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初めてのダンジョン3

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 場の空気が重くのしかかる。皆あの数分で精神的にも肉体的にも大分疲れたようだ。見張りは必要ないので皆思い思いに休む。俺はとにかく休んで魔力を回復させる事に専念する。食事も済ませ休む中アンドレアが口を開く。

「なぁ、顔は兎も角体を攻撃したらいいんじゃないか?」
「いや、恐らく心臓を貫かない限りどこだろうと再生するだろうさ。それにあの三つの顔を躱しながら体を攻撃するなんて不可能だ」
「魔力切れも駄目、体も駄目、顔は再生。どうやって戦えばいいのよ」
「ん。魔物を躱して魔石だけ破壊しに行く?」
「いや、あれを躱すのは無理だろう。その場合誰かが犠牲になるしかない。だが俺にはその選択肢はとれないな」

 いくら話し合っても中々攻略の糸口が見えない。彼らが今まで出会った魔物の中で一番の強敵らしい。

「攻撃自体は何とかできる。だがあの再生力を何とかしないと……」
 
 結局いくら話し合っても再生力の話になってしまいそこで会話が途切れる。一体どうしたら……。

「ねぇ、右の顔は風魔法、左の顔は火魔法。じゃあ真ん中の顔は何?」
「え?そうか、もしかしたら」
「そうね。真ん中が「光魔法」を使うのかも」
「ん。だったら真ん中から攻撃すればいい」
「だが初めに左右のどちらかを攻撃しなければ真ん中への攻撃は届かないぞ。さすがに左右の攻撃を躱しながら真ん中に行くのは無理だ」

 少し光明が見えたと思ったがまだアイディアが足らないらしい。地球のアニメの中の冒険者たちは、ゲームの中の世界では一体こういう時どうすればいいんだ……。再生する顔、再生力をどうにか。いや、再生は仕方ないのか?問題は顔が元に戻る事、それをどうにかすれば……。

「あ、閃いたかも」
「「「「え?」」」」

 その後の話し合いで俺の案が採用され今晩再びアタックすることが決まる。皆再び目に光が灯り武器を手入れする。

「良し、いいな?チャールズの案を採用したが、もし失敗した場合はすぐさま退散。次のアタックは明日以降とする」
「「「「了解」」」」
「じゃあ行くぞ。俺たちにフィリア様のご加護がありますように」

 イーサンはゆっくりと扉に手をつき開ける。そう言えばフィリアなんて女神いたな。色々あって忘れてた……。

 部屋に入ると再び息がつまりそうなほどの重圧を感じる。だが二度目なので全員すぐさま武器を構えて配置につく。

「グァアアアアアア!!」
「ファイアートルネード!!」

 部屋に入った瞬間ケロべロスが叫び炎を吐きだしてきたのに対し、俺は練っていた魔力を一気に使い「ファイヤートルネード」を放ち炎を相殺させる。

「行くぞ!!」

 イーサンの合図で、イーサンとアンドレア、そして俺がケロべロスに向かって走り出す。

「インパクトショット!!」
「ん。アイスガロック」

 ウェンディの素早い矢が右の顔に当たり攻撃を放とうとしていた右の顔はその衝撃で沈黙すし、次にアグネスの魔法が真ん中の顔に当たり、顔はのけ反り次の行動を防ぐ。

「グァアアアアアア!!」
「来い!!マジックシールド!!」

 左の顔が怒り噛みついてきたがそれをイーサンが魔力で大きくした盾で防ぐが、あまりの衝撃にイーサンは後ろに吹き飛ぶ。

「あとは任せたアンドレア!」
「おう!!任せろ!!」
 
 後ろに吹き飛美ながら叫ぶイーサンの声にアンドレアは応え、飛び上がり剣を振り上げ首を斬り落とす。

「チャールズ!!」
「ああ!「豪炎!!」」

 俺は「ブースト」を使い飛び上がり斬り落とされた首の切り口に俺の体より大きな炎の塊を叩きつける。

「二人とも一度下がれ!「かまいたち!!」!ウェンディ!アグネス」
「分かってる!「レインショット!!」」
「ん。任せて。風たちよ、我の命に従え「トルネード」」

 俺とアンドレアが下がる時間を作るために三人は攻撃を放ち、真ん中と左の攻撃を防ぐ。後ろから凄まじい衝撃が来るが俺たちは皆の攻撃を信じて振り返ることなく後退する。

「どうだ!?」

 振り返りケロべロスを見ると、左の顔は再生していなかった。

「やった!!上手くいった!!」
「よし!!このまま確実に右の首斬るぞ!!チャールズ行けるか!?」
「もちろん!」

 作戦は斬り落とした後の首に炎を叩き込み焼焦がして細胞から破壊し再生させないというものだ。だがこれはアグネスにはできない。何故なら顔が斬り落とされてから再生するまでの時間があまりに短く魔法お放っている時間がないからだ。その為無詠唱で魔法が使える俺が至近距離まで行き炎を叩きつける必要があった。

 だがこれには大きなリスクが伴う。もし失敗し顔が再生され俺が攻撃され死亡してしまった場合、もう光魔法の使い手がいなくなりクエスト失敗となってしまうからだ。だが成功した。俺はその嬉しさと興奮を何とか押し殺し再び二人の後に続き走り出す。

「アンドレア!!」
「おう!!あとは任せたチャールズ!!」
「ああ!「豪炎!!」」

 先ほどと同じ流れで右の顔を斬り落とし首を焼き切る。あとは真ん中の首だけ……。

「伏せろ!!」

 真ん中の顔に向かっていたイーサンが突然叫び俺とアンドレアは伏せる。

「ガァアアアアア!!」
「クソ!ガッ!?」

 伏せた俺たちの前にイーサンは盾を構え立つが、次の瞬間俺たちの上を何かが通りイーサンは後ろの壁まで吹き飛んでしまう。

「イーサン!?チャールズ!来るぞ!ガッ!?」
「え?グッ!?」

 俺たちの上を通り過ぎた何かがすぐさま戻ってきて、俺とアンドレアは剣でそれを防ぐが横に吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

「クソ……。ありゃ「魔力昇華」だ。上位の魔物が本気で怒った時に出る奴だ」

 見ればケロべロスは体中から赤い魔力を出しその顔は怒りに満ちていた。先ほどの攻撃はどうやら尻尾を使った攻撃だったらしい。ケロべロス斬られた二つの顔を見て怒りの遠吠えをする。その声は部屋全体を震えさせ思わず体が硬直していまう程だった。

「く、くるぞ!!「マジックシールド」!!」
「「インパクトショット」!」
「ん。アイスガロック」

 ケロべロスが正面にいる三人を睨んだ瞬間、それに反応した三人が魔法で防御する。だがケロべロスは一瞬で三人の前に移動すると尻尾で三人の魔法をもろともせず吹き飛ばす。壁に吹き飛ばされた三人に追撃しようとするケロべロスに対しアンドレアが駆け出し剣を振るうがそれを足で受け止め尻尾で三人と同じ所に吹き飛ばし四人は気絶してしまう。

 ケロべロスは再び四人に追撃しようと足を進める。

 このままでは四人は殺される。僕はまた失うのか?アニの街を出てから僕は失ってばかりだった。何も助けられない自分に腹がたって山に籠った。一年が経ち俺は変わったつもりだった。だが何も変わってなかった。また俺は失う。もう何もできないのは嫌だ。

「「サンドドーム」」

 俺は地面に手をつき気絶している四人を土のドームに隠す。それだけではすぐにケロべロスに壊されてしまうだろうが、ケロべロス気絶をした四人よりまだ起きて魔法を使う俺に標的を変え睨みつけてくる。

「もう何も失いたくないんだ。さぁ来いよ犬が」
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