他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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やらかしながら進むのが人生だ

《伝説という厄介ごと》

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   《トーレ視点》

 執事殿が綺麗な礼をした後静かに扉を閉じたのを見て、この家の主たるポーラス公爵がわしに視線を寄越した。その薄氷を思わせる瞳は、色と同じように温度を感じさせない。

「…さて、どう言う事かお話を聞かせて頂けますか?」

 質問と言う名の尋問が始まるーーー






 『白魔法』が『王族特有の魔法』と言われているのは、単純に、この国の初代国王がその魔法の使い手だったからだ。
 彼の御仁はその力で人々から尊ばれたという。

「…建国の際にも、戦の際にも彼の御仁がお力をふるわれたと言うことは伝わっておるのですが…」

「どういう『力』だったかは伝わっていない、という事か? それは…あぁ、そう言う事か」

 公爵様は怪訝そうな顔をされたが、すぐに気づかれたようだ。そう…


 『白魔法の記録』は、王家によって、意図的に改竄・隠蔽・消失させられたのだーーー






 使い手が居る『属性魔法』は、きちんと管理され、伝えられている。そのため、魔力が関係する『技』の強弱に関してや、新しく追加された物、今は廃れてしまった物も記録されている。『プラネタリア魔法大全』や、『属性魔法全集』などが一番わかりやすい伝承と言える。

「…『白魔法』が表向き、この国の祖である初代国王が行使された魔法で、『王族のみに受け継がれる伝説の魔法』として伝えらておるのはご存知の通りです。これが、王家ですと、初代国王のみが使えた『魔法』として伝えられております。
ですが…しっかりとした記録として残されてはおりませんけども、彼の御仁がご存命の間…『白』をご子息とお孫さまは使えたようです。それでも彼の方程は使えなかったようですが…。それ以降の記録は正直正確性に欠け…使える者がいたのかいなかったのか…わし個人といたしましては、いなかったとほぼ確信しております」

 その後、王家として『白』の血を残しながらも『白魔法』の記録を抹消…その後復活していないところを見ると『居なかった証拠』と言えるだろう。

「現在の…王家の継承条件は…確か『』であり、魔力が高い事、ではなかったか?」
「公爵さまの仰る通りですな。『王家=白』と言う伝統は残さねば、王家の面子に関わりますからな」

 しかし、実際のところ…恐らく『白魔法』が使えなくなった頃にはもう、『建前』としての『白魔法』を前面に押し出して、現在の『白は持ちつつも、もう一つの属性魔法を使える魔力の多い者』が継子となるカタチをとっていたのだろう。

「王族ともなれば、基本的に守られる立場だ。余程の事がない限り魔法を使うことも無い。特に我らが四大公爵家が、『それぞれの属性で強い力を行使できる者』と定められて以降は戦場に出ることも無かっただろう」
「さようにございますな」

 『伝説』は『伝説』としてのみ伝える事で、王家の求心力を強めるために『特別であり、稀少な魔法』と位置付けた。使えない事などおくびにも出さず。
 まぁ、実際困る事はあまり無かったようだが。

「…私はともかく、曽祖父の時代までは幾度となく戦場へ駆り出されていた事を考えると…上手く回っていたのだとしても幾らか腹立たしい気分だな。まぁそこはいい。…で? 本題は何だ? あの坊ちゃん殿下のため、と言うのは建前だろう?」

 薄氷の瞳を細めるようにこちらを伺う様は、獲物を追い詰める獣のようだ。

「…今回、アメリア・ルデバラン侯爵令嬢の発動した未知の魔法のせいで、『白魔法』に注目が集まってしまった事で…現在王家において唯一『白』をしているシリス殿下が『白魔法』を何とか会得するためにノア嬢を巻き込もうとしているのはお察しの通りです」
「…まぁ、それはわかる。だが、今の時点ではあの女の属性色は『赤』だと明確に示されたことで落ち着いたんじゃ無いのか? ついでに『白魔法を語る事は王家に対して不敬なのでは』という『囁き』を撒いたと聞いているが…」

 『白魔法』が使えない現王家側からしたら、実物を見せる事は出来ない。だからこその『処置』が施され、シリス殿下の心情はさて置いて、現状、一応の落ち着きは見せている。
 しかし…王家の本当の目的は…


「…ついでに帝国への牽制として…『白魔法』を復活させる事が出来れば御の字…と言うところか?」



 …あぁ、どうしてこの方を敵に回したんですか、陛下ーーー

ーーーーーー

中間管理職で胃が痛いおじいちゃんです(笑)
本来『監視』と言うか、『ノア』の『価値』を報告するためです。ノアが『やらかす』たびに駒にしたい王家と、やんのか、コラ、とばかりに暗雲背負うパパンとの攻防で寿命縮みそう(笑)
それと、今みたいな情報化社会じゃ無いから『伝説』や『歴史』は権力あれば作れる。
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