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人生山あり谷あり砂丘あり
子どもには子どもの事情がある
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「ハァ~どうしたどうした~っと」
今日も元気に畑仕事ですよー。
今ではすっかり立派になった私の畑。…ちょっと広げ過ぎた気もする…。飢えること無くなったから正直ここまで要らんのだが…習慣とは恐ろしい…。
「ねえさま! お水まきますか?」
「まきますよー! じゃぁこの前教えた通りに、バケツのお水を雨みたいに降らせてみようかー」
「はーい!」
えーい! というかけ声は基本らしい。可愛いからやめさせられない。そのうち無くなるやろ、多分。無責任? 聞こえなーい。
「…っ! 冷たっ!!」
…アルくん、ちょっと畑以外のところまで水撒きしちゃったもよう。
おぉ、水も滴る美少年になっとりますな、お兄さま。あ、こらこらアルくん、追い討ちかけないのよ。ソレはお野菜じゃなくて人間さまですからねー。
「アルノルトー。こっちのじゃがいもにお水お願いしまーす」
「はーい!」
うんうん、素直ないい子に育っとりますなぁ。
「…風邪を引いてはいけませんから、着替えに戻られた方がよろしいかと。お嫌で無ければこのタオルをお使いください。多少はマシになるでしょう」
私用に準備していたタオルを差し出すと、ぬれネズミなお兄さまはビクッとした。あらあら、すっかり怖がられちゃったわー。さっすが天下に名高い黒属性(笑)
「ねえさま! おわりました!」
「そっかそっかぁ。よく頑張ったねー! アルノルトはエライなぁ」
よーしよしよし、とアルノルトを撫でる。気分はムツゴ○ウさんだ。
びしょぬれのまま、ぼんやりとこちらを見ているお兄さまの首に、隙アリ! とタオルをかけてからアルノルトの手を引いて踵を返した。
「…あのっ…! まっ…まっ…て…」
小さな声だったが、耳に届いた静止の声。振り向いた先、俯いたまま、所在なげに佇む姿は迷子の子どもそのもので…。
「…アルノルトくんにお使いをお願いしたいのですが…でっきるっかなー?」
「おつかい?! まかせてください! ちゃんとできますよ!」
ふんすっ! と気合の入ったアルノルトの手に、小さめの籠を乗せ、そこに収穫した野菜の一部を入れる。
「これを、迷わずに調理場に届けられるかなー?」
「できます!」
いってきまーす! と元気に駆けていくアルノルトに手を振って、私は美少年に向き合った。
「…レイノルトは座学はとても優秀なんだが…魔法は余り上手く使えなくてね」
困ったような笑みを浮かべてお父さまが言う。
「…魔法は気合いですよ!」
「それで使えるのはお前だけだ」
毎度のことながらナイスミドルは黙って。
こう、ズバーン!とやると影が出ます! 手を、竹刀を振るように振り抜くと、私の手の中に影で出来た鍬が現れる。うむ、良い出来。まぁコレで畑耕す事はないんだけどね。だって専用の鍬があるし。
「何をしたいかのイメージが固まれば使えるでしょう」
「何で今のフリで鍬出した?」
だからナイスミ(以下略)
「私としては、上手く発動できない事を叱るつもりも責めるつもりも無いんだがね。だが…本人的にどうにも許せないらしくてね…」
さっきより更に情けない顔になるお父さま。ナイスミドルは私の出した鍬で素振りする事で話聞いてませんアピール中。
…すみませんねぇ、うちの子有能なんですヨ☆
今日も元気に畑仕事ですよー。
今ではすっかり立派になった私の畑。…ちょっと広げ過ぎた気もする…。飢えること無くなったから正直ここまで要らんのだが…習慣とは恐ろしい…。
「ねえさま! お水まきますか?」
「まきますよー! じゃぁこの前教えた通りに、バケツのお水を雨みたいに降らせてみようかー」
「はーい!」
えーい! というかけ声は基本らしい。可愛いからやめさせられない。そのうち無くなるやろ、多分。無責任? 聞こえなーい。
「…っ! 冷たっ!!」
…アルくん、ちょっと畑以外のところまで水撒きしちゃったもよう。
おぉ、水も滴る美少年になっとりますな、お兄さま。あ、こらこらアルくん、追い討ちかけないのよ。ソレはお野菜じゃなくて人間さまですからねー。
「アルノルトー。こっちのじゃがいもにお水お願いしまーす」
「はーい!」
うんうん、素直ないい子に育っとりますなぁ。
「…風邪を引いてはいけませんから、着替えに戻られた方がよろしいかと。お嫌で無ければこのタオルをお使いください。多少はマシになるでしょう」
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「ねえさま! おわりました!」
「そっかそっかぁ。よく頑張ったねー! アルノルトはエライなぁ」
よーしよしよし、とアルノルトを撫でる。気分はムツゴ○ウさんだ。
びしょぬれのまま、ぼんやりとこちらを見ているお兄さまの首に、隙アリ! とタオルをかけてからアルノルトの手を引いて踵を返した。
「…あのっ…! まっ…まっ…て…」
小さな声だったが、耳に届いた静止の声。振り向いた先、俯いたまま、所在なげに佇む姿は迷子の子どもそのもので…。
「…アルノルトくんにお使いをお願いしたいのですが…でっきるっかなー?」
「おつかい?! まかせてください! ちゃんとできますよ!」
ふんすっ! と気合の入ったアルノルトの手に、小さめの籠を乗せ、そこに収穫した野菜の一部を入れる。
「これを、迷わずに調理場に届けられるかなー?」
「できます!」
いってきまーす! と元気に駆けていくアルノルトに手を振って、私は美少年に向き合った。
「…レイノルトは座学はとても優秀なんだが…魔法は余り上手く使えなくてね」
困ったような笑みを浮かべてお父さまが言う。
「…魔法は気合いですよ!」
「それで使えるのはお前だけだ」
毎度のことながらナイスミドルは黙って。
こう、ズバーン!とやると影が出ます! 手を、竹刀を振るように振り抜くと、私の手の中に影で出来た鍬が現れる。うむ、良い出来。まぁコレで畑耕す事はないんだけどね。だって専用の鍬があるし。
「何をしたいかのイメージが固まれば使えるでしょう」
「何で今のフリで鍬出した?」
だからナイスミ(以下略)
「私としては、上手く発動できない事を叱るつもりも責めるつもりも無いんだがね。だが…本人的にどうにも許せないらしくてね…」
さっきより更に情けない顔になるお父さま。ナイスミドルは私の出した鍬で素振りする事で話聞いてませんアピール中。
…すみませんねぇ、うちの子有能なんですヨ☆
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