他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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間話

《狂った歯車は戻らない》

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  《セバスチャン視点》

「…公爵家と家格の合う、家付のお嬢さま…ですか…?」

 ある日父から条件に合うご令嬢を探すよう命を受けた。

「先代さまからのお達しだ。ケルヴィンさまの婿入り先となる家を早急に探せ」
「…プロキオ家のご令嬢と内々に話がついていたのでは…?」

 我がポーラス家と、プロキオ家は元々仲が良く、一人娘のフレイアさまとも幼い折から交流があり、年齢もケルヴィンさまと同じで、幼馴染としていい関係を結んでおられた。

 それに、フレイアさまとケルヴィンさまの相性は悪くなさそう…と言うか、ケルヴィンさまは恐らくフレイアさまに想いを寄せておられる。このまま婿入りなさるのが一番でしょうに。

「…プロキオ家に男児がご誕生された…。そして…」

『家の心配が無くなったのなら、わたくし、ノルディンさまに嫁ぎたいですわ!』

 家督を継がなくて良いとプロキオ家ご当主から伝えられたフレイアさまは、すぐさまポーラス家に…ノルディンさまに嫁す事を望まれた。

 ーーーフレイアさまは…ノルディンさまを好いておられたのか…。



「何故…! 何故ですか?! フレイアは…フレイアは俺の婚約者ではなかったのですか!?」
「内々に打診はしていたが、はっきりと決まっていたわけでは無い。それに、フレイア嬢が後継ぎでは無くなった以上、お前とは縁がなかったという事だ」
「婿入りでなくとも、俺に嫁いでもらう事は出来るはずです!」
「今、早急にお前の婿入り先を探している。決まり次第今度はすぐに婚約を結ぶ」
「お祖父さま…! 何故…俺はっ…俺は、兄上の役に立てるよう努力して来ました! 妻を娶ったからと言って公爵家の後継を名乗るつもりはありません…! ですから…!」

「くどい。お前は婿入りする事で家を出てもらう。私はお前にポーラスを名乗らせたく無いのだ」

 ーーー黒持ちのお前は、我が家系に相応しく無いからな



 私が、先先代さまが『黒』をとことん嫌っておいでだったと知ったのはこの時だった。父は知っていたようだが、表立って行動される事は無かったため、気づけなかった。
 後々思い返してみれば、一つ違いで、能力的にも遜色なかったご兄弟なのに、ノルディンさまを後継に決めるのも早かったのは…『黒持ち』であるケルヴィンさまに継がせるのを厭うたからだったのだろう。

 きっと…この時からケルヴィンさまは…壊れてしまっていたのだろう。

 その後時を置かずに先先代さまが亡くなり、婿入りの話が消えても、ケルヴィンさまは縁談を断り続けた。



 今回押し付けられたノルディンさまのご結婚に関しての関与は無かったと思うが…他国からの姫に取り入ったのは…先先代さまへの復讐のためだったのだろう。

 『黒持ち』をポーラス家に入れるというーーー






「セバスチャンさん、キュウリたべます?」
「これはこれは立派なキュウリですねぇ。ですが、ノアさま…齧りながら歩くのはレディとしていただけません。…いえ、その場で座ればいいというわけでも無いのですよ」

 えぇ~…と、不服そうな顔をするノアさまは、『黒魔法』を使って自身の半分はあろうかと言う籠を背負っている。

 黒い髪と、紺藍の瞳ーーーケルヴィンさまによく似た色合いを持つ子ども。

「アルのりにゅうしょくようはべつにとりわけてあるので、ここにあるのはセバスチャンさんたちでわけてください」
「何と、それはありがとうございます。皆も喜ぶでしょう」

 籠を私に手渡すと、食べきれていないキュウリをしばし眺め…ぺこりと頭を下げて廊下を歩いて行く背中をこっそり尾ける。あ、やっぱり見えないところまで行って食べながら歩き始めましたね。早急に淑女教育が必要なようですな。



 ケルヴィンさま…あなたの思惑通り、『黒持ち』が『ポーラス家』に入りました。

 先先代さまに囚われ過ぎたあなたを慮れなかった私たちには、何を言うことも出来ません。
 ですが…


 あなたの思惑とは違った方向で、『ポーラス家の黒持ち』は世間に知られていく事と思いますよーーー
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