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プロローグ、ペンは剣よりも強し編

萌える。

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「…古代剣闘士ゾンビ。レベル25、108体」

 美裸はゾンビの情報をエリスに伝えると、別の方向から弓でゾンビの頭を狙うように指示した。同じ方向からだと、エリスの矢が強制停止してしまうからだ。

「解った!!」

 すぐにエリスは美裸から離れると、別の方向から弓を射る。強制性停止したゾンビの頭を片っ端から射抜くエリス。

 美裸は頭の吹っ飛んだゾンビを縮小処理してから手元に引き寄せ、だいふくに吸収させる。

「ゾンビ倒すだけじゃ勿体ないからね~。跡形もなく全てを利用しないと(笑)!!」

 その言葉に、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるだいふく。その間にもエリスは順調にゾンビの頭を矢で撃ち抜いていく。

 …10体撃破、更に20体撃破した所で、エリスが戻ってきた。

「美裸ッ!!もう矢がない、どうしよう!?」

 見るとエリスの矢筒は空になっていた。そんなエリスに、美裸はポケットから縮小処理した矢筒を山のように出すと、元の大きさに戻す。

「はい、これ持って行ってひたすら撃ちまくって(笑)!!」
「えェェッ!!、いつの間にこんなに矢筒持って来たのよ…!?」

 驚くエリス。

「この前武器屋に寄った時に買っといたんだよ~(笑)」

 そう言いながら笑う美裸。

 準備の良さに感心しつつ、エリスは矢筒をいくつか持つと元の場所に戻り、再びゾンビの頭を射撃で撃ち抜いていく。

 30体、撃破した所でエリスのレベルが29に上がった。

「よしよしッ、どんどん行くよ~」

 矢の残量を気にしなくて良くなったエリスは、躊躇う事無く高速連射でゾンビの頭を吹っ飛ばしていった。ゾンビ40体撃破…50体撃破…。エリスレベル30に上がった。

 この辺りでエリスは疲れを見せ始める。

「…美裸、ちょっと休憩して良いかな…?」

 戻って来たエリスが、肩で息をしながら美裸に問う。

「良いよ~、ゾンビはこのまま止めとくからね~。その間に倒したやつ、だいふくに食べて貰うから(笑)」

 そう聞いて安心したエリスは一旦、座って水筒の水を飲む。

「…はぁ、水が身体に染み渡るねー…」

 呟きつつ、倒れて縮小処理されたゾンビを吸収するだいふくを見た後、コニーの事を思い出したエリスは上の観客席を見上げた。



 コニーは、エリスがゾンビ軍団を撃ち抜いて行くのを見た後、観客席の物見台へと膝を曲げて一気にジャンプした。

 物見台から美裸達を憎悪の目で睨んでいた幽霊にトコトコと近づいて行くコニー。

「…な、に者…わっば…余に、近づくでな、い…怨呪魔導、出でよ『呪魂叫哭じゅこんきょうこく』!!」

 幽霊が叫んだ瞬間、呪われた魂が絶叫と共に無数に現れてコニーに襲い掛かる。

 しかし、コニーはそれをギリギリまで引き付けると、攻撃を仕掛けた。

「おにらっしゅっ!!」

 目の前まで接近した呪われた魂達をパンチのラッシュ攻撃で片っ端から殴っていく。その瞬間、呪われた魂達が昇天した。

「…なッ、何いぃィィッ!!わ、わっぱ…お主、何者…?」

 目には目を、歯には歯を、呪いには呪いを。コニーの武器、メリケンサックに込められたより強力な呪いが、呪われた魂達を昇天させた。

 そのまま幽霊に近づいたコニーがいきなり、その足元を蹴る。

「…怨呪障壁おんじゅしょうへき!!…」

 幽霊が呟いた瞬間、蹴ったコニーの足が弾かれる。

「…ん?ばりあはってる…。でもコニーこんなのすぐ壊せる」

 そう言うとコニーはメリケンサックを嵌めた右拳で軽くパンチする。瞬間、障壁が現れてコニーのパンチを弾いた。

「…フフ、わ、わっばの、こ、攻撃など、余には…き、効かぬ…」

 そんな幽霊の言葉を無視したまま、ゴンゴンと何回かパンチを出した後、障壁が現れたその瞬間を狙ってコニーがスキルを放った。

「めがくらっしゅっ!!」

 同時に障壁にヒビが入る。そしてもう一度パンチを放つコニー。特殊な呪いエネルギーを持つメリケンが一気に障壁を突き破った。

「なッ、何いぃィィッ!!…そ、そんなバカな…余が、余が千年掛けて編み出した怨呪障壁が…こうなったら仕方あるまい。怨呪魔導具怨呪魔道具おんじゅまどうぐ召喚『血風呪殺剣けっぷうじゅさつけん』!!…」

