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義妹が私で私が義妹
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「あなたの名前はフリージア。たまたま…たまったま優秀さが侯爵さ…じゃない、お父さまの目に留まってフィオーレ家に養子として引き取られた平民。そしてわたくしは…
プリムラ・フィオーレ
フィオーレ侯爵家の長女で、この国唯一の大公家、ヴェント家のご次男、アヴェルデ・ヴェントさまの婚約者。ここまで、よろしくて?」
「あっ、はい」
「よろしい。さすが…じゃなかった、ちゃんと聞いておられたようね。では次」
「あっ、はい」
目の前の美しいドレスに身を包んだ白金の髪の少女。ただ、彼女の前髪は長く、顔の半分を覆っているのでどのような表情をしているのかよくわからない。ちなみにその前髪の下にはこれまた分厚いレンズの眼鏡が装着されている。
「あなたは、数日前に学園の階段から落ちて怪我をしたの。で、丸一日寝込んだかと思ったら、今度は高熱を出して、目を覚ましたかと思ったら訳のわからないことを叫んで気絶した上、更に丸一日寝込んだの。そして…
目を覚ましたと思ったら…『記憶喪失』になっていた、と言うのがことの顛末よ」
「あっ、はい」
私の返事にうんうん、と頷くプリムラと名乗る少女。
「で、ここからが大事な話なのだけど…あなたは私の婚約者である彼に一目惚れされ…じゃなかった、色目を使っていたのよ」
なーにが『ぼくの可愛い人』よ。虫唾が走るわ…と、小声で言いながらギリギリと手元の扇子を握りしめるプリムラ。あっ、ピシッて音が…ヤバいんじゃございませんか…。
「なので、わたくしは思いつく限りの嫌がらせを貴女にしていたの。で、今回の階段落ちに関しても、わたくしが突き落としたのよ!」
ドヤァ…と言う顔(よく見えないけど)をするプリムラ。いや、自慢する所じゃなくない?
「で、ここからが本題ですのよ。めざわりな貴女には、学園を辞めていただきます」
「あっ、はい」
「わたくしの婚約者に色目を…ってえぇぇぇっ?! 納得早くない?!」
「えっ?」
「えっ?」
思わず無言で見つめあってしまう(しつこいようだがよく見えないけど)
「えっ…いいの? 学園…行けなくなるんだよ…? アヴェルデさまに会えなくなるんだよ…?」
「あっ、はい」
「これ大丈夫かな? 後々記憶戻った時こじれない…?」
侯爵さまにちゃんと…とか、いや、今後はもう顔合わせなければ…とかブツブツ言い出した。いや、分かってますよ。ちゃんと。
私のために、フリージアが『プリムラ』を演じてくれるんだって事をーーー
私はプリムラ・フィオーレ。フィオーレ侯爵家の長女にして嫡子。
将来は女侯爵として領地を盛り立てていくために厳しく育てられた。まぁ、勉強自体は嫌いじゃなかったし、厳しいけれど子煩悩なお父さまの一見わかりにくい愛情もちゃんも感じてましたからね。
私が8歳になった頃、婚約者が出来た。それが一つ年上のアヴェルデさまだ。
この方、とてもお顔がよろしい。びっくりするほどよろしい。8歳の私、呆気ないほどソッコーで陥落した。いや、本当仕方ないのよ、マジ顔がいいんだもん。
だがしかし…顔は良くとも…性格がものすげー悪かった。
ただ、恋は盲目とはよく言ったもので、これまでの私はその『傲慢さ』すらカッコよく見えたのだ。ヤバい黒歴史…。
で、とにかく尽くした。何言われても尽くした。女遊びされて泣いても嫌いにならなかった。
だが、女遊びに関してだけは許せなかったんだな。
でもアイツを嫌いにはなれない。
そうなるとどうなるかっていうと…
相手の女が悪いんじゃん? って言う思考になる訳よ。
いや、冷静に考えたら浮気するヤツがクソなんですけどね? そこは冷静になれないのが恋愛脳にどっぷり頭の上まで浸かってる状態なわけですよ。
で、どうするかって、イジメるんですね、相手を。
ただねぇ…私ってば小心者なんですよ。
婚約してすぐ、アヴェルデに『お前の顔、ちょっと変だな』とか言われて言い返しもできず、激ショック受けて前髪で顔隠しちゃうくらいには。
スーパーチキンなんで、正直イタズラって言っても、『わっ…わたくしのアヴェルデさまに近寄らないで…!』って忠告(超小声)したり、『おバカさん!』って書いた紙をそっと浮気相手の机に入れたり、柱の影から『コケろー、コケてしまえー!』と念を送ったり位しか出来なかったんですよね。
…え? 私めっちゃヘタレじゃない?
