寄せ集めの短編集

槇瀬光琉

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やきもち

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いつもさ、人気者でさ、それが気に入らない。

俺と付き合ってるんだからもう少し考えて欲しいというのが本音。

だけど、それが無理だから俺が毎回こんな思いをしてるわけだ。


「また、一人でそんな膨れっ面してるのか」
そんな言葉と共に頭を撫でられ驚いて顔を上げれば少し困った顔をしたヤツがいた。

「お前が悪いんだ」
本当はどうしようもない事だからこんなこと言っても仕方がないのはわかってるんだ。

「そうだな。お前をほかりっぱなしの俺が悪いな」
苦笑しながら言われる言葉に首を振る。


違う、そうじゃないんだ。そんなことを言いたいんじゃないんだ。


「後、30分ぐらいしたら時間が空くし、帰れるから待ってれるだろ?」
いつものように、時間を見計らって現れるこいつは何者なんだ。

俺が小さく頷くと頭を撫でて行ってしまう。それが寂しいとか思う。


小さく溜息をつけば

「相変わらずの人気者ですね彼は」
ことりと休憩用のお茶を置いて言われた言葉に苦笑が浮かぶ。

「サンキュー」
お礼を口にしてそのお茶を飲めば

「あなた自身も人気はありますが、彼もすごい人気ですからね。大物カップルが誕生してるけどみんな自分勝手ですからね」
なんて落ち込んでる気持ちに止めを刺された。

「お前わざと言ってるだろ?」
じと~って睨めば

「あー、そういうつもりじゃなかったんですが…すみません」
苦笑しながら慌てて謝られた。俺はもう一度、溜め息をついた。



30分という時間が何時にもまして永く感じた。


自分の仕事を終えて、帰る準備をしてれば、迎えに来るのが当たり前だと言わんばかりに現れた。

「帰れるか?」
俺の持ってる荷物を取り上げ聞いてくるから頷いた。
「じゃ行くぞ」
俺の背を軽く叩いて歩き出す。俺はその後をついて行った。



寮に戻って、自分の部屋でやることだけやって、どうしようかって考えてたらメールの着信が鳴った。


『来れるなら来いよ』


たったそれだけの文。


俺は急いで部屋の鍵を持って自分の部屋を飛び出した。


勝手知ったるなんとやらと言わんばかりに勝手に扉を明けて中に入れば

「そこまで急いで来なくても逃げなんだが…」
少しだけ困った顔をして出迎えてくれた。

「だって、仕方がないだろ」
これでもずっと我慢してたんだから…。

「ほら、おいで」
両手を広げてくれるから俺はその胸に飛び込んだ。飛び込んだ俺をそっと抱きしめてくれる。


それだけで昼間からのモヤモヤが消えるんだから俺も大概現金なやつだと思う。


「この時間だけは誰にも邪魔できないから、安心して甘えろ」
俺の頭を撫でながら言われる言葉に
「この時間だけってのが気に入らない。恋人は俺なのに…」
不満を口にすれば

「仕方がないだろ、お互いなぜだか人気だからな。ホントに、俺たちは見世物じゃないんだがな」
俺の肩に顔を埋めながら言われる言葉は耳が痛くなるぐらいに言われた言葉。それと同時に俺もよくいってる言葉だ。
「俺は地味に生活したかった」
なんて文句を言ったところで何も変わらないんだけど、文句だけは言わせろ。

「そうだな、卒業したら二人で隠居生活でもするか?自宅警備員にでもなって」
なんて楽しげに言われ
「それでいい。誰にも邪魔されないなら…」
こんなヤキモチ妬かなくてもいいならそれでいい。

「まぁ、それはおいおい考えるとしよう。ほら、ベッドに行ってダラダラしよう」
なんて言いながら寝室へと連れ込まれる。
「んー、朝まで抱きしめてろよな」
なんて無茶なことを言う。

「お前が逃げて行かなければな」
ベッドの上で二人で横になって布団に潜って言われた。
「ん、寝てるときはわかんないけど、起きた時に抱きしめてくれてればいい」
腕の中にいたという実感があればそれでいい。

「わかった。お前が起きるころにはちゃんと抱き締めてるよ。ほらもう寝ろ、眠くなってるだろ?」
自分の方に抱き寄せながら背中をあやすように叩かれる。実際、抱きしめられて安心して眠くなってはきてる。
「ん、このまま寝る。おやすみ」
俺は離れていかないように服を掴んだ。
「おやすみ」
そっと額にキスを落とされた。俺はそのまま本当に抱き締められたまま眠りについた。



朝、起きたとき約束通りに抱きしめられてて俺はそっと抱きしめ返した。そしたら頭を撫でられて嬉しかった。


いつもいつもヤキモチばっか妬くけど、ちゃんと俺だけの時間を作ってくれるから少しは我慢しようと思う。


Fin


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