他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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やらかしながら進むのが人生だ

《知らぬが仏とはよく言ったモノで》

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  《ゲイル視点》

「…私とて、何も手を打たなかった訳ではないんだ…」

 そう言って手のひらから魔力を顕現させるシリス殿下。
 手から蜃気楼のような魔力が揺らめく。もし、それに色が…『黒い色』がついていれば、ノアが見せてくれたモノによく似ている気がした。

「…私は…『白魔法』を発現して…王家の資料や文献をとにかく漁った。…実りはなかったけど。だから、ノアが『黒魔法』を使えると聞いた時…初めは嫉妬でどうにかなりそうだったよ…」

 力なく笑う殿下を見ても、『へー』、と適当な相槌を返すノアは、本当に己がどれだけの偉業を成したのか全くわかっていないようだ。
 今、学園や王城を騒がせている『(自称)前代未聞の凄い魔法師』とは一線を画すというのにーーー






 ノアは、学園に入るまで、特に『外』との交流を取ろうとはしなかった。いや、市井へ降りるための下見的な事はしていたようだが。
 母親がいなかったせいもあるだろうが、貴族としての交流…茶会などへ行きたい、と…一度たりとも口にしなかった。
 本気で平民になろうとしていたんだろう。

 …それが…許される訳が無いのだが。



 ノアの属性が『黒』である事が判明した事で、ケルヴィンを追い詰める手筈やらを整えるためにあちこち手を広げているうちに、いつの間にやらあいつは勝手に『黒魔法』を会得していた。訳がわからん。
 だが、そのおかげ…と言うのも変だが、『黒持ち』である事が漏れる危険性を下げるため、ノアは貴族としての交流を免れた。
 王家からの監視役がつく程度は予想の範囲内だ。
 

 『黒』であるからこそ、外へ出さずに済んだ。
 『黒』が使えたために、狙われる事となった。

 強い魔力と唯一無二の魔法。
 皇帝がノアを諦める訳が無かった。


 元々、女の子だからと、適齢期に帝国の貴族と縁付けるつもりだったのだろうが、王国としてはとんだ誤算、皇帝としては是が非でも欲しいモノになったうちの『黒魔法使い』を、そう簡単に好きにさせる訳が無い。
 さっさとクソ女を返却して関係を絶ったにも関わらず、相変わらずちまちまと偵察に来やがって鬱陶しいったら無い。

 そんな事はカケラも知らず、日々思いもよらない魔法を考案し、野菜を育てるノア。いや、野菜はもういいだろうに…。

 市井に降ろすのを何とか阻止して学園へ通わせ、最初の二年は特に問題なかった。鬱陶しい王子は別として。
 アルが入学してやらかして、ついでにノアもやらかして…学園内では大人が手を出すわけにはいかないと、頭を抱えている俺とは裏腹に、ノルディンはニヤリと悪い笑みを浮かべ、ここぞとばかりに堂々と乗り込んで…『力』を見せつけた。
 そして…

 『ノア』の有用性を顕示したーーー

 レイを通して騎士養成科の連中をちょいと焚き付ければ、想定以上の成果をあげた。
 これだけ有能であれば、『色』がどうであれノアを他国へ出すわけにはいかないだろう。

 ノアは、無意識とはいえ、実力で己の足場を確固たるモノにした。



 そんなノアを取り乱させた…アメリアとかいうバカ女。
 貴族に限らず、情報操作は戦略の基本といえば基本だが…事実無根な噂話だけで掌握出来るのは、頭の軽いほんの僅かだけだ。
 その証拠に、ノアが『離宮』から引き取られたのは『2歳』の時であり、それ以降特定の乳母も侍女もつけていない、という『事実』を『該当家である公爵家の子息』が撒けば、ほとんどの者は騙されなくなった。
 そりゃそうだろう。ノアも社交はしてこなかったが、あの女も幼少時には『田舎に居た』のだから。そして、田舎暮らしに馴染めなかった『母親』は、早いうちに男を作って田舎を出奔、その後すぐ『消えて』いるのだから。
 やり方が稚拙な割にここまで広まって、ノアにあれ程のダメージをもたらした事は誤算だったが…。


 今回、よくわからん『技』を披露して盲信している一部に持ち上げられて鼻高々でいるようだが…この先どうなることやら。

 『白魔法』が失伝しているという今、ある意味王家の地雷を踏み抜いたあいつをこのまま野放しにするとは思えない。
 魔力は高いらしいし、ノア同様珍しい魔法使いではあるのは事実だ。

 さて、どう動くのか…



 ま、うちに迷惑かからなきゃどうでもいいけどな。


ーーーーーー

アメリア母に関しては、パパンから実家に『苦情』が入った時点で縁切りされてますが、もしそれ以降『実家』を頼る…と言うか、ポーラス家の目に入る所に現れた際は『容赦は無い』と言われています。…ので、出奔後、どこに『消えた』んでしょうねぇ…
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