人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

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ただ、ただ、

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「なぁ」
俺はふと思ったことを実行したくて侑司を呼んだ。

「ん?なんだよ」
いまだに身体が怠くてベッドの上の住人になってる俺と違って色々と動いてる侑司が俺の方を見て聞いてくる。

「して欲しいことがある」
だから、俺の時間をくれ。

「何をだ?」
しょうがねぇなって感じで傍に来てくれた侑司に俺は抱き着いた。

「どうしたよ?」
何も言わずに抱き着いた俺に聞いてくる。俺は小さく首を振った。


だからどうか、俺のこの行動だけでわかってくれ。


「しょうがねぇな。ちょっと放せ」
苦笑気味に言われるから大人しく俺が手を離すと

「後の責任は取らねぇからな」
そんな言葉と共に俺はベッドの上に押し倒された。


そして、顔中に落とされる小さなキス。


額に、目元に、鼻に、頬に、そして、唇に。


触れるだけのキス、何時しか舌が入り込み絡めとっていく。


それだけで息が上がる。でも、それをやめて欲しいわけじゃない。


「なに不安になってんだお前は」
唇が離された後で俺を自分の腕の中に閉じ込めながら侑司が問う。


それは見透かされている俺の心。


依存と執着。


俺は侑司に依存し、侑司は俺に執着している。


もし、侑司に捨てられたら…そんな感情が生まれた。


だから、今はただ、抱きしめて、キスして欲しかった。


この不安がなくなるまで、ただ、抱きしめて、キスして欲しかった。


「…侑司が俺の前から消えたら…俺…死ぬ…」
不安な気持ちを素直に告げれば
「アホ。消えねぇよ」
なんて、言われた。


その一言で安心できるんだからホント俺ってどんだけこの男に依存してんだって思う。


「侑司…好きだ…お前に干渉されてもいいって思うほど…菊池侑司が好きだ」
だから、もう一度、今度は本来の俺の想いを口にする。
「わかってるよ。これからも俺が心ごと、身体ごと干渉してやるから覚悟しやかがれ」
そんな言葉共に俺の唇は再び侑司に奪われた。



ただ、ただ、


今はただ、抱きしめて、キスをして、安心させてほしかった。


俺という男を菊池侑司という男で安心させてほしかったんだ。



Fin

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