30 / 83
人生山あり谷あり砂丘あり
面倒ごとは嫌いです☆
しおりを挟む
「お…お前たちなんて、僕は…僕は家族と認めないんだからなっ!」
私のご挨拶が気に入らなかったのか、ポカンとした顔からじわじわと怒りで赤くなったかと思えば、くしゃりと泣き崩れ、捨て台詞と共に泣きながら走り去って行った暫定兄。
どないせぇっちゅーんじゃ。
一緒に湧いたナイスミドルへ視線を移すと、こちらも困った表情。いや、お前が笑ったのがあかんかったんちゃう?
「ゲイルさん、主筋のご子息を泣かせたらいけないのでは?」
「いや、俺のせいじゃねぇだろ。お前のせいだろ」
いやいやそっちでしょ、いやいやいやお前だろ、いやいやいやいや…と責任をなすりつけ合っていても事態は好転しない。
「しかし…何しにいらしたんですかね、暫定兄は?」
「絶対お前のせいだわ。『暫定兄』とかめっちゃ可哀想」
いや、可哀想なの私の方じゃない? 延々物陰から睨まれて、やっと姿現したかと思ったらこっちの挨拶無視で「他人宣言」して走り去って行くとか。
「絶対私悪くなーい」
「いやいやお前のせいだわー。早よ慰めに行けよー」
解せぬ。
モデルケースの資料内での『異母兄』に関する記述は無いに等しい。それは弟についても同じだが、アルについては『青持ち』と『本邸へ引き取られる』と言う情報があった。
しかし、『異母兄』については『ポーラス家当主の息子』というだけだ。まさに存在すると言う事実のみ。
しかも、モデルケース通りに進んだ場合、『私』は後継争いを焚き付ける。いや、私はやらないけどな、そんな面倒な事。
今現在、実の両親がログアウトしてる上、アルノルトは継承権をほぼ手放した状態だから、そんな未来は来ない。来ないったら来ない。
そう分かってはいるのだが…それでも私にとって…
異母兄は、あまりお近づきになりたく無い存在である。
すでにモデルケースから外れに外れていても、なんか変な試練とか来たら嫌じゃん? 怖いじゃん?
だから出来るだけ関わらないようにしてたのにー。
私の背を押すナイスミドルに舌打ちを残して異母兄が走り去った方へと足を進めた。後ろから「今舌打ちしたろ?!」とか苦情が聞こえた気がするが気のせいに違いない。私、悪くない。
本邸の庭はクソほど広い。何と池まであるからね。錦鯉はおらんけど。その池の傍にあるガゼボのベンチで膝に顔を埋めた異母兄を見つけた。
おぉ、錦鯉じゃ無いけどそこそこデカい魚がおるわ、と、池の鑑賞をしつつガゼボに近づくが異母兄はピクリとも動かない。ついに真ん前まで来てしまったがやっぱり動かない。
仕方ないので隣に座ってみる。動かない。
こんにちはー、と言ってみる。動かない。
つんつくつん、と突いてみる。動かない。
…面倒くさくなってきた。
「…よぃやっさぁぁっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
影使って持ち上げてみました☆てへぺろ☆
「何っで慰めに行った先で余計に泣かしてんだお前はぁっ!」
無反応のお兄ちゃんを持ち上げただけなのにナイスミドルにしばかれた。理不尽。
池に放り投げた訳じゃないのにぃ、と内心ブスくれてたらも一回しばかれた。何でバレたし。
「…ごめんなさいレイノルトさま。お返事してくださらなかったからつい出来心で…」
またしばかれた。このナイスミドル、凶暴すぎない?
