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腐バレしたら求婚されました
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人気のない図書室の一画。今、その場の空気は凍り付いていた。
「……」
「………」
図書室という場所は基本的に静かにすべき場所ではあるが、今ここはまさに物音一つしない、時が止まったかのような静寂に包まれていた。
物音はしないが、『にこにこ』という効果音は聞こえそうな程、機嫌がよさげに笑っている王子の顔を、思わず胡乱な目で見てしまったのは仕方のない事と思って欲しい。いきなり無礼打ちとかされたくないけど、どう考えてもあっちが悪いし。
割と不敬な事を考えているのがダダもれになっている事には気づいていたが、それでもアルベール王子の機嫌は悪くなっていないようなので、レナリアは意を決して口を開いた。
「…あの…どういう事なのか…」
「私と結婚してほしいんだ」
「……」
経緯の説明やら何やらをぶっ飛ばして、同じ言葉が返ってきた。
これにはさすがにレナリアもイラッときた。王子の方へ身体を向けているため、癒しとなる訓練場は背後にある。心がどんどん荒んでいく。
「ですから…何故突然結婚などと…それに、何故私が…」
「君以外は考えられないんだ、レナリア嬢。どうか承諾してもらえないだろうか」
またもこっちのセリフに被せるように同じような言葉が返ってきた。
そろそろレナリアの忍耐も限界に近い。もう不敬罪とか構ってられない。癒しが待っているのだ。今すぐここから去って欲しい。
「あの、殿下、申し訳ありませんけど…」
「あっ、あいつら抱き合ってるー」
「っなんですってぇ?!」
光の速さで振り向いたレナリアの視線の先に、練習試合後なのか片手に剣を持ったまま笑顔で抱き合う訓練生が。
「あぁぁぁもぅサイコーかよーー!! 結婚しろーーー!!」
心の声が飛び出した。
今日一番の萌えを堪能したレナリアだったが…次の瞬間現実へと戻ってきた。…戻ってきて…しまった。
オイル切れのブリキのおもちゃのごとく、ギギギギ…と音の聞こえそうな動きで後ろを振り向くと…先程と全く変わらないキラキラエフェクト笑顔でこちらを眺めているアルベール第二王子殿下がそこにいた。
「…あの…殿下…?」
「で、私と結婚してほしいんだが。レナリア・シャンパーニュ嬢」
「…結婚云々は置いておいて、とりあえずお話を伺えますかね…」
がっくりと肩を落としたレナリアに、アルベール王子はこれ以上のクラスがあったんですか、と思わず言いたくなる程ランクアップした笑顔を向けた。
「……」
「………」
図書室という場所は基本的に静かにすべき場所ではあるが、今ここはまさに物音一つしない、時が止まったかのような静寂に包まれていた。
物音はしないが、『にこにこ』という効果音は聞こえそうな程、機嫌がよさげに笑っている王子の顔を、思わず胡乱な目で見てしまったのは仕方のない事と思って欲しい。いきなり無礼打ちとかされたくないけど、どう考えてもあっちが悪いし。
割と不敬な事を考えているのがダダもれになっている事には気づいていたが、それでもアルベール王子の機嫌は悪くなっていないようなので、レナリアは意を決して口を開いた。
「…あの…どういう事なのか…」
「私と結婚してほしいんだ」
「……」
経緯の説明やら何やらをぶっ飛ばして、同じ言葉が返ってきた。
これにはさすがにレナリアもイラッときた。王子の方へ身体を向けているため、癒しとなる訓練場は背後にある。心がどんどん荒んでいく。
「ですから…何故突然結婚などと…それに、何故私が…」
「君以外は考えられないんだ、レナリア嬢。どうか承諾してもらえないだろうか」
またもこっちのセリフに被せるように同じような言葉が返ってきた。
そろそろレナリアの忍耐も限界に近い。もう不敬罪とか構ってられない。癒しが待っているのだ。今すぐここから去って欲しい。
「あの、殿下、申し訳ありませんけど…」
「あっ、あいつら抱き合ってるー」
「っなんですってぇ?!」
光の速さで振り向いたレナリアの視線の先に、練習試合後なのか片手に剣を持ったまま笑顔で抱き合う訓練生が。
「あぁぁぁもぅサイコーかよーー!! 結婚しろーーー!!」
心の声が飛び出した。
今日一番の萌えを堪能したレナリアだったが…次の瞬間現実へと戻ってきた。…戻ってきて…しまった。
オイル切れのブリキのおもちゃのごとく、ギギギギ…と音の聞こえそうな動きで後ろを振り向くと…先程と全く変わらないキラキラエフェクト笑顔でこちらを眺めているアルベール第二王子殿下がそこにいた。
「…あの…殿下…?」
「で、私と結婚してほしいんだが。レナリア・シャンパーニュ嬢」
「…結婚云々は置いておいて、とりあえずお話を伺えますかね…」
がっくりと肩を落としたレナリアに、アルベール王子はこれ以上のクラスがあったんですか、と思わず言いたくなる程ランクアップした笑顔を向けた。
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