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やらかしながら進むのが人生だ
『色』は違えど…
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「…ちょーっと、お待ちくだされよ? じゃぁ何かね? その、ウン百年使えた人が居ない魔法を私に解明させようって言うんですかね…?」
力一杯頭を縦に振りおったぞ、この王子…。
「いやいやいや、何を血迷ってらっしゃるんですかね、この坊ちゃん王子は? 私にそんな大層なことできるわけが…」
「過去に使えた者が存在しない『黒魔法』を見つけ出す方が凄いだろう? 一応『白魔法』は使えた人物がいた記録があるんだから」
…それ言われるとツライんだよね!
でも、こんな責任重大そうな事やりたくねぇわ、絶対。
何とかして断ろうと頭捻ってる私を、哀しそうな顔で眺める王子。
…やめて! 罪悪感を刺激してこないで!
捨て犬のような目を見ないように目を瞑ってウンウン考え始めた私の耳に、小さな声だったが殿下の声がちゃんと届いた。
ごめんね、と。
今更謝罪されてもなぁ…と言う気分ではあるが、とりあえず王子の方を見ると…情けなそうな顔で続けた。
「…私と…ほぼ同じ条件なのに…ノアは自分で自分の力を引き出した。私は…それが羨ましくて…妬ましくて…悔しくて…。だから、つい意地悪な言い方したり…嫌がらせみたいに付き纏ったりしたんだ…」
横の方で兄が『えっ、俺が4歳くらいの時にノアとアルに突っかかったのと同じ感じ…? うわっ、四倍の年齢のクセに行動が幼児…』とか言ってるのが聞こえる。
恐らく、王子以外の全員と心が一つになっただろう。
『それな』、と。
そして、一気に周囲の空気が生ぬるい物になったのは仕方ない事だろう。
「…あー…その…殿下の中身が幼児だった件はとりあえず置いておいて…。先程仰ったほぼ『同じ条件』とは…?」
さすがの仕切りですアルくん。生ぬるい空気をぶった斬ってくれてありがとう。
「…それについて…ちょっと王家の機密に触れるんだけど…あ、大丈夫、君たちには話していいって言われてるから」
…その許可本当に大丈夫なヤツだろうな?
胡乱な目で王子を見ている私にセバスチャンさんが
「恐らく旦那さまもトーレ殿に伺っていると思いますので大丈夫かと」
と、言ってくれた。そっか。
だがしかし、大丈夫じゃなくても大丈夫にしてくださいますよ、って小声で言いましたねセバスチャンさん。え、パパン王族脅すネタ持ってんの…? こわ…。
「王族は『白持ち』が多い。と言うか、継承権は『白持ち』にしか無い、って言うのは皆知ってるよね?」
ふーん、そうなんや…って、皆んな頷いてるわ。頷いとけ、知らんかったけど。…王子には気づかれてないけど、うちの皆からは白い目で見られている…。
何でわかったし。
「…何で皆ノアの方見てるんだ? まぁいいか。で、この条件は当たり前だけど『白魔法が使えますよ』って言う対外アピールのためのモノなんだ」
まぁそうだろうね。その属性色持ってなきゃどうにもならんもんね…って、ちょっと待てよ…?
「…『白持ち』である事が…条件…? いや、それって…」
「うん、気づいた?」
『白を発現した者』じゃ無いんだよーーー
王族は『白魔法』が使える、というある意味固定観念があるせいか、単に継承権に口出し出来ないだけかわからないが、言われなければ誰も疑問にすら思わなかった。
その属性色を『発現』していなければ属性魔法は使えない。
「まぁ、初代以外使える人が居なかった訳だから、そう言う条件で支障なかったんだよ。そして…逆に『白』を発現した者は継承権を失う。ただ、幸か不幸か…『白』を発現する者はあまり居なかったみたいだよ。ましてや、『白』しか持たない者に関しては、ほとんど記録されていない」
『使えない色』だから、残されてないだけかも知れないけどねーーー
翳りのあるその声に、私たちは全員彼が何を言いたいか悟った。
「…私は…『使えない色』しか持たない王子なんだよ…」
力一杯頭を縦に振りおったぞ、この王子…。
「いやいやいや、何を血迷ってらっしゃるんですかね、この坊ちゃん王子は? 私にそんな大層なことできるわけが…」
「過去に使えた者が存在しない『黒魔法』を見つけ出す方が凄いだろう? 一応『白魔法』は使えた人物がいた記録があるんだから」
…それ言われるとツライんだよね!
