人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

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聞かないのはなぜ?

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菊池の看病のおかげで自分の体調も順調に回復した。


「なぁ…」
菊池に声をかけて途中で言葉に出来なくて黙ってしまった。
「なんだよ」
そんな俺に菊池が聞いてくる。一瞬の躊躇いでも

「何も聞かないのか?」
ずっと、何も聞かないこいつが気になった。

「あの男から話は全部、聞いてる。それ以上のことを聞いてどうする?」
案外、冷たい返事が返ってきた。

「じゃぁ、俺の気持ちは無視なのかよ?」


被害者のケアは風紀の役目じゃないのか?


俺のケアは誰もしてくれねぇのか?


俺のケアをお前はしてくれねぇのか?


俺にもう興味ねぇのかよ?


「そうは言ってねぇだろう。ずっと我慢してるって言っただろうが」
俺の言葉にイラ立ちながら返事が返ってきた。

「へっ?」
我ながら間抜けな声が出た。


いつ動いたんだ?


俺が間抜けな声を出した時には菊池の下に組み敷かれてた。


「お前なぁ、自分の恋人が襲われて俺が平気な顔してヘラヘラしてると思ってるのか?」
その言葉にはイラ立ちというか怒気が含まれている。
「そんなこと…ないですよね…」
流石にこの男を本気で怒らせるのは命が幾つあっても足りないというのを身に染みてる。


記憶が戻る前に散々やらかしてたからな俺…。


「なのにだ、肝心のお前は高熱出してぶっ倒れる。我慢するしかねぇだろうが…」
苛立ちと呆れとが混じった顔をする。
「ごめんって…俺だって熱出すなんて思わなかったんだよぉ」
これに関しては本当に自分でも情けないと思う。

「だから、大人しくしてろって言ってんのにお前というやつは文句言い始めやがって」
呆れよりも苛立ちのが強くなってる気がする…。


やべぇ、これ、俺マジで怒らせたかも…。


「ごめんなさい…」
これは素直に謝るしかないじゃないか。

「ヤダね、許さねぇよ」
そう言いながら俺は唇を奪われたのだった。


イヤ、本当にごめんって…。


俺自分の事ばっかりで菊池の気持ちも考えてなかった…。


ホントごめん…。


Fin

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