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SOS

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クソッ、しくじった。


後ろから殴られて捕まるとか、マジでむかつく。


「このままやっちまうのもいいんだけど、もっと面白くしねぇとなぁ」
なんて言いながらざらりと生ぬるい舌が首筋を舐めていく。

気持ちわりぃ。


「くそっ、放せ」

抑え込まれている身体を動かすが

「諦めろ」

なんて冷たい一言。



「おい、人を呼び出すとはいい度胸だな」

少しだけイラ立った声で菊池が現れた。

「菊池!」

助けて欲しくて、声を上げれば

「動くなよ。お前が動けばこいつ、このままやっちまうぜ」
男の声にチッって菊池が舌打ちをする。



絶体絶命ってこういうことをいんだろうか?



なんてボンヤリと考えてたら


「ヒナ、た、す、け、て?」
なんて、菊池がにっこりと笑う。それは。俺に暴れてもいいという合図。


ニヤリと口元が緩むのが自分でもわかった。


「しょうがねぇなぁ」

目の前の男に聞こえないように呟くと俺は男の腹に思いっきり膝蹴りを喰らわせる。

「ぐっ」

前のめりの倒れてきた男を菊池がすかさず捕まえて押さえ込む。

「わりぃな。俺一人だけで来るようにいってきたけどよぉ、この男を助ける方法は幾らでもあるんだ。もっと頭使えや」

「クソッ、放せ」

菊池の手から逃れようと男がもがくが、

「放すわけねぇだろ!クソが!」

俺の膝蹴りがまた男の腹に入る。

「あーあ。のしちまったよ」

なんて暢気な菊池の言葉。それが無性にイラつき菊池に殴りかかってた。


「うわぁぁぁ!!梅ちゃんダメぇ―!!!」
後ろから、鍋谷の叫び声が聞こえて、菊池を殴る前に手が止まった。

「い、今の委員長に殴りかかるのは、命とりですよ、会長」
二村が鍋谷の後から伝えてくれる。

「なんで?」
意味が分からなくて、2人に向かって聞けば

「梅ちゃん…今梅ちゃんは何をされてたのかな?」
「ちゃんと自分の状況わかってます?」
今まで何が起きてたのかを思い出せと言われる。

「あっ」
小さな声を上げて菊池を見れば顔は笑ってるが、目が笑ってない男がそこにいた。


「委員ちょー、こいつは俺たちが回収しときます」
「後は任せてください」

鍋谷と二村が引きつった笑みを浮かべて菊池に言えば、菊池は無言で俺の腕を掴んで歩き出した。


「えっ、ちょ、菊池」
驚いて俺が声を上げるけど聞いてもらえないまま、俺は菊池に連れて帰られたのだった。


クソッ、少しは助けろよあいつら


Fin

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