他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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やらかしながら進むのが人生だ

《好き勝手を許すほどお人好しじゃ無い》

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  《ノルディン視点》

 真っ青な顔で震えているトーレ殿。彼自身は加担していないだろう事は分かっているが…致し方ない事と諦めてもらう。

 彼も…王家からの監視役の一人なのだから。

「先程、『白魔法』が失伝している、と聞いて色々腑に落ちましたよ」

 ついでに腹立たしさも再燃したがね、とこぼせば、さらに震えが大きくなる。


「なるほど…私があの胸糞悪くなるような女を無理やり娶らされた理由は、それをネタに皇帝に捩じ込まれたせいですか」






 


 戦場は、曽祖父の代に、当時近辺の小国を併呑して勢力を拡大した帝国との競り合いに終止符が打たれて以来この地では起こっていない。
 プラネタリアは小国ではあるが、『魔法』がある事と、地形条件のために、力はつけてはいても一枚岩になりきれない事で、帝国は武力制圧を諦めた。まぁ、正直魔法がなければ開拓も難しいであろう土地だ。領土的な魅力は低い。
 しかし、この国…と言うより、『魔法師』という存在を皇帝が諦めたわけではない。
 終戦後辺りからとにかく我が国の貴族階級との婚姻政策を提示されていた事は、この国の貴族たちは皆知っていた。

 しかし…他国へと嫁して行った者たちの子が属性魔法を発現した、と言う話は聞かない。
 …それはそうだろう。

 魔力が低く、魔法を発動出来ないか、弱い属性魔法しか発動出来ない者ばかりを送り出したのだから。

 我が国に嫁して来た者たちについては、低位の家か、高位でも四大公爵家の管轄下の家へ縁付け、属性魔法を発動出来たとしても、その後生国へ足を踏み入れさせないという徹底した管理の元、帝国へ情報が流れないように計らっていたのだ。



 16年前…特に小競り合いも無いし、国内は安定しており、当主としての重責はあれど、初めての子どもという事で私は幸せの絶頂にいた。
 だが、決して情報収集を疎かにしていた訳では無かった。
 しかし、まさか…

 …フレイアの死を利用されるとは…露程も思わなかったーーー

 皇帝は、我が国が魔力の多い者や、力ある者との婚姻を意図的に避けているのに気づいていたのだろう。どうにかして捻じ込みたかったに違いない。
 後々、とある伯爵家が高貴な身分の後妻を取る予定だったらしい、と言う話があったと言う情報が上がったのを見ると、フレイアが亡くなったのを好奇とした帝国側の要求を、『白魔法』の秘密を隠す事と引き換えに飲んだ事は明白だ。
 当時、コレと言った証拠を掴めていたわけではないが、ある程度の予測はついていた。

 だからこそ、早々にあの女を『離縁』したのだ。

 圧力を感じていた国王は、離縁にいい顔をしなかった。特に、この時すでにノアは『黒魔法』を使えるようになっていたから。
 帝国側としては、あの女を残しておきさえすればうちとの繋がりが保てる。ノアを自国の者と婚姻させるか、アルノルトへ誰かを嫁がせる事も出来るという腹だったのだろう。

 そんな事誰が許すものか。

 あの女の脳みそが限りなく足りなかった事に、これほど感謝した事はない。
 恐らく、うちとの繋がりのため、と言い含められていただろうに、その事を綺麗に忘れて『不貞』と言う致命的な失策をやらかしてくれたおかげで、こちらも強気に出られた。
 当然だろう。『王命』として、無理やり婚姻させられたにも関わらずの『不貞』だ。表沙汰になればタダでは済むまい。
 さすがに帝国側からも否やは出なかっただろうし、王家にも対外的に『病を得た事での離縁』とする事で恩に着せておいたしな。

 あの女は…自国では無く、戻してやった。

 さて、どうなったかはわからないが…興味はない。
 まぁ…二度と『会う』事は無かろうがな。






「…私としては…これ以上うちに手を出して来さえしなければ、このまま放っておくつもりなんだがね?」

「…そ…そのように…お伝えいたします…」


 その言葉、しっかり守ってもらいたいな。
 あの坊ちゃん殿下が『白魔法』を会得できようが出来まいが…ね。


ーーーーーー

パパンは王家にマジ恨み骨髄なので、皇帝に握られている『王家の弱みの内容』までは当時掴めませんでしたが、それ以外の証拠揃えて脅しかけました。王家には『秘密を抱えていて、帝国に弱みを握られている』と言う状態を『吹聴しない』事を条件に、ノアを『駒』にされないよう相手を抑えています。
そして…クソババァは…頭お花畑だった事で…思惑台無しにされた皇帝さんにより、本当にお花畑へお渡りになったかと…
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