当然、こんなイジメとも言えないイジメでダメージを受けるような繊細な心を持っていれば、婚約者がいると知りながら浮気に興じる訳がない。逆に見せつける気満々でわざわざ私の前でアヴェルデにしなだれかかる。そしてそんな連中をアヴェルデも嬉しげに侍らせる。
何で私あんなのが好きだったんだろ(真顔)
で、こういう図々しい輩は、得てして要領もいい訳である。
浮気相手の女どもは…私がやっているのとは比べ物にならないくらい陰険なイジメを仕返して来たのだーーー
足を引っ掛けられるとか机の引き出しに剃刀仕込まれるとか空き教室に閉じ込められるとか。
いや、どう考えてもおかしかろ? 報復のレベルが違うやろ? そもそも、何で私が報復されにゃならんの? おかしすぎない?
生傷が絶えなくなった私を心配した父が、私につけた護衛兼影武者…
それが、フリージアだ。
父は、フリージアを『優秀な平民を育てて他家との縁を結ぶ』とか何とかドヤ顔で主張しながら、私の義妹という形で引き取った。
フリージアは私とよく似ている。髪も顔も背格好も。まぁ、私の顔は知られてないんだけどね、前髪で。正直本人もこんなに似てるとは思わなかったよ。自分の顔あんま見なくなってたからなー。
彼女は凄腕の女性冒険者として名を馳せている豪の者であり、私のそっくりさん。うってつけのボディガードとしてスカウトされたのだ。
そのまま同い年の義妹として学園へ通い、私の生傷は減ることとなった。
…が。ここで忘れてはいけないクソヤロウがやらかした。
そう、フリージアにもその魔手を伸ばしたのだーーー
私は荒れた。荒れに荒れた。まさか私を守ってくれるはずのフリージアに裏切られるとは、と。
いや、冷静に考えたら違うってわかるんだけどね。ダメだわ恋愛脳は。
で、フリージアに苛烈な(当社比)イジメを始めた訳だ。
例えば斜め後ろを歩いてるフリージアがぶつかるように急に止まったり(スッと避けられた)、足引っ掛けようとしたり(同じく避けられた)、紙屑投げたり(以下略)、罵詈雑言(バーカバーカって三回くらい言った)ぶつけたり…
極め付けが…階段事件だ。
死ぬかもしれないと思うほどドキドキしながら前を行くフリージアの背中を押そうとした時…
つんのめって自爆したのだーーー
そのまま落ちて(大した段数無かった)気絶して眠っている間に…私は前世を思い出した。
ちなみに某水の第三惑星の和の国でOLしてた。プリムラと混ざった当初はそりゃ混乱した。そのうち落ち着いたけど。
で、まったりベッドの上でこれまでの事を思い出した私の見解は…コレは無い、である。
まだ意識がハッキリせずぼやぼやしていた私の見舞いと称して突入して来たアヴェルデは、看病をしていたフリージアに甘い言葉を吐き散らかし、私がフリージアをいじめている事に対して憤り、きっと僕が守ってあげるからとか何とか宣い…最終的にキレたフリージアに締め出されていた。
あっちでも大した恋愛したことないけど、アレは無いわー。何でアレが好きだったの私。顔? 顔なの? でも私と混ざった今、どちらかと言うと苦み走ったワイルド系の方がいいわ。アレはもういい。
めっちゃ婚約破棄したい。
だけど、婚約って家同士の繋がりだしなー、どうしよっかなー、と考えてる内にお父さまとかが乱入して来て、ついつい記憶喪失のフリしちゃったんだよねー。
そうしたら…
次の瞬間には義妹が私に成り代わっていた、と言う訳だ。
ただ、コレね。完全に私のためなんだよね。
一昨日の夜、目が冴えちゃってちょっとテラスにでも出るか…と階段降りたら、サロンでお父さまとフリージアが話してるのが聞こえた。
『閣下。お嬢さまの記憶喪失は婚約撤回の理由になりませんか?』
『…記憶が無くともリムが嫡子である事は変わらん。そうなると…難しいな。あちらの方が家格が高いのもあってこちらからは言えんし、伝えて逆に乗っ取りに走られると面倒だ』
『向こうから破棄の言葉を引き出すしか無いですかね…』
『そうだな…これだけやりたい放題にも関わらず、あちらの家は見ないフリだ。本人が破棄を希望しない限りは難しいだろう』
『…閣下。私がお嬢さまとして学園に戻り、あのクソ…じゃなかったアヴェルデさまと周りの女どもにいちゃもん…じゃない、苦言と嫌がらせをしまくったら…取り巻き女の中のどれかと燃え上がって婚約破棄とかしてくれませんかね?』
『もうクソ野郎で構わんぞ。うーーむ…そこまで頭足りないかな…足りないか…? 足りない気がして来たな。うむ、その方法でいっちょ行ってみる?』
ダメだったら違う手考えよ、そーしよ、あ、お嬢さまは『私』として退学させちゃったらキレ散らかすんじゃ無いです?、ソレ採用!
