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試練の多い人生を歩むらしい

《娘…?あれ?息子も…?》

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 《ノルディン視点》

「…ノアは…お前の子じゃ無い。『黒』を発現した」

 泣きそうな顔でそう告げたゲイルを、少し不思議な気持ちで眺めたのを思い出した。


 私の前に現れた、同じ髪色を持つ幼児は…私を『父』とは呼ばなかったーーー






 前当主である父が、母と共に事故で身罷ったのは6年前の事だ。
 当時から次期公爵として教育を受けていたため、引き継ぎなどに困ることもなかったし、妻であるフレイアを既に娶っていた事もあり、特に混乱は起こらなかった。
 三年前には息子のレイノルトも生まれ、一片の憂いも無い日々が続くと信じていた。

 ーーーフレイアが急死するまではーーー

 出産のため実家であるプロキオ家へと戻っており、産後も体調を崩したと言う事でこちらへ戻らず引き続き静養していたため、一報を聞いて駆けつけた時には彼女はもう棺の中で固く目を閉ざした人形のようになっていた。

 半狂乱の私を、父の代から領の騎士団長を務めてくれているゲイルが何とか抑え込んでくれたが、そうでなかったら周りにいた人間を手当たり次第に殴り倒し凍らせてしまったかもしれない。

 失意のまま、レイノルトと共に領地へと戻って彼女を埋葬した。

 その後、何もやる気が起こらず無為に過ごしているところへいきなり王城から呼び出しがかかった。

 確かにポーラス家は王家と縁深いが、祖父の代辺りからは少し距離を置いている。さらにこんな状況の私を呼び出すとは何を考えているのか。
 業腹ではあるが、さすがに無視するわけにもいかないため、しぶしぶ足を運んだが…今にして思う。何を言われようとも、この地位を返上することになろうとも、行くべきではなかった。

 まさかそこでいきなりダニエラと婚姻させられるなどと、誰が予想できたと言うのかーーー


 初夜というのも烏滸がましい、薬を使われ、朦朧としている私を王城の一室へダニエラと共に閉じ込め、既成事実を作り上げると、用は済んだとばかりに帰宅を許された。
 まとわりつくダニエラを無理やり離宮へと押し込み本邸へ戻った私はそのまま寝込んだ。
 途切れ途切れになったが、王城での出来事を伝えると、セバスチャンとゲイルは激怒し、事の裏側を探ろうとあちこちへ手を回してくれたが、どれも確証を得る事ができないまま時間だけが過ぎていった。

 そんな時にもたらされたダニエラの出産報告。

 知った事かと思ったが、生まれた子どもに罪はない。だが心情的にはやり切れない部分が大きく、乳母だけ送って見ないフリを決め込んだ。

 しかし、その後、弟であるケルヴィンに似た男を離宮付近で見かけた、という報告を受けた事で、見て見ぬフリも出来なくなった。

 私を心配したのだろう、ゲイルが離宮の内情を調べる役を請け負ってくれた。まぁ、下手な者に探らせて情報が洩れるのを防ぎたかったのもあるのだろうが。

 …そこから先の報告は…

 何だかよく分からないモノが増えていった。

 私が一応『娘』として認めた子どもは、どうにもおかしな子らしかった。

 離宮から完全に追い出され、片隅の庭師小屋で乳母として完全にアウトだろう子持ちダメ女に虐待されているにも関わらず、自力で『身体強化』発動して離宮から食べ物掻っ払って来てる?
 クソ乳母とその娘を撃退しつつ、食べ物もうまくちょろまかしてる?
 畑作りするから苗寄越せ? え? ちゃんと収穫出来るまで育てたの?

 …一体コレは何の報告なんだろう…? 対象は幼児だよね?

 ゲイルからの報告が楽しみになって来た頃…目を瞑り、気づかないフリをしてきたソレが…ついに現実のモノとして突きつけられた。

 ーーーもう見逃すことはできない。

 すぐさまケルヴィンに追手をかけ、王家へ奏上、離縁の手続きをするよう迫った。国王はそれでも渋ったが、今回はこちらも無手で来たわけでは無い。集めた証拠を突きつければ、やっとのことでこちらの要求をのんだ。

 そして…

 会い見えた娘は、私を『公爵さま』と呼び…何故かもう一人幼児が増えていた。

 …もう訳がわからないよ…。
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