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歪んだ世界
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俺はいつも思う。この男はどうしていつも決まった時間に現れて俺を寝かしつけるんだろうか?
その理由はわからないけど、必ず俺を寝かしていく。
そして、目が覚めると、その姿はなく歪んだ世界が広がってるんだ。
季節はずれの転校生がきて俺は1人になった。嘘をでっち上げられ全生徒の敵となった。
孤立した場所で、もくもくと与えられた仕事をこなす毎日。
いつからか、決まった時間にあの男が現れるようになって、俺を寝かし付けていく。
今日も、俺を寝かしつけるために抱き上げてくるからその身体に抱きついて
「ふぅきぃ」
眠くなった頭で呼べば、一瞬だけびくりと身体を強張らせて、後は何事もなかったようにいつものようにベッドに俺を寝かせて寝付くまで傍にいた。
朝になればやっぱりあの男はいない。
世界は歪んだまま。
職員室に書類を届けて、戻る途中でイヤな集団に出くわした。
かつては仲間だと思っていた連中。
「こんなところで、獲物でも漁ってるんですか?」
「あなたになびく人なんていないだろ」
「早くいなくなればいいのに」
「やめたらいいだろ」
なんて、いつもの言葉。
ぐにゃりと世界が歪んだ。
毎日毎日こんな言葉を投げ掛けられて平気なわけじゃない。心が殺られないわけじゃない。
ぐにゃりと歪んだ世界のまま自分自身も歪んだ。倒れると思った身体は誰かに受け止められていてその人物を見ればあいつだった。
「役立たずの風紀ですか」
「お前も邪魔なんだよね」
「役立たずならなくなれよ」
「2人揃って消えちゃえばいいのに」
なんて投げ掛けられる言葉に俺は思う。
風紀が役立たずなわけじゃない。俺が助けを呼ばなかっただけ。
でも、もうムリだ…
「風紀、もぉ…助けて…」
風紀の腕にすがるように掴まれば
「わかった」
短い返事と共に俺の両目は大きな手で覆われそのまま意識を飛ばした。
『お前はゆっくりと休め』
次に目が覚めたときそこは歪んだ世界じゃなくなっていた。
でも、あいつがいない。どこをどう探してもあの男がいないのだ。
歪んだ世界じゃないからか?
俺が歪んだ世界にいないからなのか?
この世界にあいつがいない。
もう一度歪んだ世界に行けば…
「やめとけ」
自分が考えていたことを実行しようと思った瞬間、後ろからそんな声がして驚いて振り返ったら窓枠に座ったあいつがいた。
ここは2階の部屋で、窓が開いてて、男の背には真っ黒い大きな翼。
「どうして?」
なぜ止めるんだという意味を込めて聞けば
「はぁ、だからイヤだったんだよ。深く干渉すんのは…。こうなるってわかってんだからよぉ」
俺の言葉の返事とは違う言葉を返してくる。
「俺は…会いたかった…」
そう会いたかったんだ。おまえに。
「お前はこの世界で生きるんだ。俺がいなくても大丈夫だ」
なんて突き放される。
「イヤだ、俺はイヤだ」
俺の傍にお前がいないのはイヤだ。俺に優しくしたなら最後まで責任を取れ!