って…超楽しそうに話してた。いいな、混ざりたい。
ちなみに、この計画、割と上手く行ったみたい。
最初のうちは『フリージア』を退学させた事にキレてすごい文句言ってたらしいけど、周りに女が居りゃ何でもいいクソはそのうち別の女の子(何ちゃって小動物系)に興味が移ったらしい。
で、『私』はその子や他の女どもをイジメまくり(怪我はさせて無い)、アヴェルデに小言を言いまくり、ついでにアヴェルデの不貞やら散財やらの証人も募って言質取れればソッコー婚約破棄出来るよう万事整えて…最終的にアヴェルデの卒業パーティーで『婚約破棄宣言』を引き出した。
その瞬間『よっしゃーーーー!』言うて書類にサインさせてその紙を掲げて学園から走って帰って来た。
裁判勝って『勝訴』って書かれた紙持って出て来た人みたいだった。
何にしても、クソと縁を切らせてくれてありがとう!
もう我が家は祭だった。そんでそこでお父さまとフリージアから『成り代わり』の話されて、『実は貴女がお嬢さまなんです!』って言われて…
いや、あの…なんかサーセン。
記憶喪失は嘘ですって…超絶言いづらくなっちゃったなーーー
プリムラ・フィオーレ
フィオーレ侯爵家の長女で、この国唯一の大公家、ヴェント家のご次男、アヴェルデ・ヴェントさまの婚約者。ここまで、よろしくて?」
「あっ、はい」
「よろしい。さすが…じゃなかった、ちゃんと聞いておられたようね。では次」
「あっ、はい」
目の前の美しいドレスに身を包んだ白金の髪の少女。ただ、彼女の前髪は長く、顔の半分を覆っているのでどのような表情をしているのかよくわからない。ちなみにその前髪の下にはこれまた分厚いレンズの眼鏡が装着されている。
「あなたは、数日前に学園の階段から落ちて怪我をしたの。で、丸一日寝込んだかと思ったら、今度は高熱を出して、目を覚ましたかと思ったら訳のわからないことを叫んで気絶した上、更に丸一日寝込んだの。そして…
目を覚ましたと思ったら…『記憶喪失』になっていた、と言うのがことの顛末よ」
「あっ、はい」
私の返事にうんうん、と頷くプリムラと名乗る少女。
「で、ここからが大事な話なのだけど…あなたは私の婚約者である彼に一目惚れされ…じゃなかった、色目を使っていたのよ」
なーにが『ぼくの可愛い人』よ。虫唾が走るわ…と、小声で言いながらギリギリと手元の扇子を握りしめるプリムラ。あっ、ピシッて音が…ヤバいんじゃございませんか…。
「なので、わたくしは思いつく限りの嫌がらせを貴女にしていたの。で、今回の階段落ちに関しても、わたくしが突き落としたのよ!」
ドヤァ…と言う顔(よく見えないけど)をするプリムラ。いや、自慢する所じゃなくない?
