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シュークリーム
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あぁ。シュークリーム食いてぇなぁ~。俺はボーっと真っ青な空を眺めぼんやりと思っていた。
「お~い。圭吾帰るぞ~」
自転車置き場からそんな声が聞こえる。俺はのんびり歩きながら悟の傍に歩いていく。
「お前なぁもう少し早く歩けねぇの?」
悟が俺に文句意を言うけれど
「ん~無理」
俺はのんびりそのまま言い返す。悟は大袈裟に溜め息をつき
「やだやだこの若年寄は・・・」
なんていってくれる。俺は悟の自転車の籠にカバンを入れ後ろに座り込む。
「若年寄は歩くのが億劫ですから」
俺はそういってやる。
「はいはい。っていつもだろ!!!」
悟は文句を言いつつも俺を乗せた自転車のペダルを勢いよく踏み込む。自転車は2人分の体重を乗せてるにもかかわらずすんなり進んでいく。
「なに考えてたんだ?」
悟が自転車をこぎながら聞いてくる。ほんとよく俺のこと観察してるよ。
「あの青い空に浮かぶ雲シュークリームに見えないか?」
俺は目の前の真っ青な空にポツンと浮かぶ雲を指差し答える。
「あ~なるほど。それで食べたくなったと?」
見事だよ悟くん。
「そのとおり。食べたいわけだ。お腹が減ったんだよ悟くん」
俺は悟の背に額をくっ付け素直に言う。
「あはは。成る程ね。じゃぁこの俺様が美味しいシュークリームの売ってる店に案内して進ぜよう」
背中越しに聞こえる悟の声が心底楽しそうに聞こえる。まぁ俺が物欲を露わにするのは極稀なことだから悟も嬉しいんだろう。
「不味かったら百打たきな」
俺はそう忠告をする。実際するわけじゃないけれど。
「大丈夫。ほんとに美味しいとこだから」
悟は自信満々に言ってくる。じゃぁ期待しようじゃないか悟くん。
「ふ~ん。そんなに自信があるんだ」
俺は悟の背に今度は耳をくっ付けいう。
「勿論。もうあそこのを食べたらコンビニのは食えんよ」
悟は本当に自信たっぷりに言う。こういうときの悟の言葉は本当に当ってるんだよな。悔しいけど。
「でもそんな店あったっけ?」
俺はふと疑問に思ったことを聞く。
「ありますとも。俺の家の近所に」
悟はそういいきる。ん?悟の家の近所???
「もしかして『ラ・ポワールシェ』って名前のケーキ屋さんかね悟くん」
俺にはそこしか思いつかないのだが???
「当り。圭吾御用達のケーキ屋さんだ。最近シュークリームも売るようになったんだ」
悟はそう教えてくれる。そう。『ラ・ポワールシェ』は俺の御用達の店だ。悟の家に行くとき限定だけど。
「初耳」
俺は悟の背にグリグリと頭を押し付け訴える。
「そりゃ最近お前の家にばっかり通ってから寄ってないし。で?今日はどっち?」
悟はそう聞いてくる。そんなの決まってるじゃないか。
「悟の家」
俺は即答する。
「あははは」
背中越しに笑う声が伝わる。どうせ俺は食いもんには弱いよ。そうさせたのは悟の癖に。
「悟のバカ」
だからついつい文句を言いたくなってしまう。俺に色んなことを教えてくれたのは悟。人を好きになるということも傍にいる幸せも・・・・人形みたいだった俺に人としての感情を教えてくれたのは全部悟だ。
「はいはい。圭吾のバカは愛情表現だから幾らでも言ってくれればいいよ」
ほらね?俺のこと全部わかってるんだ。俺が判らないことまで悟は知ってる。たまにずるいとか思うけど結局惚れた方の負け。俺には勝ち目なんてないんだ。全部悟の一人勝ち。
「バカ。悟のバーカ」
だから背一杯の悪口。決して俺から好きだなんていってやらない。
悟の自転車はいつもよりスピードを出して目的の場所へと到着する。
「ほら。買いに行くぞ」
自転車を止めて悟が言う。仕方がないから俺は自転車から降り店の中に入っていく。ショーケースの中に並ぶ色とりどりのケーキたち。どれも美味しいんだよねここのケーキ。そのケーキに混ざってシュークリームが並んでる。
「幾つ食べる?」
悟が聞いてくる。
「ん~。3つ」
俺はそう答えた。悟はクスクス笑いながら
「シュークリーム五つください」
注文してる。
「かしこまりました」
店員さんがそういってシュークリームをケースの中から取り箱の中に入れてくれる。
