67 / 83
やらかしながら進むのが人生だ
《伝説という厄介ごと》
しおりを挟む
《トーレ視点》
執事殿が綺麗な礼をした後静かに扉を閉じたのを見て、この家の主たるポーラス公爵がわしに視線を寄越した。その薄氷を思わせる瞳は、色と同じように温度を感じさせない。
「…さて、どう言う事かお話を聞かせて頂けますか?」
質問と言う名の尋問が始まるーーー
『白魔法』が『王族特有の魔法』と言われているのは、単純に、この国の初代国王がその魔法の使い手だったからだ。
彼の御仁はその力で人々から尊ばれたという。
「…建国の際にも、戦の際にも彼の御仁がお力をふるわれたと言うことは伝わっておるのですが…」
「どういう『力』だったかは伝わっていない、という事か? それは…あぁ、そう言う事か」
公爵様は怪訝そうな顔をされたが、すぐに気づかれたようだ。そう…
『白魔法の記録』は、王家によって、意図的に改竄・隠蔽・消失させられたのだーーー
使い手が居る『属性魔法』は、きちんと管理され、伝えられている。そのため、魔力が関係する『技』の強弱に関してや、新しく追加された物、今は廃れてしまった物も記録されている。『プラネタリア魔法大全』や、『属性魔法全集』などが一番わかりやすい伝承と言える。
「…『白魔法』が表向き、この国の祖である初代国王が行使された魔法で、『王族のみに受け継がれる伝説の魔法』として伝えらておるのはご存知の通りです。これが、王家ですと、初代国王のみが使えた『魔法』として伝えられております。
ですが…しっかりとした記録として残されてはおりませんけども、彼の御仁がご存命の間…『白』を発現したご子息とお孫さまは使えたようです。それでも彼の方程は使えなかったようですが…。それ以降の記録は正直正確性に欠け…使える者がいたのかいなかったのか…わし個人といたしましては、いなかったとほぼ確信しております」
その後、王家として『白』の血を残しながらも『白魔法』の記録を抹消…その後復活していないところを見ると『居なかった証拠』と言えるだろう。
「現在の…王家の継承条件は…確か『白持ち』であり、魔力が高い事、ではなかったか?」
「公爵さまの仰る通りですな。『王家=白』と言う伝統は残さねば、王家の面子に関わりますからな」
しかし、実際のところ…恐らく『白魔法』が使えなくなった頃にはもう、『建前』としての『白魔法』を前面に押し出して、現在の『白は持ちつつも、もう一つの属性魔法を使える魔力の多い者』が継子となるカタチをとっていたのだろう。
「王族ともなれば、基本的に守られる立場だ。余程の事がない限り魔法を使うことも無い。特に我らが四大公爵家が、『それぞれの属性で強い力を行使できる者』と定められて以降は戦場に出ることも無かっただろう」
「さようにございますな」
『伝説』は『伝説』としてのみ伝える事で、王家の求心力を強めるために『特別であり、稀少な魔法』と位置付けた。使えない事などおくびにも出さず。
まぁ、実際困る事はあまり無かったようだが。
「…私はともかく、曽祖父の時代までは幾度となく戦場へ駆り出されていた事を考えると…上手く回っていたのだとしても幾らか腹立たしい気分だな。まぁそこはいい。…で? 本題は何だ? あの坊ちゃん殿下のため、と言うのは建前だろう?」
薄氷の瞳を細めるようにこちらを伺う様は、獲物を追い詰める獣のようだ。
「…今回、アメリア・ルデバラン侯爵令嬢の発動した未知の魔法のせいで、『白魔法』に注目が集まってしまった事で…現在王家において唯一『白』を発現しているシリス殿下が『白魔法』を何とか会得するためにノア嬢を巻き込もうとしているのはお察しの通りです」
「…まぁ、それはわかる。だが、今の時点ではあの女の属性色は『赤』だと明確に示されたことで落ち着いたんじゃ無いのか? ついでに『白魔法を語る事は王家に対して不敬なのでは』という『囁き』を撒いたと聞いているが…」
『白魔法』が使えない現王家側からしたら、実物を見せる事は出来ない。だからこその『処置』が施され、シリス殿下の心情はさて置いて、現状、一応の落ち着きは見せている。
しかし…王家の本当の目的は…
「…ついでに帝国への牽制として…『白魔法』を復活させる事が出来れば御の字…と言うところか?」
…あぁ、どうしてこの方を敵に回したんですか、陛下ーーー
ーーーーーー
中間管理職で胃が痛いおじいちゃんです(笑)
本来『監視』と言うか、『ノア』の『価値』を報告するためです。ノアが『やらかす』たびに駒にしたい王家と、やんのか、コラ、とばかりに暗雲背負うパパンとの攻防で寿命縮みそう(笑)
それと、今みたいな情報化社会じゃ無いから『伝説』や『歴史』は権力あれば作れる。
執事殿が綺麗な礼をした後静かに扉を閉じたのを見て、この家の主たるポーラス公爵がわしに視線を寄越した。その薄氷を思わせる瞳は、色と同じように温度を感じさせない。
