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やらかしながら進むのが人生だ
《世界の中心・前編》
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《アメリア視点》
「もうっ…! 本当に! 腹が立つったら!」
枕を殴りつけてついでに放り投げる。ドレッサーに当たって化粧瓶が幾つか割れたけど、どうでもいいわ。後で片付けさせて新しいのを持って来させればいいもの。
それよりもこの苛立ちを発散させる方が先だわ!
あちこちに散らばる色んな物をメイドに片付けさせてる内にベッドに横になる。
豪華な天蓋付きのベッドはお気に入り。今までの生活の中で一番素敵。
それでも…きっとあの家…青の筆頭公爵家のお屋敷の方が立派に違いない。
…本当なら私の家はそこのハズだったのに!
私の素晴らしい人生の中で、あいつが関わった時だけ思い通りにならない。それ以外は何もかもうまくいった。
だから絶対あいつが何かしてるんだわ。
許せない許せない許せない許さない!
絶対に絶対に…あいつだけは…!
私の最初の記憶は、綺麗な洋服と美味しいご飯。
家はそんなに大きくなかったし、母の着ているものも後々思い出すに上級貴族の物じゃ無かったけど、特に不自由は感じてなかった。
そして、そこでの記憶に残っているのは、薄汚れた女の子。
痩せぎすで、ボサボサの黒い髪に濃い色の目をした、可愛くない子。私のおもちゃを奪ろうとしたり、ご飯を盗み食いしたりする行儀の悪い子。
母さまを困らせてたから、私も母さまの手伝いをしようとしたけど、すばしっこくて全然捕まらない腹の立つ子。
そのうち、もっと立派なお屋敷に移った。煩い赤ちゃんはいたけど、あの子は来なかった。
そこで、私は『お父さま』に会った。
赤ちゃんの部屋のドアが開いてたから覗いてみたら…黒髪で背の高い、すごくカッコいい男の人が居て…母さまがくっついてたから…この人が私の『お父さま』なんだって思った。
『お父さま』が、『お前が俺の望み通りなら迎えてやる』って言ったから。私は賢い子だから絶対お迎えに来てくれるハズ。だから待ってた。
なのに…母さまと一緒に、母さまの実家に戻された。
お祖父さまは母さまに対してめちゃくちゃ怒ってて。『ポーラス公爵家』に睨まれたって。何のことか全然わからなかったけど、今までよりずっと小さな屋敷なのが嫌だった。
大喧嘩の末、私まで田舎に行かされたのは未だに許せない。母さまだけ行けば良かったのに。
その母さまは、いつの間にか居なくなってた。何年かしてお祖父さまの所に戻った時にも居なかった。
母さまの事聞かれたから『知らない内に居なくなってた』って言ったら、お祖父さまの顔色が悪かったけど。
田舎暮らしの屋敷は平民ばっかりでつまらなかった。
まぁ、私が一番可愛くて、一番人気だったからいいけど。
皆みんな、私の言うこと聞いてくれたし。
うちが『子爵家』で、貴族階級で言えば下から数えた方が早いって知ったのはお祖父さまの所に戻ってから。
従姉妹たちと参加したお茶会で、上位貴族のご令嬢にバカにされた。私よりブスのくせに。
それから、私はお茶会に行くたびに文句を言ってくるその子に『いじめられてる可哀想な子』を演じた。ついでにその子の近くで転んだり、ジュース持ってるところに寄って行ってわざとかかってみたり。
そのうちその子は見なくなった。
うちの家自体はそんなに貧乏な訳じゃ無いみたいだけど、やっぱり上流階級の子とは装い一つでも差がある。あれ程の品は私にこそ相応しいのに。
うちの寄親…? 元締め…? 総括の侯爵家でのお茶会に行った際、後継がどうのとか、色んな人が話してた。
何回目かの時、疲れて奥のガゼボに行こうとしたら、メイドと男の人がコソコソ話してるのが見えた。何か薬がどーのこーの言ってて…そのメイドが青白い顔して大奥さまのお茶準備してたから、それ、毒かもって教えてあげた。
そしたら凄い喜ばれて、私を侯爵家に引き取ってくれるって!
一気に高位貴族の仲間入り!