「クソッ、自覚なしに俺を縛りやがって。悪魔に魅入られて生きてくなんざろくなことねぇぞ」
呆れたような言葉。
「そんなの俺が望んだんだ。お前が勝手に決めつけるな。俺はお前と一緒にいたい。傍にいてくれよ…お前が悪魔でも俺はかまわないから...」
窓辺に座ったままの男に近づき俺は躊躇いもせずにその身体に抱きついた。
「後悔すんなよ」
その言葉と共に俺は強く抱きしめられた。
その瞬間グニャリと世界が歪んだ。
気が付けばベッドの上で、俺は抱きしめられていた。
「あぁ、そうか、好きだったんだ…この男が…」
俺を抱きしめて寝ている男の顔を見ながら自分の気持ちを口にすれば
「悪魔に惚れるなんざ正気の沙汰じゃねぇぞ」
なんて言われて驚いた。が
「悪魔だろうと、俺はお前だから惚れたんだ」
それだけはハッキリと言ったやった。
「そうか、なら死ぬまで俺の傍にいろ。その間ずっと愛してやんよ」
クスリと笑い優しいキスをくれた。
俺は答える変わりにぎゅっと強く抱きついた。離れていかないように...。
歪んだ世界は俺のためだけの世界。
この悪魔が俺のためだけに作った世界。
それでもかまわない。
この悪魔と一緒にいられるのなら…。
Fin
その理由はわからないけど、必ず俺を寝かしていく。
そして、目が覚めると、その姿はなく歪んだ世界が広がってるんだ。
季節はずれの転校生がきて俺は1人になった。嘘をでっち上げられ全生徒の敵となった。
孤立した場所で、もくもくと与えられた仕事をこなす毎日。
いつからか、決まった時間にあの男が現れるようになって、俺を寝かし付けていく。
今日も、俺を寝かしつけるために抱き上げてくるからその身体に抱きついて
「ふぅきぃ」
眠くなった頭で呼べば、一瞬だけびくりと身体を強張らせて、後は何事もなかったようにいつものようにベッドに俺を寝かせて寝付くまで傍にいた。
朝になればやっぱりあの男はいない。
世界は歪んだまま。
職員室に書類を届けて、戻る途中でイヤな集団に出くわした。
かつては仲間だと思っていた連中。
「こんなところで、獲物でも漁ってるんですか?」
「あなたになびく人なんていないだろ」
「早くいなくなればいいのに」
「やめたらいいだろ」
なんて、いつもの言葉。
ぐにゃりと世界が歪んだ。
毎日毎日こんな言葉を投げ掛けられて平気なわけじゃない。心が殺られないわけじゃない。
ぐにゃりと歪んだ世界のまま自分自身も歪んだ。倒れると思った身体は誰かに受け止められていてその人物を見ればあいつだった。
「役立たずの風紀ですか」
「お前も邪魔なんだよね」
「役立たずならなくなれよ」
「2人揃って消えちゃえばいいのに」
なんて投げ掛けられる言葉に俺は思う。
風紀が役立たずなわけじゃない。俺が助けを呼ばなかっただけ。
でも、もうムリだ…
「風紀、もぉ…助けて…」
風紀の腕にすがるように掴まれば
「わかった」
短い返事と共に俺の両目は大きな手で覆われそのまま意識を飛ばした。
『お前はゆっくりと休め』
次に目が覚めたときそこは歪んだ世界じゃなくなっていた。
でも、あいつがいない。どこをどう探してもあの男がいないのだ。
歪んだ世界じゃないからか?
俺が歪んだ世界にいないからなのか?
この世界にあいつがいない。
もう一度歪んだ世界に行けば…
「やめとけ」
自分が考えていたことを実行しようと思った瞬間、後ろからそんな声がして驚いて振り返ったら窓枠に座ったあいつがいた。
ここは2階の部屋で、窓が開いてて、男の背には真っ黒い大きな翼。
「どうして?」
なぜ止めるんだという意味を込めて聞けば
「はぁ、だからイヤだったんだよ。深く干渉すんのは…。こうなるってわかってんだからよぉ」
俺の言葉の返事とは違う言葉を返してくる。
「俺は…会いたかった…」
そう会いたかったんだ。おまえに。
「お前はこの世界で生きるんだ。俺がいなくても大丈夫だ」
なんて突き放される。
「イヤだ、俺はイヤだ」
俺の傍にお前がいないのはイヤだ。俺に優しくしたなら最後まで責任を取れ!
「クソッ、自覚なしに俺を縛りやがって。悪魔に魅入られて生きてくなんざろくなことねぇぞ」
呆れたような言葉。
「そんなの俺が望んだんだ。お前が勝手に決めつけるな。俺はお前と一緒にいたい。傍にいてくれよ…お前が悪魔でも俺はかまわないから...」
窓辺に座ったままの男に近づき俺は躊躇いもせずにその身体に抱きついた。
「後悔すんなよ」
その言葉と共に俺は強く抱きしめられた。
その瞬間グニャリと世界が歪んだ。
気が付けばベッドの上で、俺は抱きしめられていた。
「あぁ、そうか、好きだったんだ…この男が…」
俺を抱きしめて寝ている男の顔を見ながら自分の気持ちを口にすれば
「悪魔に惚れるなんざ正気の沙汰じゃねぇぞ」
なんて言われて驚いた。が
「悪魔だろうと、俺はお前だから惚れたんだ」
それだけはハッキリと言ったやった。
「そうか、なら死ぬまで俺の傍にいろ。その間ずっと愛してやんよ」
クスリと笑い優しいキスをくれた。
俺は答える変わりにぎゅっと強く抱きついた。離れていかないように...。
歪んだ世界は俺のためだけの世界。
この悪魔が俺のためだけに作った世界。
それでもかまわない。
この悪魔と一緒にいられるのなら…。
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