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れっつごー人里

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 体力オバケな上、尋常じゃない速度で移動出来たため、一泊しただけで森の際近辺まで来れた。

 …ますます『人間離れ』が進んでいるようだ。

「もう少ししたら森を抜けるかな。そっから一番近い人里までどのくらいだろ? 今の速度で行ったら…ヤバいよね?」
《ヤバいっスねぇ。見た目完全に『ヒト族』なのに、獣人族とかと間違われるんじゃないっスかね》

 …この『世界』で亜人種の扱い…ヤバそうやもんな。気をつけよっと。


「…ん?」
《…『ヒト』の気配っスね》
『そのようだな。大した魔力は無さそうだが』


 すぐ横にある木に登り、その方向へ目を凝らせば、かなり距離はあれど『視える』。

「あっ、こっち来て最初の頃噛みつかれたヤツだ」

 黒い狼のような獣が3頭、3人の男性に襲いかかっている。戦っている男性の後ろには『ザ・冒険者』といった風体の男性が2人と、派手なローブを纏った女性が一人。
 冒険者風の男性と、ローブの女性は一切戦闘に加わっておらず、ただ前衛(?)3人を眺めているだけだ。

「…どういう状況だろ? 新人冒険者の教育?」

 それにしては…趣味が悪い感じだけど。

 前で戦っている3人は武器らしい武器を持っていないように見える。身体能力はそこそこ高いようだが…狼型の黒い獣にかなり苦戦している。有効な攻撃手段が無いのだろう。

『…戦っている3人は…恐らく亜人だろう。魔力を持っていない。後ろの3人は『ヒト族』だ』

「………」
《………》

 胸糞悪い想像しかできないんですけど…。

「…リュー」
《…了解っス》

 ぶわりとリューから圧力のようなものが立ち昇る。
 すると、狼型の黒い獣は慌てて森の奥の方へと駆け去っていった。ついでに戦っていた3人は座り込んだ。

「…『人間』は気づかない…か」
『大した実力は持っておらぬようだな』

 訳がわからないという感じの『人間』3人は、へたり込んでいる『亜人』3人を追い立てるようにして、森の出口の方へと去っていった。


「…これが…この『世界』の『生き物』の『関係性』か…」

 私の呟きに、返答はなかった。






「おぉぉぉぉ…」

 眼前に聳える高い塀…塀? 違うな。城壁? よーわからんけど、とりあえずでっかくて長ーい壁がある。

《あの辺りに人が並んでるっス。あっこが出入り口っぽいっス》
「おー、あれに並べばいいのかな? すごい、何かめっちゃ人間っぽい!」

『…そなた…ほんにヒトとして生活しておらなんだのだな』

 憐れまれた。
 まぁ、いきなり大自然でハードモードサバイバル、次は召喚誘拐監禁ですからね。

 とてとてとごく普通に、子どもらしく歩いて列の最後尾を目指す…と。


「…うわっ!! 魔獣?!」
「えぇっ?! きゃぁ本当、黒い獣だわ!!」
「危ないぞ! 逃げろ!!」


 …何か、物凄い勢いで逃げられました。
 何よ、わしそんなに怖い顔してる?

『…リューを魔獣と間違えておるな。そう言えば、魔獣と呼ばれる、歪な魔素から生まれた生物は、黒い体色で理性を持たず誰彼構わず襲いかかるモノだったわい』

 …早よ言えや!!

《えー、この色暗黒竜のアイデンティティなんスけどー。不服ー。姐さーん、いっちょヤッちゃいます?》
(バカたれここで暴れたら私の調味料が遠のくだろうが!!)
《この状況でも調味料…》
『もはや哀れを通り越して不憫よな…』

 言いたい放題な二人(?)に解せぬ思いを噛み締めていると、衛兵らしきオッサンが4人も駆け寄ってくるのが見えた。
 わーぉ、めっちゃ抜剣してるんですけど。

「人畜無害にしか見えないお子ちゃまに対してあの反応…」

《まー現実問題誰よりも危険人物っスからね》
『いかにも』

 お前ら…後で覚えておけよ…。



「そこの子ども! 危ないからこっちへ来なさい!」

(…リュー! ほら見ろ私は『人畜無害な子ども枠』!)
《えぇー…納得いかないっス!》

 とてとてと衛兵さんたちの方へ歩みを進めると…

「いやいやいや、魔獣は置いて! その黒いの置いて来て!!」

(リュー、置いてこいってさ(笑))
《酷いっ! こんなに尽くしてるのに!》
『…そなたら…この状況で何を遊んでおるのだ…』

 呆れ返ったダガーの言葉に笑ってしまった。

 私は、リューを肩からおろして抱っこする。そして…


「コレ、魔獣違う。ぼくの友達」


《何でカタコトなんスか(笑)》
『何故いきなり言語が不自由になるのだ(笑)』


 …お前ら、本当後で覚えとけよ…!!(恥)






 …剣のグリップ握ったままのオッサン3人に囲まれ、正面に強面のデカいオッサンがドンと配置された中央に座らされてるお子ちゃま、どうも、アスです。

「………」
「………」

 先程から睨み合いと言う名の無言の時間が過ぎて行きます。
 リューと一緒に首をかしげてみます。ドヤ、割と可愛いかろ?

「………」

 無反応です。可愛さで乗り切る作戦失敗です。

「…は…本当に魔獣では無いのか…?」
「…『魔獣』の定義が『理性を持たず、誰彼構わず襲いかかる』、というモノなのだとしたら違いますね」

 カタコトを卒業した私の膝の上で大人しくしているリュー。つぶらな瞳をきゅるん☆とさせている。ついでに前脚掴んで手を振らせてみたり、口に指突っ込んでみたりと私にこねくり回されてもいる。

《…姐さーん…可愛いアピールこの状態割と拷問っスよ…。自分で自分に吐きそうっス…》
(バカモノ! 人畜無害アピールに『可愛さ』は必須項目だ! ここでこのオッサンズを丸め込まなくては、調味料が手に入らんだろうが!!)
『そなたのその何を犠牲にしてでもと言うほど病的なまでの調味料への執着…恐ろしいわ…』

 調味料味のあるご飯大事やぞ!!

「いや…しかしだな…。黒い獣というのは…」
「突然変異です」
「普通、『黒』は生まれな…」
「突然変異です」
「サラマンダーは本来赤いし、何より一般的なのよりデカ…」
「突然変異です」

 突然変異別の生き物です(キッパリ)

《ぼく、悪いドラゴンじゃ無いよ☆》

 よーし、お約束のセリフだ! ただし伝わらないがな!(笑)

「うぅーーん…確かに…全く敵意を感じないし…大人しいし…」
「たっ、隊長っ! 何絆されてるんですか?!」

 おっ、何だ何だ、動物のつぶらな瞳に弱いタイプか?

(よし、全員に愛想を振りまくんだ!!)
《えぇー、俺、気高き暗黒竜なんスけどー》



 自称気高い暗黒竜は、ピキュピキュ媚びた声を出しながら衛兵さんたちの足にすりすりした。

 陥落した(大笑)
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