それでも謙虚に見せておけば悪感情も抱かれない。
私の人生順風満帆だわ!…と思ってた。
学園で、あの子を見つけるまでーーー
「もうっ…! 本当に! 腹が立つったら!」
枕を殴りつけてついでに放り投げる。ドレッサーに当たって化粧瓶が幾つか割れたけど、どうでもいいわ。後で片付けさせて新しいのを持って来させればいいもの。
それよりもこの苛立ちを発散させる方が先だわ!
あちこちに散らばる色んな物をメイドに片付けさせてる内にベッドに横になる。
豪華な天蓋付きのベッドはお気に入り。今までの生活の中で一番素敵。
それでも…きっとあの家…青の筆頭公爵家のお屋敷の方が立派に違いない。
…本当なら私の家はそこのハズだったのに!
私の素晴らしい人生の中で、あいつが関わった時だけ思い通りにならない。それ以外は何もかもうまくいった。
だから絶対あいつが何かしてるんだわ。
許せない許せない許せない許さない!
絶対に絶対に…あいつだけは…!
私の最初の記憶は、綺麗な洋服と美味しいご飯。
家はそんなに大きくなかったし、母の着ているものも後々思い出すに上級貴族の物じゃ無かったけど、特に不自由は感じてなかった。
そして、そこでの記憶に残っているのは、薄汚れた女の子。
痩せぎすで、ボサボサの黒い髪に濃い色の目をした、可愛くない子。私のおもちゃを奪ろうとしたり、ご飯を盗み食いしたりする行儀の悪い子。
母さまを困らせてたから、私も母さまの手伝いをしようとしたけど、すばしっこくて全然捕まらない腹の立つ子。
そのうち、もっと立派なお屋敷に移った。煩い赤ちゃんはいたけど、あの子は来なかった。
そこで、私は『お父さま』に会った。
赤ちゃんの部屋のドアが開いてたから覗いてみたら…黒髪で背の高い、すごくカッコいい男の人が居て…母さまがくっついてたから…この人が私の『お父さま』なんだって思った。
『お父さま』が、『お前が俺の望み通りなら迎えてやる』って言ったから。私は賢い子だから絶対お迎えに来てくれるハズ。だから待ってた。
なのに…母さまと一緒に、母さまの実家に戻された。
お祖父さまは母さまに対してめちゃくちゃ怒ってて。『ポーラス公爵家』に睨まれたって。何のことか全然わからなかったけど、今までよりずっと小さな屋敷なのが嫌だった。
大喧嘩の末、私まで田舎に行かされたのは未だに許せない。母さまだけ行けば良かったのに。
その母さまは、いつの間にか居なくなってた。何年かしてお祖父さまの所に戻った時にも居なかった。
母さまの事聞かれたから『知らない内に居なくなってた』って言ったら、お祖父さまの顔色が悪かったけど。
田舎暮らしの屋敷は平民ばっかりでつまらなかった。
まぁ、私が一番可愛くて、一番人気だったからいいけど。
皆みんな、私の言うこと聞いてくれたし。
うちが『子爵家』で、貴族階級で言えば下から数えた方が早いって知ったのはお祖父さまの所に戻ってから。
従姉妹たちと参加したお茶会で、上位貴族のご令嬢にバカにされた。私よりブスのくせに。
それから、私はお茶会に行くたびに文句を言ってくるその子に『いじめられてる可哀想な子』を演じた。ついでにその子の近くで転んだり、ジュース持ってるところに寄って行ってわざとかかってみたり。
そのうちその子は見なくなった。
うちの家自体はそんなに貧乏な訳じゃ無いみたいだけど、やっぱり上流階級の子とは装い一つでも差がある。あれ程の品は私にこそ相応しいのに。
うちの寄親…? 元締め…? 総括の侯爵家でのお茶会に行った際、後継がどうのとか、色んな人が話してた。
何回目かの時、疲れて奥のガゼボに行こうとしたら、メイドと男の人がコソコソ話してるのが見えた。何か薬がどーのこーの言ってて…そのメイドが青白い顔して大奥さまのお茶準備してたから、それ、毒かもって教えてあげた。
そしたら凄い喜ばれて、私を侯爵家に引き取ってくれるって!
一気に高位貴族の仲間入り!
それでも謙虚に見せておけば悪感情も抱かれない。
私の人生順風満帆だわ!…と思ってた。
学園で、あの子を見つけるまでーーー
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