「…さて、どう言う事かお話を聞かせて頂けますか?」
質問と言う名の尋問が始まるーーー
『白魔法』が『王族特有の魔法』と言われているのは、単純に、この国の初代国王がその魔法の使い手だったからだ。
彼の御仁はその力で人々から尊ばれたという。
「…建国の際にも、戦の際にも彼の御仁がお力をふるわれたと言うことは伝わっておるのですが…」
「どういう『力』だったかは伝わっていない、という事か? それは…あぁ、そう言う事か」
公爵様は怪訝そうな顔をされたが、すぐに気づかれたようだ。そう…
『白魔法の記録』は、王家によって、意図的に改竄・隠蔽・消失させられたのだーーー
使い手が居る『属性魔法』は、きちんと管理され、伝えられている。そのため、魔力が関係する『技』の強弱に関してや、新しく追加された物、今は廃れてしまった物も記録されている。『プラネタリア魔法大全』や、『属性魔法全集』などが一番わかりやすい伝承と言える。
「…『白魔法』が表向き、この国の祖である初代国王が行使された魔法で、『王族のみに受け継がれる伝説の魔法』として伝えらておるのはご存知の通りです。これが、王家ですと、初代国王のみが使えた『魔法』として伝えられております。
ですが…しっかりとした記録として残されてはおりませんけども、彼の御仁がご存命の間…『白』を発現したご子息とお孫さまは使えたようです。それでも彼の方程は使えなかったようですが…。それ以降の記録は正直正確性に欠け…使える者がいたのかいなかったのか…わし個人といたしましては、いなかったとほぼ確信しております」
その後、王家として『白』の血を残しながらも『白魔法』の記録を抹消…その後復活していないところを見ると『居なかった証拠』と言えるだろう。
「現在の…王家の継承条件は…確か『白持ち』であり、魔力が高い事、ではなかったか?」
「公爵さまの仰る通りですな。『王家=白』と言う伝統は残さねば、王家の面子に関わりますからな」
しかし、実際のところ…恐らく『白魔法』が使えなくなった頃にはもう、『建前』としての『白魔法』を前面に押し出して、現在の『白は持ちつつも、もう一つの属性魔法を使える魔力の多い者』が継子となるカタチをとっていたのだろう。
「王族ともなれば、基本的に守られる立場だ。余程の事がない限り魔法を使うことも無い。特に我らが四大公爵家が、『それぞれの属性で強い力を行使できる者』と定められて以降は戦場に出ることも無かっただろう」
「さようにございますな」
『伝説』は『伝説』としてのみ伝える事で、王家の求心力を強めるために『特別であり、稀少な魔法』と位置付けた。使えない事などおくびにも出さず。
まぁ、実際困る事はあまり無かったようだが。
「…私はともかく、曽祖父の時代までは幾度となく戦場へ駆り出されていた事を考えると…上手く回っていたのだとしても幾らか腹立たしい気分だな。まぁそこはいい。…で? 本題は何だ? あの坊ちゃん殿下のため、と言うのは建前だろう?」
薄氷の瞳を細めるようにこちらを伺う様は、獲物を追い詰める獣のようだ。
「…今回、アメリア・ルデバラン侯爵令嬢の発動した未知の魔法のせいで、『白魔法』に注目が集まってしまった事で…現在王家において唯一『白』を発現しているシリス殿下が『白魔法』を何とか会得するためにノア嬢を巻き込もうとしているのはお察しの通りです」
「…まぁ、それはわかる。だが、今の時点ではあの女の属性色は『赤』だと明確に示されたことで落ち着いたんじゃ無いのか? ついでに『白魔法を語る事は王家に対して不敬なのでは』という『囁き』を撒いたと聞いているが…」
『白魔法』が使えない現王家側からしたら、実物を見せる事は出来ない。だからこその『処置』が施され、シリス殿下の心情はさて置いて、現状、一応の落ち着きは見せている。
しかし…王家の本当の目的は…
「…ついでに帝国への牽制として…『白魔法』を復活させる事が出来れば御の字…と言うところか?」
…あぁ、どうしてこの方を敵に回したんですか、陛下ーーー
ーーーーーー
中間管理職で胃が痛いおじいちゃんです(笑)
本来『監視』と言うか、『ノア』の『価値』を報告するためです。ノアが『やらかす』たびに駒にしたい王家と、やんのか、コラ、とばかりに暗雲背負うパパンとの攻防で寿命縮みそう(笑)
それと、今みたいな情報化社会じゃ無いから『伝説』や『歴史』は権力あれば作れる。
71
お気に入りに追加
3,228
あなたにおすすめの小説

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。


転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる