何か落ちた?」

 そんな時神官服から小さな袋が落ちる。

 それを手に取り中身をみてみると中には書類の束が入っていた。

「これは!!」
「ちょっと見せて?これって!!」

 その書類には「「間引き草」生成方法」や「アニの街襲撃計画書」などが多数出てきた。

 そしてそこには多くの貴族がかかわっていることも。

「なんでノアがこんな物を持っていたのだ?」
「まさか。ノアが自分で?」
「ノアは!!そんなことをする人じゃない!!」
「ん。落ち着いてウィル。それは皆がわかっている事」
「ごめん」

 僕は思わず声を上げてしまい、エリーゼに窘められる。

 でも、でもノアは本当にいい人だったと思う。

 短い付き合いだったが気さくで物知りで、本当に沢山の人の事を思って生きていたと思う。

 そんなノアが。

 僕らは答えの出ないまま街の中を散策してみることにした。

 街はすでにボロボロでいくつか燃えて灰になっている家、モンスターの襲撃で崩れている家などもあった。

「ここが本当にアニの街だなんて、信じられないわ」
「本当に誰もいないんだね」
「人の気配そのものが感じられないわ」
「ん。静か」
「なぁ墓を造ってあげないか?俺たちにできる事はそれしかないと思う」

 レイの言葉に僕らは賛成し、町の中心に大きな墓標を造ることにした。

「勇敢で心優しい「アニ」の住民。ここに眠る」

 そんな文字を書いて僕らは墓を造った。

 その後もう一度街を周り生存者がいないことを確認した後協会の地下に向かった。

 地下もすでにモンスターに荒らされボロボロになっていて、本もほとんど破れてしまっていたり、血で汚れてしまっていた。

 僕らは何かのヒントになればと何冊かの本を拾い集め、街を出ることにした。

 次の目的地は大国の一番西にある要塞都市「ケロケロソンヌ」を目指す。

 そこにはノアの弟がいるはず。

 僕がノアの最後を伝えたいと皆に伝え、皆の同意を得てから要塞都市に向かった。
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