座り込んでいる異母兄の頭を撫でてやろうと伸ばした手を…
はたき落とされた。痛いんですけど。
私に向けられる怯えた目。
黒の魔力に対する…忌避の感情ーーー
私は跪礼をして、自室へと戻った。
私のご挨拶が気に入らなかったのか、ポカンとした顔からじわじわと怒りで赤くなったかと思えば、くしゃりと泣き崩れ、捨て台詞と共に泣きながら走り去って行った暫定兄。
どないせぇっちゅーんじゃ。
一緒に湧いたナイスミドルへ視線を移すと、こちらも困った表情。いや、お前が笑ったのがあかんかったんちゃう?
「ゲイルさん、主筋のご子息を泣かせたらいけないのでは?」
「いや、俺のせいじゃねぇだろ。お前のせいだろ」
いやいやそっちでしょ、いやいやいやお前だろ、いやいやいやいや…と責任をなすりつけ合っていても事態は好転しない。
「しかし…何しにいらしたんですかね、暫定兄は?」
「絶対お前のせいだわ。『暫定兄』とかめっちゃ可哀想」
いや、可哀想なの私の方じゃない? 延々物陰から睨まれて、やっと姿現したかと思ったらこっちの挨拶無視で「他人宣言」して走り去って行くとか。
「絶対私悪くなーい」
「いやいやお前のせいだわー。早よ慰めに行けよー」
解せぬ。
モデルケースの資料内での『異母兄』に関する記述は無いに等しい。それは弟についても同じだが、アルについては『青持ち』と『本邸へ引き取られる』と言う情報があった。
しかし、『異母兄』については『ポーラス家当主の息子』というだけだ。まさに存在すると言う事実のみ。
しかも、モデルケース通りに進んだ場合、『私』は後継争いを焚き付ける。いや、私はやらないけどな、そんな面倒な事。
今現在、実の両親がログアウトしてる上、アルノルトは継承権をほぼ手放した状態だから、そんな未来は来ない。来ないったら来ない。
そう分かってはいるのだが…それでも私にとって…
異母兄は、あまりお近づきになりたく無い存在である。
すでにモデルケースから外れに外れていても、なんか変な試練とか来たら嫌じゃん? 怖いじゃん?
だから出来るだけ関わらないようにしてたのにー。
私の背を押すナイスミドルに舌打ちを残して異母兄が走り去った方へと足を進めた。後ろから「今舌打ちしたろ?!」とか苦情が聞こえた気がするが気のせいに違いない。私、悪くない。
本邸の庭はクソほど広い。何と池まであるからね。錦鯉はおらんけど。その池の傍にあるガゼボのベンチで膝に顔を埋めた異母兄を見つけた。
おぉ、錦鯉じゃ無いけどそこそこデカい魚がおるわ、と、池の鑑賞をしつつガゼボに近づくが異母兄はピクリとも動かない。ついに真ん前まで来てしまったがやっぱり動かない。
仕方ないので隣に座ってみる。動かない。
こんにちはー、と言ってみる。動かない。
つんつくつん、と突いてみる。動かない。
…面倒くさくなってきた。
「…よぃやっさぁぁっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
影使って持ち上げてみました☆てへぺろ☆
「何っで慰めに行った先で余計に泣かしてんだお前はぁっ!」
無反応のお兄ちゃんを持ち上げただけなのにナイスミドルにしばかれた。理不尽。
池に放り投げた訳じゃないのにぃ、と内心ブスくれてたらも一回しばかれた。何でバレたし。
「…ごめんなさいレイノルトさま。お返事してくださらなかったからつい出来心で…」
またしばかれた。このナイスミドル、凶暴すぎない?
座り込んでいる異母兄の頭を撫でてやろうと伸ばした手を…
はたき落とされた。痛いんですけど。
私に向けられる怯えた目。
黒の魔力に対する…忌避の感情ーーー
私は跪礼をして、自室へと戻った。
77
お気に入りに追加
3,228
あなたにおすすめの小説

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪
naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。
「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」
そして、目的地まで運ばれて着いてみると………
「はて?修道院がありませんわ?」
why!?
えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって?
どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!!
※ジャンルをファンタジーに変更しました。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる