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やらかしながら進むのが人生だ

頭悪すぎじゃなかろうか…

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「……」

 無言で前を行くまだ線の細さが目立つ騎士服制服の少年の背中を見ながら足を進める。
 すでに放課後である事と、試験前という事で校内に人影は無い。
 元々そんなに口数の多い子では無かったが、一切喋らないと言うのは珍しい。何となく緊張と言うか、ピリピリした雰囲気を感じた。

 …まぁ…仕方ない事だろう。
 彼が私を連れていく先に待っているのは…

 十中八九、あのクソ女だろうからーーー





「最近…あのクソ女が今まで以上にトチ狂ってます」

 物凄く…物凄ーーく不機嫌なアルくんが低い声でそう言ってお芋をぶっ刺した。
 お行儀悪いですよって、あれ? セバスチャンさん、アルくんには注意しないんです? え、注意するのは私だけ? 理不尽すぎません?
 泣いてないやい、と思いながらお上品にポワレを口に運んでもぐもぐしているうちに兄が続きを促した。

 どうも、アメリアがまた何ぞおかしい事をおっ始めたらしい。

「姉さま曰く『パルッ◯魔法』で、すわ『白魔法』か?! って騒がれたのは、王家の都合で揉み消された訳ですけども…また同じような事を言い出したんですよ…」

 ギリィ…とさらにお芋にフォークが埋まっていく。
 王子が突撃してきたせいで、知りたくも無い王家の秘密を知ってしまった訳だが…何かよくわからんうちに王子がせっかく会得出来た『白魔法』も、ヤツが発動したパ◯ック魔法も人の口に上がらなくなった。

 何か…陰謀めいたモノを感じるけど、掘ったらあかんヤツやろな。ワタシ、ナニモシリマセン。

「それが…前と違って形状は炎らしいんですが…どうもその色が見たことない色なんだそうです。それだけなら『新しい技か』で済むんで別段構いやしないんですがね…何と…その炎を『浄化の炎』とか言い出したんですよ!」

 何だよ『浄化』って?! と喚いて今度はお魚をぶっ刺した。

「…何が…したいんだろうねぇ…?」

 思った以上にデカイお魚を一口で入れてしまったためにもごもごいってるアルは放置して兄に向けて問いかけてみる。

「さぁ? アレの考えてる事はわからん」

 一刀両断で終わりました。

「…『悪しきモノや穢れを燃やし尽くす慈悲の炎』なんですってよ…」

 お口の中のお魚との格闘を終えたアルが、これ以上無い程苦々しさを含んだ声で呟く。

「…『悪しきモノ』って…何ぞや? っつーか、『浄化』とかいう言い方してるけど、やっぱり王家に喧嘩売ってるって事に…気づいてないんかな?」
「…恐らく…気づいて無いでしょう。そもそも、『白魔法』の噂が消えた理由すら気付いて無いでしょうね」

 王家特有の魔法を騙るつもりが無かったにしろ、紛らわしい事象を起こした上、否定する事もなく乗っかっていい気になってた時点で大分ヤバい。
 聡い連中はもうあの女から離れただろう。

 そして今回の『浄化』という言葉。

 『白魔法』がどんなモノかを今後いつ公にするかは知らんが…今現在は『黒魔法』の『呪い』的なモノを『打ち消す』魔法…と思われている。と、言う事は…

「…もう、いっそ今の段階で『不敬罪』でしょっ引けば平和が訪れるのでは…?」
「本当、そうしてくれれば一番なんでしょうけどね…」


 私たち三人の深い深ーーいため息を、パパンがちょっと楽しそうに眺めていた。
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