他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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人生山あり谷あり砂丘あり

周りは大体無責任

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「はいどーぞ。ちなみに毒味はいりますかー?」

 私にハーブの知識などないから、自家製ハーブティーとかいう高尚なモノは無い。だが、公爵家御用達のいい茶葉だと思う。淹れ方適当だけどな(笑)

 私の差し出したカップを手に取り、ゆるく首を振って口をつけたお兄さま。あ、熱かった? 熱いから気をつけて!(遅い)

 二人でゆるゆるお茶を飲む。今この空間には私とお兄さまだけ。無言の時間はお茶を飲み終わってもしばらく続いた。

「…………この前…叩いてごめん…」

 そろそろ沈黙に耐えらんないわー、とソワソワしていたところに小さく落とされる謝罪。

 やだ、この子も素直ないい子だわ☆

「いいんですよー。黒魔法はやべぇヤツってわかってますから。ビビって当然でしょ」

 あの時は手をはたき落とされた事より、ナイスミドルの慌てた顔の方が印象深いのよ。面白すぎて。

「…っ! ちがっ…そうじゃなくて…! そのっ…」

 弾かれたようにこちらへ向けられた顔には焦りが浮かび、口を開けども言葉が出ないのか、閉じて、開いてを繰り返す。そうして…泣き出した。

 お子ちゃまは、パニくると泣く。知ってた。

 …美少年を号泣させる幼女。絵面が酷い。
 はーいよしよーし。泣かんでもえぇんやでー。
 
 背中ぽんぽんしながら泣き止むのを待ちました。




「…僕…青の魔法を上手に使えないんだ…」

 タオルをぬらして顔を拭いてやると、小さくしゃくり上げながらもお兄さまはそう言った。

「…………ふーん?」

 え? 何でそんな恨みがましい目で見るんです? 「ふーん」以外の返事あります?

「つ…使えないんだぞ! 父上の子なのに!」
「へぇーーー」

 だから何でそんな以下略。

「~~僕は! 父上の血を引いてるのにっ…ポーラス家の後継ぎなのにっ…青の魔法が使えないんだ! そんなのっ…そんなのダメだろっ!」

「え? ダメなの? 何で?」

 あっ、頭掻きむしってるわ。ハゲるよ? きぃーっ!って、サルかよ(笑)

「そもそも、お父さまの子だからって、青の魔法が使えないといけないの? ポーラス家は皆青魔法使えないとダメなの?」

 わっかんねぇわー。某ナイスミドルとか、どんな家かとか知らんけど身体強化脳筋魔法しか使えないんじゃね?
 私なんてやべぇ認定待ったなしの黒魔法だしな!

「だって! あいつは…! アルノルトはいっぱい使えてる!!」
「うちの子優秀なんですよ☆」

 あっ、また泣いちゃった。めんごめんご、私正直者なの☆

「…だからっ…! 僕よりアルノルトの方が後継ぎにふさわしいって…先生が言うんだ…!!」

 …うーん、大体皆さま無責任に言いたいこと言っちゃうんですよねぇ。でも…

「とりあえず、その先生はしばき倒してクビにしてもらいましょ☆」




「ダメですよお父さま。ちゃんと人見て採用しなきゃ」
「面目次第も無い…」

 召喚したお父さまに、お兄さまのお悩みを伝え、教師の解雇をお願いする。ちなみにお兄さまは泣き疲れてお休み中。
 …私の膝で。幼女の膝枕…貴重やで!

「そもそも、お兄さまの属性色は何なんです?」
「青と赤だ。赤はフレイア…母親から受け継いでいる。フレイアの家系は赤の第一人者の系統だからな」
「じゃぁ赤の方が強く出ているのでは? 二色持ちはどちらかが強く出るんでしょう?」
「それは考えたんだがな…やはり青の方が強い」

 だからこそ、余計に悩んでしまうんだろうーーー

 そう言ってお兄さまの頭を撫でるお父さまは、とても優しい顔をしていた。



 いいなぁ…って、ちょっと思ったのは気のせいと言うことにしておきたい。
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