でも、こんな責任重大そうな事やりたくねぇわ、絶対。
何とかして断ろうと頭捻ってる私を、哀しそうな顔で眺める王子。
…やめて! 罪悪感を刺激してこないで!
捨て犬のような目を見ないように目を瞑ってウンウン考え始めた私の耳に、小さな声だったが殿下の声がちゃんと届いた。
ごめんね、と。
今更謝罪されてもなぁ…と言う気分ではあるが、とりあえず王子の方を見ると…情けなそうな顔で続けた。
「…私と…ほぼ同じ条件なのに…ノアは自分で自分の力を引き出した。私は…それが羨ましくて…妬ましくて…悔しくて…。だから、つい意地悪な言い方したり…嫌がらせみたいに付き纏ったりしたんだ…」
横の方で兄が『えっ、俺が4歳くらいの時にノアとアルに突っかかったのと同じ感じ…? うわっ、四倍の年齢のクセに行動が幼児…』とか言ってるのが聞こえる。
恐らく、王子以外の全員と心が一つになっただろう。
『それな』、と。
そして、一気に周囲の空気が生ぬるい物になったのは仕方ない事だろう。
「…あー…その…殿下の中身が幼児だった件はとりあえず置いておいて…。先程仰ったほぼ『同じ条件』とは…?」
さすがの仕切りですアルくん。生ぬるい空気をぶった斬ってくれてありがとう。
「…それについて…ちょっと王家の機密に触れるんだけど…あ、大丈夫、君たちには話していいって言われてるから」
…その許可本当に大丈夫なヤツだろうな?
胡乱な目で王子を見ている私にセバスチャンさんが
「恐らく旦那さまもトーレ殿に伺っていると思いますので大丈夫かと」
と、言ってくれた。そっか。
だがしかし、大丈夫じゃなくても大丈夫にしてくださいますよ、って小声で言いましたねセバスチャンさん。え、パパン王族脅すネタ持ってんの…? こわ…。
「王族は『白持ち』が多い。と言うか、継承権は『白持ち』にしか無い、って言うのは皆知ってるよね?」
ふーん、そうなんや…って、皆んな頷いてるわ。頷いとけ、知らんかったけど。…王子には気づかれてないけど、うちの皆からは白い目で見られている…。
何でわかったし。
「…何で皆ノアの方見てるんだ? まぁいいか。で、この条件は当たり前だけど『白魔法が使えますよ』って言う対外アピールのためのモノなんだ」
まぁそうだろうね。その属性色持ってなきゃどうにもならんもんね…って、ちょっと待てよ…?
「…『白持ち』である事が…条件…? いや、それって…」
「うん、気づいた?」
『白を発現した者』じゃ無いんだよーーー
王族は『白魔法』が使える、というある意味固定観念があるせいか、単に継承権に口出し出来ないだけかわからないが、言われなければ誰も疑問にすら思わなかった。
その属性色を『発現』していなければ属性魔法は使えない。
「まぁ、初代以外使える人が居なかった訳だから、そう言う条件で支障なかったんだよ。そして…逆に『白』を発現した者は継承権を失う。ただ、幸か不幸か…『白』を発現する者はあまり居なかったみたいだよ。ましてや、『白』しか持たない者に関しては、ほとんど記録されていない」
『使えない色』だから、残されてないだけかも知れないけどねーーー
翳りのあるその声に、私たちは全員彼が何を言いたいか悟った。
「…私は…『使えない色』しか持たない王子なんだよ…」
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