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人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

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ここは一体どこだろうか?


なんて、俺はぼんやりとした頭で考える。その理由は数分前の出来事が思い出せないでいたから。


「じゃぁ、先に行くからな」
俺はそう幸永に声をかけてから職員室を後にしたんだ。幸永が珍しく担任に捕まったので、俺は先に戻ることに決めた。

1人で廊下を歩いていて、数人の生徒に声をかけられ返事をしながら生徒会室へと向かって歩いていた。歩いていたはずなんだ…。

だが、気が付いたらここは生徒会室ではなく見知らぬ場所。それに後ろで腕も縛られてるし、ズキズキと頭が痛む。


誰かに拉致られたか?


なんて思った。じゃなきゃこんな状況は起きないはずだから。


捕まったからと言って騒ぐ気もない。騒げば余計に状況は悪化するだろうし、もしかしたらあいつが動いてるかもしれないからだ。


あいつ、菊池侑司が風紀のやつらを使って動いているかもしれないからだ。


あいつはいつも俺の知らない所で俺のことを見てる。そして、頃合いを見計らって助けに来るのだ。一体どんな手を使ってるのかわからないけど、ピンチになると必ずあいつが現れる。


だけど…


今回は無理かもしれないと思う。


ここが本当にわからないからだ。こんな場所あったのか?って思うような場所。そもそもここが学園の中とは言い切れないからだ。誰かに拉致られて閉じ込められたそれだけしかわからなかった。



どれだけ時間がたったのだろうか?



「まったく、毎度毎度どんな手を使ってこんな場所見つけてきやがんだ」
なんて、少しだけ疲れた顔と声で現れた男に驚いた。
「いやぁ、でもぉ~それを簡単に見つけちゃう委員ちょ~は何者~?」
「あっ、それは俺も思う」
男の後ろから出てきたのは男の右腕と左腕的存在。


「俺にも企業秘密があるからお前らでも教えねぇよ。さて、お姫様、大丈夫ですか?」
俺の傍に跪きそんなこと口にする男の顔には疲労が見え隠れしている。
「ごめん」
もごもごと口の中で謝れば
「手の縄を切るから動くなよ」
そんなことを言われた。いつになくキツク縛られた縄は簡単に解けないと解釈して切ることにしたのか、それとも解くより切った方が早いと判断したのか、わからないが俺は素直に頷いた。両手、両足に縛られていた縄は切り落とされ俺は軽々とお姫様抱っこをされることとなった。流石にこれには驚いた。
「ちょ、菊池ぃ、歩けるって」
抗議の声を上げるが
「梅ちゃ~ん。大人しくしとこうねぇ~」
「会長の身の安全のためですから」
鍋谷と二村に言われて思い出した。涼しい顔してこの男、実はかなり怒ってるんだということに…。じゃなきゃ、わざわざお姫様なんて言わないはずだ。
「熱の上がった身体で歩けるわけがねぇだろ」
菊池のその言葉に
「へっ?」
変な声出しちまった。鍋谷と二村も驚いた顔してる。
「色んな意味でお前は拒絶して身体が悲鳴上げて熱が出てんだよ。だから、この後お前また数日寝込むぞ」
溜め息交じりに言われた言葉に俺自身も溜め息をついた。

「どっかケガとかしてねぇか?」
歩きだしながら聞かれた言葉に
「わかんねぇ。気が付いたらここにいたし…」
素直に答えた。本当にわからなかったからだ。
「頭はケガしてるみてぇだから取り敢えず保健室に行くぞ」
菊池はそういい終えると無言のまま部屋を出た。

出て俺は驚いた。


だって部屋の前に風紀の奴らに捕まってる大量の人。


「き、菊池…これ…」
そこまでいいかけて俺は唇を噛み締めた。菊池から溢れる殺気は外で捕まってる奴らに向けてのモノ。
「人を殺めない程度に怒りを抑えるのもうたいへ~ん。委員ちょ~ったら超本気で殺っちゃいそうだったもん」
「忠告を無視するコイツらが悪いのはわかるんですけどね。さすがに前科もちにはさせれませんからね」
鍋谷と二村が溜め息まじりに言う。俺は菊池の胸に顔を埋めて服を掴んだ。

「なんでだよ!梅村!」
「俺は、俺たちはお前が好きなんだ!」
「なのになんでだ!」

後ろから悲痛な叫びが聞こえる。

「るさい、うるさい!俺のかまうな!干渉するな!いい迷惑だ!俺には必要ない!」
俺は俺に言い寄って来るやつら全員に向けて拒絶の言葉を叫ぶ。


本当にいい迷惑だ。俺にかまうな!干渉するな!俺は菊池がいればいい。


「その状態で叫ぶなバカ」
溜め息交じりに言われてムッとしながら菊池を睨めば
「熱が上がるってことだバカ。お前1週間も休む気か?」
呆れながら言われた言葉についうっかり頷いた。いや、それでもいいかもって思っちまったんだい!
「ありゃりゃ。これは梅ちゃんが完全に壊れちゃったねぇ~」
「記憶が戻ってから色々ありすぎましたからね。そうなってもしかたないですね」
鍋谷と二村がそれはしょうがないとブツブツ言っていた。
「おいバカども。今後、梅村陽葵に二度と近づくな、触れるな、声をかけるな。そんなことをすればお前らの命はねぇってこと覚えとけよ」
菊池はさらっと恐ろしいことを言ってのけて他の風紀委員の奴らに指示をしてその場を後にした。


その場所を離れていく菊池の腕の中で俺は意識を失ったのだった。



Fin

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