他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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人生の黒歴史は大体学生時代に生産される

パワーアップしたんやで

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 私は優雅に(見えるように)お茶を一口飲み、お菓子を一つ口に運ぶ。
 チラリと上げた視線の先には…

 木の幹に張り付く小さな黒いトカゲ。

 チョロチョロと上下に行ったり来たりしている。
 うむ。トカゲだ。どっからどう見てもトカゲだ。
 うんうん、と小さく頷いた私の横に、いきなり現れる人影。

「へぇー。すごいね。リアルさが増したんじゃない?」

 お茶を飲んでいたら間違いなく噴いていた。淑女としてあるまじき事になる所だった。マジ危険。

「…殿下」
「相変わらずだなぁノア嬢は。シリスって呼んでよ」

 ぜってぇ嫌だわ。

 何でこうもしょっちゅう湧くんだこの王子はーーー






「刮目して見るがいいですよナイスミドルさん! 私は新技を会得しました!」
「お前本当隠さなくなったな、俺の呼び方」

 もはや俺の本名忘れてんじゃねぇのか…? とぶつくさ言ってるナイスミドル。大丈夫、ワスレテナイヨ、多分。

「で? 新技ってどんなのなんだ?」
「この前みたいな影で作ったリアルカカシとかじゃないでしょうね?」

 ワクテカを隠さないお兄さま。最近ツンが激しいアルくん。姉ちゃん寂しいよ。

「ふふふ…今までの私とは一味も二味も違いますよ…。さぁ! 目ん玉かっぴらいてご覧なさい! その名も…」

 『影動物!!』 テッテレー!!

 私の足元に黒い猫・カラス・ヘビが現れた。

「ほらほら! どうですか、このリアルな動き! 実物とっ捕まえてちょー観察したんですから!」

 マジ大変だったんやで捕まえるの!
 ヘビはトグロを巻き、カラスは羽ばたき、猫は「よっ!」とばかりに招き猫ポーズをした。

「…待て、猫はおかしい」
「気のせいです可愛いから許されます」

 ふははは皆この新技に釘付けだ! ドヤ顔も捗るというモノだ。ただ…

「難を言うと…手触りがねぇ…」

 影であるからか技術が足りないからか、はたまた魔力の問題かは謎だが…

「もふもふしてない猫とふわふわしてない鳥は…ちょっとねぇ…」

 アルくん姉ちゃんのライフ削って楽しいかい…?

「手触りがぬるっとしてんな…。哺乳類と爬虫類の感触が同じとか…やべぇ」

 お兄さま、私のライフはもうゼロよっ…!

「いってぇ! おいこの猫パンチしてきやがったぞ!」

 ナイスミドル氏、言い忘れてましたがコントロールは自在です☆

 改良の余地はあるけども、すげぇ新技だろ? な? だから…


 誰か褒めろよぉぉぉおーーーーっ!!!


 という、私の魂の叫びに返事はなかった…。







「何か用事がございましたか…?」
「用がなければ話しかけちゃダメなのかな? 私は君と話したいんだけど」

 ダメに決まってんだろ。おい勝手に向かいに座るんじゃねぇわ。王族とお近づきとかマジ無いっつーの。変に注目浴びて『黒バレ』したらどうしてくれるんだよこちとらひっそりコッソリ目立たない、を信条にしてるんだから近づかないでいただけますかねぇ!

「やだ」
「心の声出ちゃってるよ」

 あははじゃねーわ。あっ、側近さんに睨まれた。睨むくらいなら持ってってくれませんかねぇ、この面倒王子を。好きで近づいてるんじゃ無いんですよ!

 側近さんに目で訴えていると、王子は笑いながら席を立った。そして私の横を通り過ぎざま…周りに聞こえない程度の声で呟いた。

「私、まだ許してないんだよねぇ…『新技』を教えてもらえなかった事…」

 『君の事』は何でも知りたいと思ってるのにさーーー

 残念そうな声音と表情で、そう言う王子。側から見れば口説いている女性に袖にされて拗ねているように見えるかも知れない。

 だが…その碧い瞳に熱は無い。


 ただただ、『私』という『モノ』を観察するあの目が…私は苦手だーーー
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