「で、ここからが本題ですのよ。めざわりな貴女には、学園を辞めていただきます」
「あっ、はい」
「わたくしの婚約者に色目を…ってえぇぇぇっ?! 納得早くない?!」
「えっ?」
「えっ?」
思わず無言で見つめあってしまう(しつこいようだがよく見えないけど)
「えっ…いいの? 学園…行けなくなるんだよ…? アヴェルデさまに会えなくなるんだよ…?」
「あっ、はい」
「これ大丈夫かな? 後々記憶戻った時こじれない…?」
侯爵さまにちゃんと…とか、いや、今後はもう顔合わせなければ…とかブツブツ言い出した。いや、分かってますよ。ちゃんと。
私のために、フリージアが『プリムラ』を演じてくれるんだって事をーーー
私はプリムラ・フィオーレ。フィオーレ侯爵家の長女にして嫡子。
将来は女侯爵として領地を盛り立てていくために厳しく育てられた。まぁ、勉強自体は嫌いじゃなかったし、厳しいけれど子煩悩なお父さまの一見わかりにくい愛情もちゃんも感じてましたからね。
私が8歳になった頃、婚約者が出来た。それが一つ年上のアヴェルデさまだ。
この方、とてもお顔がよろしい。びっくりするほどよろしい。8歳の私、呆気ないほどソッコーで陥落した。いや、本当仕方ないのよ、マジ顔がいいんだもん。
だがしかし…顔は良くとも…性格がものすげー悪かった。
ただ、恋は盲目とはよく言ったもので、これまでの私はその『傲慢さ』すらカッコよく見えたのだ。ヤバい黒歴史…。
で、とにかく尽くした。何言われても尽くした。女遊びされて泣いても嫌いにならなかった。
だが、女遊びに関してだけは許せなかったんだな。
でもアイツを嫌いにはなれない。
そうなるとどうなるかっていうと…
相手の女が悪いんじゃん? って言う思考になる訳よ。
いや、冷静に考えたら浮気するヤツがクソなんですけどね? そこは冷静になれないのが恋愛脳にどっぷり頭の上まで浸かってる状態なわけですよ。
で、どうするかって、イジメるんですね、相手を。
ただねぇ…私ってば小心者なんですよ。
婚約してすぐ、アヴェルデに『お前の顔、ちょっと変だな』とか言われて言い返しもできず、激ショック受けて前髪で顔隠しちゃうくらいには。
スーパーチキンなんで、正直イタズラって言っても、『わっ…わたくしのアヴェルデさまに近寄らないで…!』って忠告(超小声)したり、『おバカさん!』って書いた紙をそっと浮気相手の机に入れたり、柱の影から『コケろー、コケてしまえー!』と念を送ったり位しか出来なかったんですよね。
…え? 私めっちゃヘタレじゃない?
当然、こんなイジメとも言えないイジメでダメージを受けるような繊細な心を持っていれば、婚約者がいると知りながら浮気に興じる訳がない。逆に見せつける気満々でわざわざ私の前でアヴェルデにしなだれかかる。そしてそんな連中をアヴェルデも嬉しげに侍らせる。
何で私あんなのが好きだったんだろ(真顔)
で、こういう図々しい輩は、得てして要領もいい訳である。
浮気相手の女どもは…私がやっているのとは比べ物にならないくらい陰険なイジメを仕返して来たのだーーー
足を引っ掛けられるとか机の引き出しに剃刀仕込まれるとか空き教室に閉じ込められるとか。
いや、どう考えてもおかしかろ? 報復のレベルが違うやろ? そもそも、何で私が報復されにゃならんの? おかしすぎない?
