他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類

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試練の多い人生を歩むらしい

ナイスミドルが仲間になった

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「…はー…やれやれよっこらしょ…と」

 鍬を横に置いて休憩用に設置した足に腰掛ける。おぉ、トマトがちゃんと実ったわ。頑張った甲斐があったってもんよ。
 赤く色づいたトマトを一つもいで軽く服で拭ってかぶりついた。

「…はー…ごぞうろっぷにしみわたるわー…」

「…相変わらずガキらしくないな、お前は…」

 背後からため息混じりの低い声が聞こえて、私はトマトにかじりついたまま振り返った。

「ふぁ。ふぉふぃふぁんふぉんひひふぁ」
「いやいや、何で食いついたまましゃべろうとしてんだお前は」

 もっしゅもっしゅとトマトを咀嚼している私の口周りを甲斐甲斐しく拭いてくれているナイスミドルなこのおじさんとの出会いは、半年くらい前である。

「おかげさまでトマトでおなかをみたすことができそうです。ありがとうございます」

 そう言ってぺこりと頭を下げる私を、何とも言い難い表情で眺めるナイスミドル。今日もオトコマエですね。そしてありがとう。どうしてもトマトかじると汚れるのよねー。

 私がこうして生きていられるのも、このナイスミドルのおかげなのであるーーー






「初めましてお嬢さま。私はマリアンヌと申します。この子は娘のアメリア。お嬢さまと同じ歳ですわ。ぜひ姉妹として仲良くしてやってくださいましね」

「…あぅ…」

 笑顔で告げるまだ二十代であろう女性と、その足にへばりついてこちらを威嚇してくる幼女。おばあちゃんの代わりの乳母が来るとは聞いていた。
 そりゃ一歳児がいきなりたった一人で生きていくってのは無理だから、お世話してくれる人が来てくれるのはありがたい。ありがたいけど…何か…やな予感がするんだよなぁ…。

 という、私の予感は早々に現実のものとなる。

「めーっ! こぇめーの! らめなの!」

 甲高い幼女の声は耳に触る。

「あらあら、どうしたの、アメリア? そのおもちゃが欲しいの? しょうがないわねぇ」

 私の手からガラガラをひったくり、我が子に渡す乳母。

 ここへ来てすぐ。アメリアは私と同じ部屋…というか、私に割り当てられた部屋に住まわせることになった。まぁ、最初の目的としては、まだまだ目が離せないお子ちゃま二人の面倒を見るためだったと思う。
 だが、一週間としないうちにマリアンヌはアメリアこそがこの部屋の主とばかりに、私のおもちゃや服を与えるようになり…

 さらに、私の世話もおざなりになった。

 何考えてんだこの女…と思ってはみても所詮一歳児。手も足も出せない。水のようなスープだけしか与えられず、お腹が空いても自分で調達する事も出来ない。
 対してアメリアはたらふく食べ良いものを身につけ母親に可愛がられている。
 乳母であるマリアンヌは私を「お嬢さま」と呼ぶが、敬う気持ちなどカケラも無いため、それを見て育っているアメリアも当たり前のように私よりエライと思っているだろう、多分。

 だが、このままでは餓死する。生後一年と数ヶ月の今死んだら消滅しそうな気がする…。

 私は必死で歩く訓練をし、離宮の調理場へと食料探して三千里しに行ったのだ。ちなみにうちの調理場を漁るとマリアンヌに叩かれる。

 わぉ暴力反対ー。

 そして、満を辞して(?)離宮の調理場へと忍び込んで…叩き出されたのだ。
 まぁそれ自体は仕方ないだろう。だって今の私の格好は質の悪い麻のワンピースだ。どっからどう見ても使用人の子どもが悪さをしに潜り込んだ図でしかない。

 痛む身体を引きずりながら、己の小ささを活かして物陰に隠れて料理人をやり過ごす。ついでに何とか確保したパンを食べる。

 …口に何か詰めていないといけなかったのだ。

 泣き声をあげるわけにはいかない。見つかるわけにはいかない。

(…もー…本当…何でこんな目に…! 恨みますよ職員さん達ーー!)

 人生始まったばっかなのにハードモード過ぎる…。と言うか、元々の設定(?)だと、私、虐げる方じゃないんですかね…?

 涙で霞む視界を見なかったことにしながらパンを咀嚼していると…

「こんなとこでちびっ子が何してんだ?」

 という低い声と共に、私の身体が浮き上がった。
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