他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

試練の多い人生を歩むらしい

真人間になるだけが正解じゃ無いんだね

　本気で泣けて来たけど、泣いたところでどうにもならない。職員さんたちも少しでも楽に乗り切れるよう頭捻ってくれてるし…とりあえず今できることをしよう。
　と、言うことで資料にまた目を落とす。

　転生するのは人間。性別はまた女らしい。
　で、生まれてすぐ母親に育児放棄される…と。

　…なるほど。初っ端から飛ばしてくるね。

　んで、父親も我関せず…か…。異母兄が居て、目の敵にされるらしいよ。さらにさらに、後に弟が生まれて、この子にも嫌われる…。

　家庭環境最悪かよ！
　そりゃ捻くれるやろ！

　…中々エゲツないところに放り込んでくれるなぁ…。そもそもこんな環境で真っ直ぐ育つようにするとか無理ゲーなんじゃ…と、唸っていたら所長さんから声がかかる。

「…今までの記録に対して試練の内容も難易度も変わります。ですが、そもそも試練にどう対処したかを見るものですから…過酷な環境に置かれているにもかかわらず、素直で可愛い子に育つ事が大事…と言うわけじゃ無いですよ」

　世の中いわゆる『聖女・聖人』とか言われるような人間ばっかりだったら怖いでしょ？　と言われて思わず納得した。

「それに、試練にはどうしても回避できないモノはありますが、対処の仕方によって次に起こるはずだったモノが消えたり回避できたりするんですよ」

　…ツリー表示かな…？

「基本的に回避不可能な試練として、出生時の環境があげられます。特に母親の育児放棄は変えられません。ですが、ここから先…例えば父親との関係などはあなた次第で変えることが出来ます」

　モデルケースと言うか…その魂の持つ性質を鑑みた上で、辿るであろう道筋が書かれているところを見ると…

「…母親に相手にされず…捻くれて周りに当たり散らしてわがまま放題…実は父親の血を引いていないことを知って余計捻くれ、弟と異母兄の継嗣争いを焚き付け…権力を欲して王子を狙ったり、あちこちで他人さまを陥れようとして孤立無援、最終的に父親に決められた嫁ぎ先が気に入らなくて勝手に破棄して修道院…」

　…ダイジェストだけでもツライ…。

「…ちなみにですが…この方、これまでの生でも八割がた他人の恨みを買って殺されてます」

　ファーーーーーッ？！

「殺人に関してはどうしてもマイナスポイント大きくなりますから…その手段を取った人の格も落ちますが、そうなるよう誘導した方の格も落ちますからねぇ…」

　しみじみ呟く所長さんが怖い…。マジ怖い…。
　多分この『修道院』って末路も、行き着く前に暗殺とかされてると思います、じゃねーよ！

「まぁ…この展望はあくまでこのカードの持ち主がこの器に宿った場合のモノですから。あなたが入ることで後半は大きく変わるでしょう。そして、恐らく回避不可能な試練も、元の物より軽くなるなりマシになるなりすると思います」

　所長さんが少しだけ表情をゆるめた。

「あなたはこの記録の持ち主では無いし、何より記憶の一部を持って行くのですから」

　きっと、あなたなら乗り切れるハズです、と微笑む職員さんズ。
　うん…色々教えてくれたり考えてくれたり…ありがとう。すごく感謝してます。
　だけどね…お忘れにならないでくだされよ…？

　私がこんな目に遭ってんの、おたくらのせいですからね？！