 一人呟いた幽霊は一気に後ろに飛び退くと、その手に深紅の剣を握っていた。構わずトコトコ近づくコニー。

 幽霊はすぐに深紅の剣を掲げると叫んだ。

「我が喚び掛けに答えよッ!!『決殺血風片決殺血風片けっさつけっぷうへん』!!」

 その瞬間、砕け散った真っ赤な剣の欠片がコニーに襲い掛かる。コニーは慌てる事無く、くいっと小さな体を捻って構えると一気に回転する。

「おにはりけーんッ!!」

 高速回転するコニーの小さなカラダから呪い効果が拡散され全ての血風片を砕き吸収していく。回転を止めたコニーが呟く。

「…エネルギー、ぜんぶもらった。コニー、またつよくなった…」
「…そんなッ…血風片がッ…く、来るなッ…わっぱ近づくでないッ…!!」

 後退りをする幽霊を再び蹴るコニー。しかし、またもや障壁が現れて攻撃を邪魔した。

「…また、ばりあ…。さっきよりかたい…」
「…フ、フフ…そうであった…余には二千年を掛けて編み出した怨呪障壁Ⅱがまだあったのだ…フフッ、わっばの攻撃など…」

 呟く幽霊の前で、コニーが再びスキルを放った。

「ぎがくらっしゅっ!!」

 その瞬間、ガラスを割るように簡単に障壁Ⅱを破壊するコニー。

「…ええェェェッ!!そ、そんなッ…こうなったら最後、三千年を掛けて編み出した余の最高傑作、怨呪障壁Ⅲをッ…」

 しかし、幽霊が障壁を張るより早く接近したコニーが幽霊の足を蹴る。


「おにきっく!!」
「…いッ、痛ッ!!こ、このッ…何するかッ!!わっぱッ…!!」

 蹴られて上半身を屈めた幽霊を、下から一気に殴り飛ばすコニー。

「おにあっぱぁーっ!!」

  その瞬間、幽霊は激しく空中を舞った…。



「…おまえ、だれだ?はやくいう。いわないとまたパンチする」
「わわわ、解かった!!言うから殴るでない!!…いや、殴らないで下さい…」

 コニーにボコボコに殴られた幽霊はすっかり意気消沈して、その前で正座していた。

「…余は、五千年前にこの星で栄えた巨大帝国ガーマンジルの13代皇帝のシルガモレル帝だ…いや、です…」
「がま〇じる?しるがもれるってなんだ?」

 頭の中が?だらけのコニーとその目の前で正座する幽霊に、美裸とエリス、だいふくが近づいてくる。

「…コニーはそんな事、覚えなくていいからね?この幽霊、適当な事言って誤魔化そうとしてッ!!」

 怒りを見せるエリスに幽霊、シルガモレル帝が慌てて弁解する。

「いや、ホントだッ!!お主らちゃんと歴史を学んでないのかッ!?この星では昔々に超古代帝国ガーマンジル文明が栄えていたのだ!!」
「それはわたし達じゃ解からないね~(笑)。わたしとエリスは別の星から来てるからね~(笑)。別の何かで証明して貰わないと(笑)」

 そう言われたシルガモレル帝は、皇帝の座る席の下から石板を取り出す。

「…こ、これだッ、これを読むがいいッ!!これで余が嘘を吐いてないと証明出来るッ!!」

 しかし、エリスと目を合わせた美裸は肩を竦める。

「…わたし達、古代文字読めないんだよね~(笑)」
「えェェッ!!そ、そんな…どうすれば余の言っている事を信じてくれるのだ…」

 絶望して項垂れるシルガモレル帝。その前でコニーが美裸を見上げる。

「みら、それコニーがよむ。かして…」

 コニーは美裸から石板を受け取ると、じっと見つめる。

「…がま…じる、じゅうさん…しりがもえる…てい、ここに…とうぎ、じょう…けんせつ…する。なってる…」
「…わっぱ、シリガモエル帝ではなく、シルガモレル帝だ…」
「…どっちもあんまり変わらないと思うけど…」

