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それでも好きだった。
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「それでも好きだった」
いつかそう言える時がくればいいな。
俺、南裕也はいつものように自分の席に座りボーっと窓の外を見ていた。
「裕也がまた黄昏れてるよ」
親友の啓太が俺を茶化すようにいう。
「別にそんなんじゃねぇよ」
啓太のほうに視線を移し答える。
「美穂ちゃんに彼氏ができたんだって?」
啓太は俺の前の席に座り聞いてくる。相変わらずそういう情報を手に入れるのは早いことで。
「同じ学校の先輩だって」
先日、俺は美穂自身にそう告白された。その話を聞いた時すっげぇショックだった。小学校の時からずっと美穂のことが好きだった。
「失恋しちゃったわけだ」
啓太は俺の机に膝をつき楽しそうに言う。人に気も知らねぇで…。
「別に、あいつの自由じゃん。いいんじゃねぇの?」
俺は自分の気持ちを押し隠して答える。今でも好きなんだ。夜も寝れないほどに…。
「お前も素直じゃないねぇ」
啓太は見透かしたようにいう。
「それを言うお前はどうなんだよ」
俺は啓太に聞いてみる。ずっと同じクラスにいるけど啓太の浮いた話は一度も聞いたことがない。
ガードが堅いのか本当に相手がいないのか?
「俺?俺はねぇ~」
なんて意味深に言いながら黙り込んでしまう。気になる。
「なんだよ。ハッキリ言えよ啓太」
俺は急かすように聞いた。
「俺はね、1年も前から叶わぬ恋をしてるんだ…」
啓太は一瞬っだけ悲しそうな表情をみせ苦笑を浮かべた。初耳だった。啓太が恋をしてるってこと、しかも1年も前から…。
「わりぃ、変なこと聞いた」
俺は呟くように謝った。
「気にすんな。俺は平気なんだし、それよりも裕也は重症じゃねぇの?」
啓太はケラケラ笑いながら聞いてくる。確かに俺的には重症なんだが…
「いいんだ。美穂が今、幸せならそれでいい」
あいつが幸せならそれでいい。
「ふ~ん。じゃぁ今日はどっか寄って帰るか?」
啓太が立ち上がり自分のカバンを持つ。
「お前の奢りならな」
俺も同じように立ち上がりカバンを持つ。
「まぁ、失恋した裕也くんのためにいつものお好みやのスペシャルお好みを奢りますかね」
啓太は少しだけ考えるふりをして笑う。
「サンキュー」
俺は啓太にお礼を言ってもう一度だけ窓の外を見て溜め息をついた。
それでも好きだった…いつか美穂に伝えてみようかな…
「裕也、置いてくぞ」
教室の外で啓太が俺を呼ぶ。
「おう、今行く」
俺はそう返事をして啓太の後を追った。
Fin
いつかそう言える時がくればいいな。
俺、南裕也はいつものように自分の席に座りボーっと窓の外を見ていた。
「裕也がまた黄昏れてるよ」
親友の啓太が俺を茶化すようにいう。
「別にそんなんじゃねぇよ」
啓太のほうに視線を移し答える。
「美穂ちゃんに彼氏ができたんだって?」
啓太は俺の前の席に座り聞いてくる。相変わらずそういう情報を手に入れるのは早いことで。
「同じ学校の先輩だって」
先日、俺は美穂自身にそう告白された。その話を聞いた時すっげぇショックだった。小学校の時からずっと美穂のことが好きだった。
「失恋しちゃったわけだ」
啓太は俺の机に膝をつき楽しそうに言う。人に気も知らねぇで…。
「別に、あいつの自由じゃん。いいんじゃねぇの?」
俺は自分の気持ちを押し隠して答える。今でも好きなんだ。夜も寝れないほどに…。
「お前も素直じゃないねぇ」
啓太は見透かしたようにいう。
「それを言うお前はどうなんだよ」
俺は啓太に聞いてみる。ずっと同じクラスにいるけど啓太の浮いた話は一度も聞いたことがない。
ガードが堅いのか本当に相手がいないのか?
「俺?俺はねぇ~」
なんて意味深に言いながら黙り込んでしまう。気になる。
「なんだよ。ハッキリ言えよ啓太」
俺は急かすように聞いた。
「俺はね、1年も前から叶わぬ恋をしてるんだ…」
啓太は一瞬っだけ悲しそうな表情をみせ苦笑を浮かべた。初耳だった。啓太が恋をしてるってこと、しかも1年も前から…。
「わりぃ、変なこと聞いた」
俺は呟くように謝った。
「気にすんな。俺は平気なんだし、それよりも裕也は重症じゃねぇの?」
啓太はケラケラ笑いながら聞いてくる。確かに俺的には重症なんだが…
「いいんだ。美穂が今、幸せならそれでいい」
あいつが幸せならそれでいい。
「ふ~ん。じゃぁ今日はどっか寄って帰るか?」
啓太が立ち上がり自分のカバンを持つ。
「お前の奢りならな」
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「まぁ、失恋した裕也くんのためにいつものお好みやのスペシャルお好みを奢りますかね」
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「サンキュー」
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それでも好きだった…いつか美穂に伝えてみようかな…
「裕也、置いてくぞ」
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