他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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人生の黒歴史は大体学生時代に生産される

《許せない気持ち》

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  《アルノルト視点》

「やぁ。お邪魔してるよ」
「…シリス殿下」

 姉さまの様子がおかしくなって二日。姉が居ないだけで、邸は火が消えたように静かだ。普段どれだけうるさいかがよくわかる。

「何だか変な噂が出回ってるようだね」

 まぁ私としてはどうでも良いんだけど、といつもの胡散臭い笑顔を浮かべるこの王子は本当に得体が知れない。

「今ノアは殿下には会わないぞ」

 兄上が横から口を出す。
 『殿下には』と言ったが…僕たちも今の姉と話す事は出来ない。

「おや、残念だな。ぜひ意見を聞きたかったのに」
「意見?」
「あぁ。私は噂の真偽はどうでも良いんだけどね。当事者である彼女…何ていう名前だったか…まぁいいか。その子がね、面白いんだ」

 聞きたくもないのに話を続けていくこの王子に、姉じゃなくても『帰って!』と言いたくなる。今うちはそれどころじゃないんだよ。

「その子、この前魔法師が魔法を行使する所を見せてもらったらしくてね。そしたらこれまで一度も魔法を使った事がないにも関わらず…赤の属性の魔法を行使したらしい」

 しかも、見せてもらったものとは別の技をーーー

 王子の言葉に兄も僕も驚いた。基本的に魔法は属性色を鑑定し、その属性にあった魔法の発動方法を教えられた上で実践して初めてその属性が馴染み、使えるようになる。
 基本の手順を踏む事なく、誰にも教えられていない魔法を行使する。それは…

「どうだい? 面白いだろう? それに、型にハマらないところがノアに似ていると思ってね。ぜひ彼女の意見も聞きたいと思って足を運んだんだが…会わせてもらえないかい?」

 こいつぶん殴って良いかな、と思ってしまうのは仕方ないと思う。不敬とか言ってられない。
 何故、姉さまが悪し様に言われる元凶の話をわざわざ持ってきたんだ。
 僕が怒りで震える拳を必死に抑えていると…低く…全く温度を感じない声が響いた。

「…ノアは殿下には会いません。そして、殿下がその女に興味をお持ちになるのも関係を結ぶのも勝手ですが…」

 金輪際、我が家には関わらないでいただきたいーーー

 父の、今まで聞いたことのない声に僕も兄も驚いたが…一番驚いていたのは殿下だろう。今まで何をしてもため息一つで流していた父からの完全なる拒絶。
 すっかり馴染みになってしまっている侍従も護衛も驚きのあまり反論さえ出来ないようだ。

「お帰りはあちらです。レイノルト、アルノルト、こっちへ来なさい」

 立ちすくむ王子たちをその場に残し、僕たちは父について執務室へと足を進めた。



「さて…お前たちに聞きたいのは、学園で何が起こったかだ。大体は把握しているが、詳しい話を聞きたい」

 僕と兄は顔を見合わせ…兄が口を開いた。

 兄は姉が入学してからの事を話し始めた。まぁ僕が入学するまでは特筆する事は無かったみたいだけど。あ、図書室で見つけた『プラネタリア魔法大全』を読んで、僕たちに教えた魔法が強すぎることに気づいて、家に帰った瞬間『正直すまんかった!』と叫んだ事は覚えている。
 しっかりしているようで肝心な部分が抜けている姉である。

 そして…僕が入学してやらかして…つられて兄上がやらかして…無理矢理表舞台に引っ張り出された姉が『無色無能』のレッテルを貼られてーーー

「…『無能』と言われようが変な醜聞を流されようが、恐れられようが、ノアは特に気にした様子もなく飄々としてた。たまにやりすぎだろ、って言うくらいやり返してたし。だから…何で今回に限って…」

 兄上の疑問は僕の疑問でもある。

「…お前たちには…話していなかったからな」

 気分も良くないし、何より広められない話だからなーーー

 そこで、父から聞いた、姉の過去。
 父と、今は離縁した母との結婚の内情、そして叔父との不貞。離宮での姉の生活。そこでの姉の扱い。

 じゃあ、今流されている噂は…

 怒りで目の前が赤く染まったーーー
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