 エリスの言葉に、ブツブツ呟く美裸。

「…尻が萌える、汁が漏れる…か。つまりこの幽霊は尻を見て興奮すると、先から汁が漏れ…」

 その瞬間、エリスが美裸の首元を掴む。

「…オィィッ、美裸ァッ!!そんな事言わなくて良いッ!!」
「みら、このゆうれい、おけつみて、こうふんするのか?」
「ほらッ!!すぐコニーが覚えるでしょうがッ!!」
「…いや~、今ふっと頭に新しい『お話』を思い付いちゃって(笑)。コニー、今度、新しいお話して上げられるかもよ(笑)?」
「…お主ら、尻が萌えるとか何を言っておるのだ?余はシルガモレル帝であるぞ?しかも余は尻より乳の方が…」
「オイィィッ、お前らいい加減にしろォッ!!今すぐ黙りなさいッ!!」

 混沌とした会話を、ぴしゃりと止めるエリス。エリスは激しく肩で息をしていた。

「…全く、どいつもこいつもおかしな会話ばっかりして…」

 そして水を飲んで一息つくエリス。

「…落ち着きましたかな?エリスさんや(笑)?」
「お主、怒りっぽいと男にモテぬぞ(笑)?」
「…えりす、おこるのだめ。びよう、よくない(笑)」
 
 3人?の言葉に、イラッとするエリス。

(…全く、誰のせいでわたしがこんなにイラついてると思ってんだコイツら…!!)

 何とかエリスが落ち着いた所で、シルガモレル帝が3人に問う。

「…所でお主ら、ここに何をしに来たのだ…?お主らが強いのは解かったがこんな所、小娘達が来る所ではないぞ?」
「遺跡の事前調査に来てたんだけどね~。午前中にぶっ壊しちゃったから直しに来てたんだよね~」
「…そういう事か…。お主らが一度ぶっ壊してくれたおかげで余が封印から開放されたのか…」

 幽霊の言葉に、疑問を持つエリス。

「…封印?何で、シリガも…いや、シルガモレル帝はここに封印されてたのよ?アンタもしかして悪霊?」

 エリスの質問に暫く考えた後、シルガモレル帝が口を開く。

「…如何にも、余は悪霊化しておるがこれには訳があるのだ…」
「…ほほぅ。何やら複雑な経緯がありそうですな(笑)?」
「いや、複雑ではない。ただ単純に余はこの地下闘技場で暗殺されたのだ…」

 そしてシルガモレル帝が話を続ける。

「…当時、余の代で帝国は隆盛を極めた。大陸の端から端まで、余の威光が届かぬ所などなかった…しかし、終わりは呆気なかった。余の力を恐れた全老院の者共が余をここに誘い込み、闘技にかこつけて余を殺させた。そしてその魂までも転生出来ぬようにここに封印したのだ…」
「…午前中に出て来た巨大剣闘士は…アレは何なの…?」
「それは余は知らぬがおそらく、封印を解こうとする者を排除する為の番人であろう…。長きに渡り、封印されていた余は恨みと怒りで悪霊化したと言う訳だ…」
「…ふーん。取り敢えずこの後、考古学の調査が入ると思うから、調査員を驚かせたりしないでよ?」

 エリスの言葉に、不満を見せるシルガモレル帝。

「…お主ら、さっきの話聞いて同情とか、少し可哀そうとか思わぬのか…?」
「いや~、わたし達の仕事は事前調査と遺跡の修復だからね~(笑)」
「…はぁ、そうか。つれないヤツらだな…。まぁ、良い。封印を解いてくれた礼をする。下にある石板の台座をズラして見るのだ。そこにあるモノを持って行け…」
「…何が入ってるのよ?罠とかじゃないわよね?」

 エリスの疑いの言葉に溜息を吐くシルガモレル。

「…ハァ、今更そんな事せぬわ。とにかく持って行け!!わっぱが好きそうなものだ。考古学の調査員とやらに持って行かれるのは癪なんでな…」

 そう言うとシルガモレル帝はスーッと消えて行った。
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