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第85話 グライムに教えられる 5
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両開きのドアを開けると一階の大きな空間が広がっていた。
背の高い空間の上部の作りを見るに、この一階は各階層からベルトコンベアに乗って流れてくる荷物を受け取る場所なのだろうと文哉は理解した。
自分が働いている職場と似通った部分が多い。
ロボットを導入するのだとか聞いていたが、トラックへの積み込み部分は人の手でやるのだろうか、ロボットを設置する機械などのスペースは無さそうだ。
そここそ単純作業な気がするが、単純作業だから人がやるのか、単純作業をAIに割り振るのか、コスト的に難しい話なのかもしれない。
工事はまだ外装段階なのか、中の設備は用意されてなく、ここからベルトコンベアを搬入して設置するのかと、文哉は見学してる気分で感心していた。
須藤の指示で荷物用エレベーターに乗り込む。
大型の箱で、三十人ぐらいは乗れそうな広さがある。
「何だよ、入り口のエレベーターが動いてないから、上まで階段で行くのかと思って身構えてたぜ」
「工事の関係もあって、コイツは真っ先に動かしたんだろうな。おかげで人を連れ込むのも、荷物を捌くのも楽なもんさ」
「まだ工事中で中は手つかずなんだろ? 中に入れるのは楽かも知れねぇけど、隠すのはどうしてたんだ? フロント企業だか何だか知らねぇけど、従業員は一般人だろ?」
七つある階層ボタンの3のボタンを押し込む須藤。
横向きのシャッター型のドアがゆっくりと閉まっていき、エレベーターが動き出す。
「暗い世界の仕事は、暗い時間にやるのが常識さ。陽の目に晒したら、そりゃ騒動にもなる。だから、夜の間の利用だな、昼間には何も残さない」
朝からやれば昨日のオレみたいなことになる、と須藤は付け加え自分の顔面を指差した。
要はここに何も隠したりはしていないのだろう、と勝は理解する。
薬も拉致った人間も。
つまり八重や愛依のことも今日までのことで、朝日が昇る頃には別の場所に運ばれてると示唆している。
「そんなに時間をかける気なんてハナからねぇよ。あと小一時間で、話は解決だ」
ぐぅーんと低い音を立てながら細かに振動するエレベーターが上がっていく。
僅かな圧を感じながら、文哉は階段表示の点滅がカウントアップしていくのを見ていた。
1から2、2から3。
ふわっとした停止の後、シャッターがゆっくりと横へスライドしていく。
「ところでさ、何で三階なんだ?」
スライドしていくシャッターが少しずつ見せる三階中の様子。
ずらりと横並びに待ち構えるチンピラ達の姿。
一階入口広間に配置されていた人数よりも多い。
「野上の指示なんだが・・・・・・あぁ、くそ、あの野郎、嵌めやがったか!」
どんっ、とエレベーターの壁を殴る須藤。
うんざりとしながらエレベーターを降りる。
「よぉ、須藤、待ってたぜ。テメェなんか野上さんと賭けをしたらしいがよぉ、テメェが抜ける抜けねぇなんて、あの人に何の旨味も無いことわかんなかったのかぁ? そんな賭け成立するわけねぇだろ、バーカ!」
緑色のモヒカンを揺らしながら、チンピラの一人が須藤を罵倒する。
周りのチンピラ達も笑い声を上げ、罵倒を盛り上げる。
「オイ、案内人。邪魔は無しだって言ってなかったか?」
文哉が須藤に問い、須藤は苛立った様子でニット帽をクシャクシャと掻いた。
「須藤、テメェをぶっ殺したらボーナスだそうだ。良かったな、見知らぬ人から抜けれるぞ。ただし死体としてだがな」
緑色のモヒカンの罵倒が続く。
何か上手いこと言ったつもりのどや顔がムカつく。
とりあえず黙らせるか、と勝が動き出そうとするのを須藤が手を伸ばし制止した。
「一斉処分、そういうことかよ、野上の野郎。抜けるやつも使えねぇやつも潰しておくのがアイツの狙いだな。集めるだけ集めてふるいにかけて削ぎ落とそうってのは、何様なんだあの野郎」
勝と文哉、二人のことを一瞥すると須藤は前に踏み出す。
「勝手に買った案内役だ。役目は全うさせてもらうぜ。コイツらの邪魔はさせねぇ、テメェらの相手はオレだ」
「怪我人のクセにいきがるんじゃねぇよ、ミイラ男。テメェら三人ともぶっ殺すのが、オレらの仕事なんだよっ!!」
駆け出す須藤、迎え撃つチンピラ達。
須藤の証明済みの喧嘩ぶりにチンピラ達は次々倒れていくので、勝と文哉は一旦待機しようと構えていたのだが、流石に何人かは取りこぼしがあり流れて殴りにかかってきたので、仕方なく相手することにした。
