他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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試練の多い人生を歩むらしい

姉弟のファーストコンタクト

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「…コイツらマジクソすぎじゃね…?」

 綺麗に整えられた離宮の奥まった一角。その庭の植え込みの陰にいるにも関わらず聞こえてくる赤子の泣き声。
 火がついたように泣き叫ぶその声を宥める声は一切聞こえない。

 それもそのはず。この部屋に大人は誰もいないのだから。



 キッカケは食料調達に離宮の調理場へ忍び込んだ時だ。屋敷に戻ろうとした時に聞こえてきたメイドの会話だった。

「…もー、本当、アルノルト坊っちゃまのうるさい事! 全っ然泣き止まないんですもの。しかもよくミルクを吐き戻すせいで洗濯物が増える一方よ」
「全くだわ。奥さまもお生まれになってすぐは『後継ぎが生まれた』って大喜びしてらしたのに、今では見向きもなさらないし」
「お世話係に雇った人ももうお手上げって言ったらしいじゃない? そういえば最近見ないけどどうしたのかしら」
「さぁ? クビにでもなったんじゃない? それよりさぁ…」

 くだらない会話は続いていたが、それ以上聞く気にはなれず、その日は屋敷に戻った。

 しかし、メイドたちの話は頭から消える事は無かった。

 次の日、朝から離宮へと向かい、その周りを歩けば弟の部屋はすぐにわかった。
 窓が閉まっているにも関わらず、外まで聞こえる泣き声。コッソリと室内の様子を伺うも、やはり誰もいない。

 その日一日様子を見たが、数回ミルクを飲ませるためとオムツを替えに下働きであろう若い女が来たのみで、それ以外は泣こうが喚こうが…誰も来なかった。

 この後三日ほど同じように様子を伺ったが、全く同じだった。

 ーーーもぅ、我慢ならなかった。



 植え込みの陰から出て、裏口から離宮内に忍び込むと弟の部屋へと急ぐ。泣き声が聞こえるので迷う事はない。
 部屋に飛び込みベビーベッドを覗き込むと、真っ赤な顔で泣き喚く弟がいる。

「…だいじょうぶ…だいじょうぶだよ…。しんどかったな。ねぇちゃんがきたから、もうなかなくていいよ」

 ベビーベッドによじ登り、影を使って弟の身体を起こして抱きしめる。トントン、背中を軽く叩いてやると、ゲホッ…と咳き込んで吐いた。

「ありゃ、ゲップつまってたのか。そりゃくるしかったなぁ」

 シーツで私の服と弟の口周りを軽く拭いてやり、もう一度トントンとあやしてやると弟はしゃくり上げながら私をじっと見ている。

「…ねぇちゃんがおせわしてやるからな。いっしょにいこうな」

 そう言って撫でてやると、弟はようやく泣き止んだーーー






「…と、いうわけで、いまこのこをそだててるの」

「…何が『と、言うわけ』なのか全く全然理解できない上に何で幼児が幼児を育ててるんだよ…」


 弟を連れ帰って数日後、久しぶりにナイスミドルがうちにやって来た。もう来ないかと思ってたよ。
 未だ頑張って実をつけてくれてるトマトとキュウリに労いの言葉をかけつつ収穫しているところへ例のごとくふらりと現れたナイスミドルは…

 弟を影バンドでおんぶした私の姿を見て、またもその場へ崩れ落ちた。

 膝大丈夫?

 で、再起動するまで待ってると弟が日焼けしちゃうからさっさと家に入ってお茶の準備と弟用のミルクを準備する。
 ミルクを飲ませているところへやはり瀕死の人のごとくよろよろ入ってきたナイスミドルは、私と弟を見て疲れたようにソファへ座ると、今度は頭を抱えた。

 話が進まないのでこちらから先程のセリフを吐いてあげたのに、返ってきたのは上記のセリフ。

 もー、あー言えばこー言うんだからー。
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