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触れたくて

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いつも俺より先に起きてるはずの侑司がまだ寝てた。


珍しいこともあるもんだとか思うけど、自分が早く起きたのが珍しんであって、侑司が寝坊してるわけじゃない。


ジッと寝顔を見てても起きる気配はなくて、疲れてるんだろうなって思った。


退院してから早々に乱闘騒ぎを一人で片付けてるんだから当たり前かとも思う。それに俺からの攻撃もかわしてたしなと思った。


マジマジと寝顔を見て思う。


うん、カッコいいなと…。


普段は鋭い眼光を宿してる切れ長の目は今閉じられている。少しだけ長くなった前髪がパサリと流れ落ちてくる。間違えて染められた金髪も今は色が落ちて、元々の色である濃いブラウン。侑司の地毛は黒じゃなくて、こげ茶よりの明るいけど、濃いブランと言えば伝わるだろうか?日に当たれば少し暗めのブラウンだろうか?

俺は黒いからちょっと憧れる。いつか俺も染めてやろうと考えてるけど、黒い方がいいのかな?とも思う。


そっと、手を伸ばし流れ落ちてきた前髪に触れて掻き上げてみる。掻き上げて手が止まった。


そこに現れたのは古傷。俺を助けてできた傷。

そっと、その傷口に沿うように指でなぞる。


侑司の身体には幾つもの傷口が残り、あの時の怪我がどれだけ酷かったのかを物語っている。


首筋から斜めに残る傷口に指を滑らせていけば


「人の寝こみ襲いか?」
そんな言葉と共に手が捕まった。
「ん、違う。ただ、触れたかっただけ」
襲うつもりはないと弁解をすれば
「満足できたのか?」
指先に小さなキスが贈られる。
「ううん。できてない」
満足できてないと告げれば
「じゃぁどうしたいんだ?」
聞き返された。

「う~ん。どうしよう?」
聞かれたけど、どうしようかって思いつかない。
「じゃぁ、大人しく俺の抱き枕になってろ」
なんて言いながら抱きしめられた。
「んー、キスできない」
ちょっと不満げに言ったら
「また後でな」
そう言いながら額に小さなキスが降りてくる。それがなんだか恥ずかしくて俺は侑司の胸に顔を埋めた。


「もう少しだけ寝ろ」
そう言いながら少しだけ力がこもる。
「ん」
俺は素直に返事をして侑司の服を掴んで目を閉じた。


トクリトクリと規則正しい心音と温もりに包まれて俺は再び夢の中へと落ちていった。


Fin

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