三度の雑魚戦、勃発。
背の高い空間の上部の作りを見るに、この一階は各階層からベルトコンベアに乗って流れてくる荷物を受け取る場所なのだろうと文哉は理解した。
自分が働いている職場と似通った部分が多い。
ロボットを導入するのだとか聞いていたが、トラックへの積み込み部分は人の手でやるのだろうか、ロボットを設置する機械などのスペースは無さそうだ。
そここそ単純作業な気がするが、単純作業だから人がやるのか、単純作業をAIに割り振るのか、コスト的に難しい話なのかもしれない。
工事はまだ外装段階なのか、中の設備は用意されてなく、ここからベルトコンベアを搬入して設置するのかと、文哉は見学してる気分で感心していた。
須藤の指示で荷物用エレベーターに乗り込む。
大型の箱で、三十人ぐらいは乗れそうな広さがある。
「何だよ、入り口のエレベーターが動いてないから、上まで階段で行くのかと思って身構えてたぜ」
「工事の関係もあって、コイツは真っ先に動かしたんだろうな。おかげで人を連れ込むのも、荷物を捌くのも楽なもんさ」
「まだ工事中で中は手つかずなんだろ? 中に入れるのは楽かも知れねぇけど、隠すのはどうしてたんだ? フロント企業だか何だか知らねぇけど、従業員は一般人だろ?」
七つある階層ボタンの3のボタンを押し込む須藤。
横向きのシャッター型のドアがゆっくりと閉まっていき、エレベーターが動き出す。
「暗い世界の仕事は、暗い時間にやるのが常識さ。陽の目に晒したら、そりゃ騒動にもなる。だから、夜の間の利用だな、昼間には何も残さない」
朝からやれば昨日のオレみたいなことになる、と須藤は付け加え自分の顔面を指差した。
要はここに何も隠したりはしていないのだろう、と勝は理解する。
薬も拉致った人間も。
つまり八重や愛依のことも今日までのことで、朝日が昇る頃には別の場所に運ばれてると示唆している。
「そんなに時間をかける気なんてハナからねぇよ。あと小一時間で、話は解決だ」
ぐぅーんと低い音を立てながら細かに振動するエレベーターが上がっていく。
僅かな圧を感じながら、文哉は階段表示の点滅がカウントアップしていくのを見ていた。
1から2、2から3。
ふわっとした停止の後、シャッターがゆっくりと横へスライドしていく。
「ところでさ、何で三階なんだ?」
スライドしていくシャッターが少しずつ見せる三階中の様子。
ずらりと横並びに待ち構えるチンピラ達の姿。
一階入口広間に配置されていた人数よりも多い。
「野上の指示なんだが・・・・・・あぁ、くそ、あの野郎、嵌めやがったか!」
どんっ、とエレベーターの壁を殴る須藤。
うんざりとしながらエレベーターを降りる。
「よぉ、須藤、待ってたぜ。テメェなんか野上さんと賭けをしたらしいがよぉ、テメェが抜ける抜けねぇなんて、あの人に何の旨味も無いことわかんなかったのかぁ? そんな賭け成立するわけねぇだろ、バーカ!」
緑色のモヒカンを揺らしながら、チンピラの一人が須藤を罵倒する。
周りのチンピラ達も笑い声を上げ、罵倒を盛り上げる。
「オイ、案内人。邪魔は無しだって言ってなかったか?」
文哉が須藤に問い、須藤は苛立った様子でニット帽をクシャクシャと掻いた。
「須藤、テメェをぶっ殺したらボーナスだそうだ。良かったな、見知らぬ人から抜けれるぞ。ただし死体としてだがな」
緑色のモヒカンの罵倒が続く。
何か上手いこと言ったつもりのどや顔がムカつく。
とりあえず黙らせるか、と勝が動き出そうとするのを須藤が手を伸ばし制止した。
「一斉処分、そういうことかよ、野上の野郎。抜けるやつも使えねぇやつも潰しておくのがアイツの狙いだな。集めるだけ集めてふるいにかけて削ぎ落とそうってのは、何様なんだあの野郎」
勝と文哉、二人のことを一瞥すると須藤は前に踏み出す。
「勝手に買った案内役だ。役目は全うさせてもらうぜ。コイツらの邪魔はさせねぇ、テメェらの相手はオレだ」
「怪我人のクセにいきがるんじゃねぇよ、ミイラ男。テメェら三人ともぶっ殺すのが、オレらの仕事なんだよっ!!」
駆け出す須藤、迎え撃つチンピラ達。
須藤の証明済みの喧嘩ぶりにチンピラ達は次々倒れていくので、勝と文哉は一旦待機しようと構えていたのだが、流石に何人かは取りこぼしがあり流れて殴りにかかってきたので、仕方なく相手することにした。
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