人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

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触れた想い

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「ほら、大人しく横になれ」
菊池に救出された俺は保健室でケガの手当てを受けて、再び菊池に連れられて菊池の部屋へときた。差し出された服に着替えた俺に菊池が布団をまくり上げて告げてくる。
「侑…司…」
名前を口にするけど言葉が続かない。

「いいから、横になれ。後でちゃんと聞いてやるから」
もう一度、同じ言葉を言われ俺はノロノロと菊池がまくり上げた布団の中へと入り横になった。熱のあがった身体が悲鳴を上げている。いろんなものを拒絶した俺の身体は悲鳴を上げて高熱を出した。それは昔から変わらない厄介なもの。横になった俺を確認すると菊池は部屋を出ていった。


「めんどくさ…」
自分で自分の身体が面倒で仕方がない。それに菊池を付き合わせてるんだから、菊池の方がもっと面倒だと思ってるかもしれない。


「少し動かすぞ」
そんな声と共に俺の身体が浮き、壁側へと移された。驚いて見れば
「なんて顔してんだお前は。お前が真ん中で寝てたら俺が隣で寝れねぇだろ」
そんなことを言いながら俺の額に貼られる冷えピタ。よくよく見てみれば、看病セットを準備して戻ってきたらしい。
「ゆぅ…」
うまく力の入らない手を菊池に伸ばせば
「無理するなって」
なんて言いながら俺の隣に横になり抱き寄せてくれる。
「このまま今は寝ろ。何も考えなくていいから」
その言葉に小さく頷きそっと目を閉じた。



トクリ、トクリと規則正しい心音に闇に落ちていた意識が浮上し始める。


「やっぱりまだ下がらねぇか」
そんな菊池の声で目が覚めた。
「…ごめん…」
ポツリと呟いたら
「謝んな。悪いのはお前じゃねぇよ。お前はずっと拒絶してたんだ。それを無視し続けたのはあいつらだからな」
その言葉と共に頭を優しく撫でられる。それが本当に優しかった。
「ゆぅ」
名前を呼びたかったのに言葉にならなかった。言葉の変わりに出てきたのは涙だった。
「…っ…なんで…」
自分でもわからずに流れ落ちる涙。
「擦るな。目が赤くなる」
そんな言葉と共に贈られてきたのは優しいキス。額に頬に唇に、そして涙を流す目元にそっと優しいキスがおりてくる。
「…っ…ゆぅ…」
自分でも訳がわからないままボロボロと涙を流し菊池の服をギュッと握りしめた。
「あんま興奮すると熱があがるんだけどなぁ。今は好きなだけ泣け。いろんな意味で拒絶してたんだ。その反動がこうやって出てきただけだ」
まるで全部わかってると言わんばかりに俺を抱き締めそっと頭を撫でてくれる。俺はそんな菊池に抱きつきバカみたいに大泣きをした。菊池がくれる俺への優しさが心地よくてものすごく安心できたんだ。


俺はバカみたいに大泣きをして菊池の腕の中で再び眠りの中へと落ちていった。


菊池侑司という男の温もりと俺への想いに包まれながら泡沫の中へと沈んでいった。



Fin


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