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人生山あり谷あり砂丘あり
面倒ごとは嫌いです☆
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「お…お前たちなんて、僕は…僕は家族と認めないんだからなっ!」
私のご挨拶が気に入らなかったのか、ポカンとした顔からじわじわと怒りで赤くなったかと思えば、くしゃりと泣き崩れ、捨て台詞と共に泣きながら走り去って行った暫定兄。
どないせぇっちゅーんじゃ。
一緒に湧いたナイスミドルへ視線を移すと、こちらも困った表情。いや、お前が笑ったのがあかんかったんちゃう?
「ゲイルさん、主筋のご子息を泣かせたらいけないのでは?」
「いや、俺のせいじゃねぇだろ。お前のせいだろ」
いやいやそっちでしょ、いやいやいやお前だろ、いやいやいやいや…と責任をなすりつけ合っていても事態は好転しない。
「しかし…何しにいらしたんですかね、暫定兄は?」
「絶対お前のせいだわ。『暫定兄』とかめっちゃ可哀想」
いや、可哀想なの私の方じゃない? 延々物陰から睨まれて、やっと姿現したかと思ったらこっちの挨拶無視で「他人宣言」して走り去って行くとか。
「絶対私悪くなーい」
「いやいやお前のせいだわー。早よ慰めに行けよー」
解せぬ。
モデルケースの資料内での『異母兄』に関する記述は無いに等しい。それは弟についても同じだが、アルについては『青持ち』と『本邸へ引き取られる』と言う情報があった。
しかし、『異母兄』については『ポーラス家当主の息子』というだけだ。まさに存在すると言う事実のみ。
しかも、モデルケース通りに進んだ場合、『私』は後継争いを焚き付ける。いや、私はやらないけどな、そんな面倒な事。
今現在、実の両親がログアウトしてる上、アルノルトは継承権をほぼ手放した状態だから、そんな未来は来ない。来ないったら来ない。
そう分かってはいるのだが…それでも私にとって…
異母兄は、あまりお近づきになりたく無い存在である。
すでにモデルケースから外れに外れていても、なんか変な試練とか来たら嫌じゃん? 怖いじゃん?
だから出来るだけ関わらないようにしてたのにー。
私の背を押すナイスミドルに舌打ちを残して異母兄が走り去った方へと足を進めた。後ろから「今舌打ちしたろ?!」とか苦情が聞こえた気がするが気のせいに違いない。私、悪くない。
本邸の庭はクソほど広い。何と池まであるからね。錦鯉はおらんけど。その池の傍にあるガゼボのベンチで膝に顔を埋めた異母兄を見つけた。
おぉ、錦鯉じゃ無いけどそこそこデカい魚がおるわ、と、池の鑑賞をしつつガゼボに近づくが異母兄はピクリとも動かない。ついに真ん前まで来てしまったがやっぱり動かない。
仕方ないので隣に座ってみる。動かない。
こんにちはー、と言ってみる。動かない。
つんつくつん、と突いてみる。動かない。
…面倒くさくなってきた。
「…よぃやっさぁぁっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
影使って持ち上げてみました☆てへぺろ☆
「何っで慰めに行った先で余計に泣かしてんだお前はぁっ!」
無反応のお兄ちゃんを持ち上げただけなのにナイスミドルにしばかれた。理不尽。
池に放り投げた訳じゃないのにぃ、と内心ブスくれてたらも一回しばかれた。何でバレたし。
「…ごめんなさいレイノルトさま。お返事してくださらなかったからつい出来心で…」
またしばかれた。このナイスミドル、凶暴すぎない?
座り込んでいる異母兄の頭を撫でてやろうと伸ばした手を…
はたき落とされた。痛いんですけど。
私に向けられる怯えた目。
黒の魔力に対する…忌避の感情ーーー
私は跪礼をして、自室へと戻った。
私のご挨拶が気に入らなかったのか、ポカンとした顔からじわじわと怒りで赤くなったかと思えば、くしゃりと泣き崩れ、捨て台詞と共に泣きながら走り去って行った暫定兄。
どないせぇっちゅーんじゃ。
一緒に湧いたナイスミドルへ視線を移すと、こちらも困った表情。いや、お前が笑ったのがあかんかったんちゃう?
「ゲイルさん、主筋のご子息を泣かせたらいけないのでは?」
「いや、俺のせいじゃねぇだろ。お前のせいだろ」
いやいやそっちでしょ、いやいやいやお前だろ、いやいやいやいや…と責任をなすりつけ合っていても事態は好転しない。
「しかし…何しにいらしたんですかね、暫定兄は?」
「絶対お前のせいだわ。『暫定兄』とかめっちゃ可哀想」
いや、可哀想なの私の方じゃない? 延々物陰から睨まれて、やっと姿現したかと思ったらこっちの挨拶無視で「他人宣言」して走り去って行くとか。
「絶対私悪くなーい」
「いやいやお前のせいだわー。早よ慰めに行けよー」
解せぬ。
モデルケースの資料内での『異母兄』に関する記述は無いに等しい。それは弟についても同じだが、アルについては『青持ち』と『本邸へ引き取られる』と言う情報があった。
しかし、『異母兄』については『ポーラス家当主の息子』というだけだ。まさに存在すると言う事実のみ。
しかも、モデルケース通りに進んだ場合、『私』は後継争いを焚き付ける。いや、私はやらないけどな、そんな面倒な事。
今現在、実の両親がログアウトしてる上、アルノルトは継承権をほぼ手放した状態だから、そんな未来は来ない。来ないったら来ない。
そう分かってはいるのだが…それでも私にとって…
異母兄は、あまりお近づきになりたく無い存在である。
すでにモデルケースから外れに外れていても、なんか変な試練とか来たら嫌じゃん? 怖いじゃん?
だから出来るだけ関わらないようにしてたのにー。
私の背を押すナイスミドルに舌打ちを残して異母兄が走り去った方へと足を進めた。後ろから「今舌打ちしたろ?!」とか苦情が聞こえた気がするが気のせいに違いない。私、悪くない。
本邸の庭はクソほど広い。何と池まであるからね。錦鯉はおらんけど。その池の傍にあるガゼボのベンチで膝に顔を埋めた異母兄を見つけた。
おぉ、錦鯉じゃ無いけどそこそこデカい魚がおるわ、と、池の鑑賞をしつつガゼボに近づくが異母兄はピクリとも動かない。ついに真ん前まで来てしまったがやっぱり動かない。
仕方ないので隣に座ってみる。動かない。
こんにちはー、と言ってみる。動かない。
つんつくつん、と突いてみる。動かない。
…面倒くさくなってきた。
「…よぃやっさぁぁっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
影使って持ち上げてみました☆てへぺろ☆
「何っで慰めに行った先で余計に泣かしてんだお前はぁっ!」
無反応のお兄ちゃんを持ち上げただけなのにナイスミドルにしばかれた。理不尽。
池に放り投げた訳じゃないのにぃ、と内心ブスくれてたらも一回しばかれた。何でバレたし。
「…ごめんなさいレイノルトさま。お返事してくださらなかったからつい出来心で…」
またしばかれた。このナイスミドル、凶暴すぎない?
座り込んでいる異母兄の頭を撫でてやろうと伸ばした手を…
はたき落とされた。痛いんですけど。
私に向けられる怯えた目。
黒の魔力に対する…忌避の感情ーーー
私は跪礼をして、自室へと戻った。
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