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依存と執着は紙一重?

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「なぁ、いつからなんだよ…」
食器の片付けを終え、珈琲を淹れたカップを持って戻ってきたとき急に言われた。
「何がだ?」
意味がわからず、イヤ多分、聞きたいであろう言葉はわかるが、テーブルにカップを置いて聞いてみた。

「執着って…いつからなんだよ。そんな素振り一度も見せなかっただろ?」
梅村からの言葉にやっぱりそれかと思う。

「ガキん時から。お前が俺に依存し始めた頃とほぼ同時期だな。確か」
自分でも曖昧だが、あの頃には既に俺は梅村陽葵という男に執着していたのだ。

だからこそ、この男が依存するぐらいには相手をし、甘やかし、自分意外に気を引かれないようにもした。

だが、それを全く気が付かれないように気を遣いながらだが。

桐渓に苛められたときはすっげぇ腹が立った。

だからこそ、この男を傷つけるあの男が許せなかった。

階段での事故は予定外で、自分でもしくじったと今になっては思う。

6年もこの男と離れることになったのは俺自身も予定外だったし、早く逢いたいと思ってはいた。

だが、記憶がないときいたときはチャンスだと思ったのも事実。

この男を守るための術を覚えるために絶好のチャンスだと。

アメリカに行く前に鍋屋と二村。そしてあの5人にも梅村を頼んだ。戻るまで守ってくれと…。

アメリカにいる間、ずっと俺に連絡をいれてくれてたのは意外にも鍋屋だった。これには俺も驚いた。


「全然、気が付かなかったんですが?」
ジーッと俺を睨みながら言われる言葉に笑みがこぼれる。

「だろうな。気付かれねぇように隠してたし。気付かせるつもりなかったしな」
現に今でも知らせるつもりはなかった。が、想い知ればいい。

俺がどれだけ梅村陽葵に惚れているのかということを…。

まぁ、執着はしてるが、守らねぇけどな。

「のわりには俺の事は放置だなお前」
なんて、自分が考えてたことを言われてまた笑ってしまう。
「当たり前だろうが。執着はしてるが、束縛してぇわけじゃねぇし、お前に依存してるわけでもねぇ」

まぁ、依存は自分の中では紙一重だとは思ってるがな。

「なんだか納得いかねぇ」
なんて膨れっ面になる。

「なぁ、陽葵。俺がお前に依存してみろ、俺はお前の行動を制御するぞ?あれダメこれダメって言いまくって束縛するかもしれねぇぞ?そしたらお前の自由は完全になくなるぞ?それでもいいのか?」

俺がこの男に依存すればそこまでしそうな気はある。が、俺はそこまでこの男を拘束も束縛もしたいわけじゃねぇ。

「う~ん。それでもいいようなイヤなような」
なんてマジで考え始めた。

「やめとけ。人に干渉されるのがイヤなお前が束縛なんかされたら死ぬぞ」
干渉されるのが嫌い。だからこそ、俺はこの男を守らないし、放置してるのだ。

この男がよっぽどのピンチに陥らない限りはな。

「イヤ、侑司には干渉されてもいいんだけど…てか、干渉されたい。あんまり無関心だと俺が不安になる。傍にいていいのかな?とか、本当に好きなのか?って…」
梅村から出てきた言葉に少し驚いた。

「心配すんな。俺はお前が思ってる以上に梅村陽葵に惚れてるからな」
だからこそ、消毒と言う名のお仕置きをしただろうが。
「はっはは」
俺の言った意味を理解したのか、ひきつった笑みを浮かべた。

「依存と執着は紙一重じゃね?」
なんていいながら梅村をそっと押し倒せば
「えっと…身体が辛いので加減してほしいなぁ」
なんて言う。
「安心しろこれ以上はしねぇよ」
俺は小さく笑ってそっと唇を重ねた。


依存と執着は紙一重


俺と梅村の関係


恋人だが、どちらもいなければ意味がない。


まぁ、俺は手放すつもりはさらさらねぇけどな。



Fin

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