生傷が絶えなくなった私を心配した父が、私につけた護衛兼影武者…
それが、フリージアだ。
父は、フリージアを『優秀な平民を育てて他家との縁を結ぶ』とか何とかドヤ顔で主張しながら、私の義妹という形で引き取った。
フリージアは私とよく似ている。髪も顔も背格好も。まぁ、私の顔は知られてないんだけどね、前髪で。正直本人もこんなに似てるとは思わなかったよ。自分の顔あんま見なくなってたからなー。
彼女は凄腕の女性冒険者として名を馳せている豪の者であり、私のそっくりさん。うってつけのボディガードとしてスカウトされたのだ。
そのまま同い年の義妹として学園へ通い、私の生傷は減ることとなった。
…が。ここで忘れてはいけないクソヤロウがやらかした。
そう、フリージアにもその魔手を伸ばしたのだーーー
私は荒れた。荒れに荒れた。まさか私を守ってくれるはずのフリージアに裏切られるとは、と。
いや、冷静に考えたら違うってわかるんだけどね。ダメだわ恋愛脳は。
で、フリージアに苛烈な(当社比)イジメを始めた訳だ。
例えば斜め後ろを歩いてるフリージアがぶつかるように急に止まったり(スッと避けられた)、足引っ掛けようとしたり(同じく避けられた)、紙屑投げたり(以下略)、罵詈雑言(バーカバーカって三回くらい言った)ぶつけたり…
極め付けが…階段事件だ。
死ぬかもしれないと思うほどドキドキしながら前を行くフリージアの背中を押そうとした時…
つんのめって自爆したのだーーー
そのまま落ちて(大した段数無かった)気絶して眠っている間に…私は前世を思い出した。
ちなみに某水の第三惑星の和の国でOLしてた。プリムラと混ざった当初はそりゃ混乱した。そのうち落ち着いたけど。
で、まったりベッドの上でこれまでの事を思い出した私の見解は…コレは無い、である。
まだ意識がハッキリせずぼやぼやしていた私の見舞いと称して突入して来たアヴェルデは、看病をしていたフリージアに甘い言葉を吐き散らかし、私がフリージアをいじめている事に対して憤り、きっと僕が守ってあげるからとか何とか宣い…最終的にキレたフリージアに締め出されていた。
あっちでも大した恋愛したことないけど、アレは無いわー。何でアレが好きだったの私。顔? 顔なの? でも私と混ざった今、どちらかと言うと苦み走ったワイルド系の方がいいわ。アレはもういい。
めっちゃ婚約破棄したい。
だけど、婚約って家同士の繋がりだしなー、どうしよっかなー、と考えてる内にお父さまとかが乱入して来て、ついつい記憶喪失のフリしちゃったんだよねー。
そうしたら…
次の瞬間には義妹が私に成り代わっていた、と言う訳だ。
ただ、コレね。完全に私のためなんだよね。
一昨日の夜、目が冴えちゃってちょっとテラスにでも出るか…と階段降りたら、サロンでお父さまとフリージアが話してるのが聞こえた。
『閣下。お嬢さまの記憶喪失は婚約撤回の理由になりませんか?』
『…記憶が無くともリムが嫡子である事は変わらん。そうなると…難しいな。あちらの方が家格が高いのもあってこちらからは言えんし、伝えて逆に乗っ取りに走られると面倒だ』
『向こうから破棄の言葉を引き出すしか無いですかね…』
『そうだな…これだけやりたい放題にも関わらず、あちらの家は見ないフリだ。本人が破棄を希望しない限りは難しいだろう』
『…閣下。私がお嬢さまとして学園に戻り、あのクソ…じゃなかったアヴェルデさまと周りの女どもにいちゃもん…じゃない、苦言と嫌がらせをしまくったら…取り巻き女の中のどれかと燃え上がって婚約破棄とかしてくれませんかね?』
『もうクソ野郎で構わんぞ。うーーむ…そこまで頭足りないかな…足りないか…? 足りない気がして来たな。うむ、その方法でいっちょ行ってみる?』
ダメだったら違う手考えよ、そーしよ、あ、お嬢さまは『私』として退学させちゃったらキレ散らかすんじゃ無いです?、ソレ採用!
って…超楽しそうに話してた。いいな、混ざりたい。
ちなみに、この計画、割と上手く行ったみたい。
最初のうちは『フリージア』を退学させた事にキレてすごい文句言ってたらしいけど、周りに女が居りゃ何でもいいクソはそのうち別の女の子(何ちゃって小動物系)に興味が移ったらしい。
で、『私』はその子や他の女どもをイジメまくり(怪我はさせて無い)、アヴェルデに小言を言いまくり、ついでにアヴェルデの不貞やら散財やらの証人も募って言質取れればソッコー婚約破棄出来るよう万事整えて…最終的にアヴェルデの卒業パーティーで『婚約破棄宣言』を引き出した。
その瞬間『よっしゃーーーー!』言うて書類にサインさせてその紙を掲げて学園から走って帰って来た。
裁判勝って『勝訴』って書かれた紙持って出て来た人みたいだった。
何にしても、クソと縁を切らせてくれてありがとう!
もう我が家は祭だった。そんでそこでお父さまとフリージアから『成り代わり』の話されて、『実は貴女がお嬢さまなんです!』って言われて…
いや、あの…なんかサーセン。
記憶喪失は嘘ですって…超絶言いづらくなっちゃったなーーー
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