上 下
66 / 83
やらかしながら進むのが人生だ

『色』は違えど…

しおりを挟む
「…ちょーっと、お待ちくだされよ? じゃぁ何かね? その、ウン百年使えた人が居ない魔法を私に解明させようって言うんですかね…?」

 力一杯頭を縦に振りおったぞ、この王子…。

「いやいやいや、何を血迷ってらっしゃるんですかね、この坊ちゃん王子は? 私にそんな大層なことできるわけが…」

「過去に使えた者が存在しない『黒魔法』を見つけ出す方が凄いだろう? 一応『白魔法』は使えた人物がいた記録があるんだから」

 …それ言われるとツライんだよね!
 でも、こんな責任重大そうな事やりたくねぇわ、絶対。
 何とかして断ろうと頭捻ってる私を、哀しそうな顔で眺める王子。

 …やめて! 罪悪感を刺激してこないで!

 捨て犬のような目を見ないように目を瞑ってウンウン考え始めた私の耳に、小さな声だったが殿下の声がちゃんと届いた。

 ごめんね、と。

 今更謝罪されてもなぁ…と言う気分ではあるが、とりあえず王子の方を見ると…情けなそうな顔で続けた。


「…私と…ほぼ同じ条件なのに…ノアは自分で自分の力を引き出した。私は…それが羨ましくて…妬ましくて…悔しくて…。だから、つい意地悪な言い方したり…嫌がらせみたいに付き纏ったりしたんだ…」

 横の方で兄が『えっ、俺が4歳くらいの時にノアとアルに突っかかったのと同じ感じ…? うわっ、四倍の年齢のクセに行動が幼児…』とか言ってるのが聞こえる。
 恐らく、王子以外の全員と心が一つになっただろう。

 『それな』、と。

 そして、一気に周囲の空気が生ぬるい物になったのは仕方ない事だろう。




 「…あー…その…殿下の中身が幼児だった件はとりあえず置いておいて…。先程仰ったほぼ『同じ条件』とは…?」

 さすがの仕切りですアルくん。生ぬるい空気をぶった斬ってくれてありがとう。

「…それについて…ちょっと王家うちの機密に触れるんだけど…あ、大丈夫、君たちには話していいって言われてるから」

 …その許可本当に大丈夫なヤツだろうな?
 胡乱な目で王子を見ている私にセバスチャンさんが

「恐らく旦那さまもトーレ殿に伺っていると思いますので大丈夫かと」

 と、言ってくれた。そっか。
 だがしかし、大丈夫じゃなくても大丈夫にしてくださいますよ、って小声で言いましたねセバスチャンさん。え、パパン王族脅すネタ持ってんの…? こわ…。






「王族は『白持ち』が多い。と言うか、継承権は『白持ち』にしか無い、って言うのは皆知ってるよね?」

 ふーん、そうなんや…って、皆んな頷いてるわ。頷いとけ、知らんかったけど。…王子には気づかれてないけど、うちの皆からは白い目で見られている…。
 何でわかったし。

「…何で皆ノアの方見てるんだ? まぁいいか。で、この条件は当たり前だけど『白魔法が使えますよ』って言う対外アピールのためのモノなんだ」

 まぁそうだろうね。その属性色持ってなきゃどうにもならんもんね…って、ちょっと待てよ…?

「…『白持ち』である事が…条件…? いや、それって…」
「うん、気づいた?」

 『白を発現した者』じゃ無いんだよーーー



 王族は『白魔法』が使える、というある意味固定観念があるせいか、単に継承権に口出し出来ないだけかわからないが、言われなければ誰も疑問にすら思わなかった。

 その属性色を『発現』していなければ属性魔法は使えない。

「まぁ、初代以外使える人が居なかった訳だから、そう言う条件で支障なかったんだよ。そして…逆に『白』を発現した者は継承権を失う。ただ、幸か不幸か…『白』を発現する者はあまり居なかったみたいだよ。ましてや、『白』しか持たない者に関しては、ほとんど記録されていない」

 『使えない色』だから、残されてないだけかも知れないけどねーーー

 翳りのあるその声に、私たちは全員彼が何を言いたいか悟った。




「…私は…『使えない色』しか持たない王子なんだよ…」
しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...