「お待たせしました」
俺はその箱を受け取り店の外にでる。会計は悟が済ませてくれるからいいのだ。いつもこの店は奢り。俺はまた自転車の後ろに座る。
「座ってたら動かせないって」
悟が文句を言うから取り敢えず降りてやる。
「いいよ。乗って」
悟は自転車を跨ぎ言ってくるから俺はまた後ろに乗る。悟の足がペダルを踏み込む。ゆっくりと走り出す自転車。
「しっかりと掴まってないと落ちるぞ~」
なんて言われるけど
「シュークリームのが大事」
俺はそう答える。
「あははは。じゃぁ片手だけでも掴まってろよ」
悟は笑いながら言ってくる。
「ん」
俺は素直に片方の手を悟の腰に回し制服を掴みもう片方の手はシュークリームの入った箱をしっかりと握り締めていた。
「ふんふふん~♪」
悟が上機嫌で鼻歌を歌いながら自転車をこぎ続ける。俺は悟の背に頭をくっ付け悟の鼻歌をずっと聞いていた。悟が歌ってるのは初めて俺に教えてくれたラブソング。誰の曲だったかはもう覚えてないけどメロディーだけは覚えてる。だってキザだったから・・・。この曲をかけながら告白してきたんだぜ悟のやつ。思わず笑っちゃったけどさ俺。でも悟が好きだって気持ちは譲れなかったから俺も好きだっていってやったんだ。俺もキザだよな。
「け~ご。公園行こうぜ」
急に悟が言ってくる。
「ん~。行けば」
俺はそう答える。反対する理由がないもん。
「よっと」
悟は行き先を自分の家から公園へと変え自転車をこぐ。あのケーキ屋から公園までそんなに距離はないんだけどさ
。
「とうちゃ~く」
悟はそういい自転車を停める。俺は自転車から降り入り口付近にあるベンチに腰掛け
「食べてよい?」
悟に聞いてみる。
「どうぞ」
悟は俺の隣に腰掛け言ってくれる。俺は箱を開けシュークリームを一個取り齧り付く。サクッとしたシューの皮とほんのり甘いクリームが口の中に広がる。
「んま~い」
俺は思わず叫んじゃった。
「だろ?誰もとらねぇからゆっくり食べな」
悟はそう言ってくれる。こういうとこが優しいんだよね。俺は本当に美味しいシュークリームを食べながら悟のこういう気遣いが好きだなぁ~なんて考えてた。
真っ青な青空の下2人で食べたシュークリームは今までの中で一番美味しかった。また今度食べような。悟。
Fin
「お~い。圭吾帰るぞ~」
自転車置き場からそんな声が聞こえる。俺はのんびり歩きながら悟の傍に歩いていく。
「お前なぁもう少し早く歩けねぇの?」
悟が俺に文句意を言うけれど
「ん~無理」
俺はのんびりそのまま言い返す。悟は大袈裟に溜め息をつき
「やだやだこの若年寄は・・・」
なんていってくれる。俺は悟の自転車の籠にカバンを入れ後ろに座り込む。
「若年寄は歩くのが億劫ですから」
俺はそういってやる。
「はいはい。っていつもだろ!!!」
悟は文句を言いつつも俺を乗せた自転車のペダルを勢いよく踏み込む。自転車は2人分の体重を乗せてるにもかかわらずすんなり進んでいく。
「なに考えてたんだ?」
悟が自転車をこぎながら聞いてくる。ほんとよく俺のこと観察してるよ。
「あの青い空に浮かぶ雲シュークリームに見えないか?」
俺は目の前の真っ青な空にポツンと浮かぶ雲を指差し答える。
「あ~なるほど。それで食べたくなったと?」
見事だよ悟くん。
「そのとおり。食べたいわけだ。お腹が減ったんだよ悟くん」
俺は悟の背に額をくっ付け素直に言う。
「あはは。成る程ね。じゃぁこの俺様が美味しいシュークリームの売ってる店に案内して進ぜよう」
背中越しに聞こえる悟の声が心底楽しそうに聞こえる。まぁ俺が物欲を露わにするのは極稀なことだから悟も嬉しいんだろう。
「不味かったら百打たきな」
俺はそう忠告をする。実際するわけじゃないけれど。
「大丈夫。ほんとに美味しいとこだから」
悟は自信満々に言ってくる。じゃぁ期待しようじゃないか悟くん。
「ふ~ん。そんなに自信があるんだ」
俺は悟の背に今度は耳をくっ付けいう。
「勿論。もうあそこのを食べたらコンビニのは食えんよ」
悟は本当に自信たっぷりに言う。こういうときの悟の言葉は本当に当ってるんだよな。悔しいけど。
「でもそんな店あったっけ?」
俺はふと疑問に思ったことを聞く。
「ありますとも。俺の家の近所に」
悟はそういいきる。ん?悟の家の近所???
「もしかして『ラ・ポワールシェ』って名前のケーキ屋さんかね悟くん」
俺にはそこしか思いつかないのだが???
「当り。圭吾御用達のケーキ屋さんだ。最近シュークリームも売るようになったんだ」
悟はそう教えてくれる。そう。『ラ・ポワールシェ』は俺の御用達の店だ。悟の家に行くとき限定だけど。
「初耳」
俺は悟の背にグリグリと頭を押し付け訴える。
「そりゃ最近お前の家にばっかり通ってから寄ってないし。で?今日はどっち?」
悟はそう聞いてくる。そんなの決まってるじゃないか。
「悟の家」
俺は即答する。
「あははは」
背中越しに笑う声が伝わる。どうせ俺は食いもんには弱いよ。そうさせたのは悟の癖に。
「悟のバカ」
だからついつい文句を言いたくなってしまう。俺に色んなことを教えてくれたのは悟。人を好きになるということも傍にいる幸せも・・・・人形みたいだった俺に人としての感情を教えてくれたのは全部悟だ。
「はいはい。圭吾のバカは愛情表現だから幾らでも言ってくれればいいよ」
ほらね?俺のこと全部わかってるんだ。俺が判らないことまで悟は知ってる。たまにずるいとか思うけど結局惚れた方の負け。俺には勝ち目なんてないんだ。全部悟の一人勝ち。
「バカ。悟のバーカ」
だから背一杯の悪口。決して俺から好きだなんていってやらない。
悟の自転車はいつもよりスピードを出して目的の場所へと到着する。
「ほら。買いに行くぞ」
自転車を止めて悟が言う。仕方がないから俺は自転車から降り店の中に入っていく。ショーケースの中に並ぶ色とりどりのケーキたち。どれも美味しいんだよねここのケーキ。そのケーキに混ざってシュークリームが並んでる。
「幾つ食べる?」
悟が聞いてくる。
「ん~。3つ」
俺はそう答えた。悟はクスクス笑いながら
「シュークリーム五つください」
注文してる。
「かしこまりました」
店員さんがそういってシュークリームをケースの中から取り箱の中に入れてくれる。
「お待たせしました」
俺はその箱を受け取り店の外にでる。会計は悟が済ませてくれるからいいのだ。いつもこの店は奢り。俺はまた自転車の後ろに座る。
「座ってたら動かせないって」
悟が文句を言うから取り敢えず降りてやる。
「いいよ。乗って」
悟は自転車を跨ぎ言ってくるから俺はまた後ろに乗る。悟の足がペダルを踏み込む。ゆっくりと走り出す自転車。
「しっかりと掴まってないと落ちるぞ~」
なんて言われるけど
「シュークリームのが大事」
俺はそう答える。
「あははは。じゃぁ片手だけでも掴まってろよ」
悟は笑いながら言ってくる。
「ん」
俺は素直に片方の手を悟の腰に回し制服を掴みもう片方の手はシュークリームの入った箱をしっかりと握り締めていた。
「ふんふふん~♪」
悟が上機嫌で鼻歌を歌いながら自転車をこぎ続ける。俺は悟の背に頭をくっ付け悟の鼻歌をずっと聞いていた。悟が歌ってるのは初めて俺に教えてくれたラブソング。誰の曲だったかはもう覚えてないけどメロディーだけは覚えてる。だってキザだったから・・・。この曲をかけながら告白してきたんだぜ悟のやつ。思わず笑っちゃったけどさ俺。でも悟が好きだって気持ちは譲れなかったから俺も好きだっていってやったんだ。俺もキザだよな。
「け~ご。公園行こうぜ」
急に悟が言ってくる。
「ん~。行けば」
俺はそう答える。反対する理由がないもん。
「よっと」
悟は行き先を自分の家から公園へと変え自転車をこぐ。あのケーキ屋から公園までそんなに距離はないんだけどさ
。
「とうちゃ~く」
悟はそういい自転車を停める。俺は自転車から降り入り口付近にあるベンチに腰掛け
「食べてよい?」
悟に聞いてみる。
「どうぞ」
悟は俺の隣に腰掛け言ってくれる。俺は箱を開けシュークリームを一個取り齧り付く。サクッとしたシューの皮とほんのり甘いクリームが口の中に広がる。
「んま~い」
俺は思わず叫んじゃった。
「だろ?誰もとらねぇからゆっくり食べな」
悟はそう言ってくれる。こういうとこが優しいんだよね。俺は本当に美味しいシュークリームを食べながら悟のこういう気遣いが好きだなぁ~なんて考えてた。
真っ青な青空の下2人で食べたシュークリームは今までの中で一番美味しかった。また今度食べような。悟。
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